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10話 彼女達の実力

 彼女達の実力を知るため、俺は適当な依頼を掲示板から探す。

 冒険者ランク、レベルDの彼女達が安全に出来る依頼となると、やっぱり初心者向けの依頼になる。


「えーっと……これでいいか」


 俺は掲示板の下に貼ってあった依頼書を一枚剥ぎ取った。


 依頼内容は、街周辺に出る小型猪(リトル・ボア)を十二頭討伐。


 スライムより攻撃的な性格で、行商人の馬車や幌馬車がよく襲われる事がある。

 大型の猪なら牙と体当たり攻撃が危険だが、小型猪なら、それほど強くない体当たりだからあまり心配する必要はない。


「小型猪ですか? ちょっと怖い気もしますね」

「こんなの怖がってどうするヨ?」

「ヤオの言うどおりだ、ディスティニィ。一人一人で戦うなら強敵だが、みんなの協力があれば恐ろしい敵じゃない」


「――そうですね! 四人の力があれば、こんな強敵なんて!」


「水を差すようで悪いが、小型猪は強敵じゃないぞ……」


「「え?」」


 三人は驚いた表情で俺を見た。



 ○



 ギルドで依頼を受けた俺達は、街の東門から外に出た。


 この街はこの辺りでもそこそこ大きな街だ。

 昔はよく魔物の襲撃があったとかで、高い城壁で囲まれている。

 街の西と東には街道に続く門がある。


 西門を出て北へ進めば、ディスティニィと出会った森がある。

 反対の東門を出ると、地平線が見える広大な平原だ。


 目指す先は東門を出た平原だ。

 そこをしばらく歩くと討伐対象である小型猪がいるのだ。


「あ〜! いましたよ、アクア様!」


 早速、ディスティニィが小型猪の群れを発見した。

 小型猪はだいたい五〜六頭で群れを作っている。


 体長は一メートル弱。

 一頭当たりの突進力はそれほどなく、体当たりされたところで致命傷を負う事もない。

 スライムよりも初心者冒険者向けの魔物だ。


「では、まず私から行く!」


 シノンが背中から盾を降ろして、自分を隠すように構えて進んでいく。


 盾をガンガンと叩き鳴らし、敵の注意を自分に引きつける……これが聖騎士の戦い方なのか。


 そのうるさい音に気づいた小型猪の群れは向きを変え、シノンを睨んでいる。

 足を地面に引っ掻いて威嚇していた次の瞬間――


 六頭の小型猪が、ドドドドと地を鳴らしシノンに一直線に突進してきた。


「さあ、来い! 私が全て受け取って――きゃん!?」


 小型猪達の突進を受けきれず、シノンは宙に弧を描き大きく吹き飛ばされてしまう。


「……おいおい。マジかよ……」


 ブヒブヒ鼻を鳴らした小型猪の群れが倒れたシノンを鼻で小突いている。


「このままじゃマズいヨ! アタシがシノンを助けるネ!」

「頼みましたよ、ヤオ!」

「アタシに任せるネ! はあっ!」


 ヤオは助走もせずに、その場からいきなり高く跳躍した。

 落下地点に集まっている小型猪の群れの中心部に拳を撃ち込んだ。


 ――ドン! 


 唸る衝撃音。


 ヤオの一撃が大きく大地を揺らした。

 その威力を見せつけるように、周囲の地面が吹き飛び、大きく刳れてしまっている。


「うっきゃあああ!?」

「ぴぎぃぃぃ!」


 攻撃に巻き込まれた小型猪とシノンが吹き飛ばされたのは、俺は見逃さなかった。


「さあ、次の相手、かかってくるネ!」


 ヤオはすぐ様態勢を整えてると、小型猪へと次の攻撃にかかる。

 だが――


「……お、遅い。なんであんなに走るのが遅いんだ!?」


 バタバタと足を鳴らして走るヤオの姿は、まるでスライムを彷彿とさせる動きだ。


 まあスライムはバタバタとは走らないが、それほど遅いんだ、走るヤオは。

 それに、これだけ遅ければ敵に攻撃してくれと言ってるようなもんだ。


「はうっ!?」


 案の定、彼女も小型猪に吹き飛ばされてしまった。


「今度はわたしの番です!」


 ディスティニィが杖を構えて、呪文の詠唱を始めた次の瞬間――

 水差しのような勢いの水が、杖の先からジョボジョボ出ているだけだ。


 小型猪の群れが向きを変え、今度はディスティニィに狙いを定めると同時に一斉に襲いかかってくる。


「え……いやぁ! アクア様、助けて!」


「やれやれ……」


 助けを求められたら、放っておく訳にもいかない。

 俺はスキルを発動させると、大型鉄球を小型猪の群れに落とした。


「あ……ありがとうございます、アクア様」


 ディスティニィは安堵したのか、腰が抜けたようにその場にへたり込んでしまった。


「ふぅ。怪我とかは無いようだな。それと他の二人もそれほど傷を負ってるとは思えないが……アクアも一応飲んでおけよ」


 俺は三人は液体の入った容器を十本のうち、一本をディスティニィに手渡した。

 それを手にした彼女の顔が、みるみるうちに変わっていく。


「アクア様、この容器に入った青い色の液体は……まさか万能薬(エリクサー)ですか!?」


「お、さすが魔道士の家系。よく分かったな」


 ディスティニィが驚くのも無理はない。


 万能薬(エリクサー)とは致命傷を受け死にかけの人でも、あっという間に治療できる薬だ。


 それ以外の怪我や病気ですら治してしまう優れ物。

 ただ元となる材料が希少なのと作れる人も限られてしまうから、どうしても原価が跳ね上がってしまう。

 一般人にはなかなか手が出せない代物だ。


「こんな物、いつ買ったんですか!?」

「いや、買ってはない。俺が創ったんだ」

「へ? 創ったって……?」


 彼女達が戦っている間に、もしもの事を想定して万能薬をその場で創り出しておいた。


 俺はリノア達パーティにいる時に、運良く万能薬を手にする機会があったから、構成する材料の成分や分量を知ることが出来た。

 その知識があったから、錬成スキルで万能薬を創り出すことが出来たのだ。


「そんな事よりも、二人に薬を飲ませないとな」

「はい、分かりました。アクア様!」


 俺とディスティニィは二手に別れ、倒れているヤオとシノンに薬を飲ませた。


「あ……あれ? 私はまた負けた……のか」

「……猪に負けたヨ……悔しいヨ、アタシ……」


 目を覚ました二人は、悔しそうな顔を覗かせた。

 ディスティニィも同じ表情をしている。


「……またアクア様に助けて貰いました……やっぱりダメダメですね、わたし……」


 三人とも依頼を達成したのに、意気消沈してずいぶんと落ち込んでいる。

 まあ、結果俺が一人で倒してしまったのだから、彼女達に達成感はないだろう。

 むしろ無様な姿を晒してしまった後悔でいっぱいって表情をしている。


「――だいたいお前たちの弱点は分かった。それ、俺がなんとかしてやるよ」


「ほ……本当か、アクア!」

「嘘ついたら、タダじゃおかないネ!?」

「……アクア様……」


「もちろん、冗談なんかじゃあない」


 俺は彼女達にはっきりと言い切った。


 三人はとてつも無く弱い。

 はっきり言って冒険者には向いていないとさえ思える。


 逆にそれが俺のやる気に火をつけた。

 こうなったら彼女達を一流の冒険者にしてやろうじゃないか。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


続きも読む! と思ってくださったら、下記にある広告下の【★★★★★】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

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