9話 二人の応募者
俺はディスティニィと再びギルドへと顔を出していた。
二日前に出したパーティ募集に参加したいと言う希望者が現れたとギルドから連絡を受けたのだ。
相変わらずギルドカウンターには依頼客がずらりと並んでいる。
エントランスでは他の冒険者達が談笑して賑わいの様子を見せている。
一瞬、俺はその中にリノア達がいないか探してしまう。
でも、彼女達の姿は見えないから、もう依頼を受けて出発してしまったのかもしれない。
「……アクア様?」
アクアが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。
「いや、なんでもない。それより早く応募してきた人達に会いに行こうか」
「わたし、受付嬢さんのところに行ってきますね」
そう言うとディスティニィは、ピュ〜っとカウンターの方へ走っていった。
それにしてもどんな人達が応募してくれたんだろうか?
俺がリノア達に解雇された噂は広まっているはずだ。
それなのに応募して来るなんて、よほどの事情があるんだと思うが……
「アクア様! お待たせしました!」
「お、どうだった?」
「はい。今から応募者さんに連絡してくれるそうですよ。下の酒場で待っていてください、だそうです」
ギルドが経営している情報交換を目的とした酒場が、ギルド施設の地下にある。
「そっか。じゃあ待つとしようか」
「はい。それにしても……どんな人達が応募してきたんだろう。なんかワクワクしますね、こう言うの」
ディスティニィは目を輝かせて、期待に胸を膨らませているようだ。
賑わう客や冒険者達の間をすり抜け、俺たちは地下の酒場へと向かった。
○
テーブルに着いて十分もしないうちに、受付嬢に案内されて二人の少女が、俺達が座るテーブルに近づいくる。
「こちらがパーティメンバー募集に応募してきてくれた方々です」
受付嬢に軽く紹介されると、青い鎧を纏った女性が一歩前に出る。
「私は聖騎士のシノン。よろしくだ」
彼女は礼儀正しくお辞儀をする。
金色の細工が施された青い鎧に、背負った大きな盾が印象的な女性だ。
「じゃ、次はアタシネ」
続いて前に出て来たのはお団子頭の元気そうな可愛らしい少女だ。
シノンとは対照的に、肌の露出が多い服装をしている。
彼女は自己紹介のつもりなのか、俺に向かってブンと一発正拳突きを繰り出した。
「アタシはヤオ。武道家やってるヨ、よろしくネ」
「お……おお。よろしく」
聖騎士に武道家か。
前衛職が揃ってやってくるなんて、なかなか幸先がいいな。
俺とディスティニィは後方職だから、パーティ的にはバランスが取れている。
「じゃあ、あとは皆さんでいろいろ話し合ってください」
言って受付嬢は二人の挨拶が終わると、その場を後にした。
二人にもテーブルに座ってもらい、俺は自己紹介をした。
「俺がパーティリーダーのアクアだ。職業は錬金術師。んで、横に座っているのが魔道士のディスティニィだ」
「よろしくお願いします。シノンさん、ヤオさん」
「……あの。自己紹介されたって事は、もう採用って事でいいんですか?」
「え? 俺としてはそうのつもりなんだが……」
聖騎士なんて、弱小パーティ募集に来るような人材じゃない。
前衛職の花形でパーティの要である。
戦闘で頼りになる鉄壁の防御力を誇る職業を、俺は黙って見逃すつもりはない。
「……アタシはどうなるネ? 不採用?」
ヤオが不安そうな顔をして、俺の目をジッと見つめている。
「いや、採用だ。攻撃の前衛は何人いても困らないからな」
「本当ネ? 本当に採用ネ!?」
「ああ、嘘はつかん。ヤオも採用だ」
「やったネ!」
彼女は席に立って、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
嬉しいのはこっちも同じだ。
実はパーティが揃うまで、もう少し時間がかかると思っていた。
それがこんなに簡単に集まるとはな。
「それで、二人の冒険者カードを見せてくれないか?」
パーティは信頼関係で成り立つ。
彼女達のランクやレベル、保有スキルを知る事はリーダーとして当然の行為だ。
「これが私のカードです」
「アタシのはこれネ」
ヤオとシノンは同時にカードを置く。
俺とディスティニィも、二人の前に差し出した。
「……冒険者ランクSに、フォンブラウン!?」
シノンは目を丸くして驚いたまま口を開けている。
ま、俺のはともかくとして、やっぱりフォンブラウンの名前はインパクトを与えるようだ。
「さてさて、二人のカードは……おぅ!?」
カードを見た俺は、おもわず変な声を上げてしまった。
どちらのカードには、冒険者ランク、レベル共にDと表記されている。
聖騎士に武道家なのに『D』と言う事があり得るのか?
「……どうしたネ、アクア?」
「顔色が悪いが、何か不都合でもあったのか?」
「いや、なんも無い」
またDが集まってしまった。
よく考えればそうなるのか……高レベルの冒険者が俺のところに来る訳がないよな。
なんとなくだけど、彼女達が応募して来た理由が分かった気がする。
採用と言ってしまった手間、破棄するなんて言えない。
……仕方がない。
せっかく集まった人材だし、このまま手放すのは惜しい。
となれば、ここは彼女達三人の実力を知る必要がある。
「――よし。今から簡単な依頼を受けるぞ!」
「それはいいな」
「いい提案ネ! さっそくアタシの強さを見せてやるヨ!」
「アクア様。ついにわたしの魔法を披露するときが来ましたね!」
彼女達の気合いの入りようをみて、俺は期待できるのではないかと思い始めていた。
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