33.新たなる戦いの足音
「皆、盛大な拍手を今日の主賓にしてもらった所で申し訳ないが、今日の趣旨はきちんと理解しているか?」
そう王が言うと、ほとんどの貴族は訝しげな表情を浮かべていた。
「少しばかり強引な勧誘を企む不埒な輩がおったのでな。その者には数日間の禁錮を言い渡した。皆、このようなことはせぬよう気を付けよ。今、注意したということはつまり、この会の中でそのようなことをやったものがいれば、厳罰ということだ。一応、預け先については告げたが、たっての希望だという者については配慮しよう。」
一旦そこで声を止め、俺たちのほうに向き直ってから、
「また、異世界人の皆さんも何か不都合があれば、私か、エルトリア公に伝えてくれれば、適切に対処しよう。では、長々と話してしまったが、是非今日の宴を楽しんでくれ!!」
最後にそう付け加えて、ハンス王は言葉を締めくくった。
しばらくの間、作戦通りに俺たちはロランの近くで、俺たちにどうにか領地に来てもらおうとしている貴族たちをいなしていた。
「はあ、それにしてもくる奴多すぎだろ。」
こいつだけは離れていくだろうと思っていたが、ちゃっかり残っていた神崎が、心底嫌そうにそう言った。
そんな神崎に俺は尋ねる。
「なんで残ったんだ?お前なら、ついていきそうだと思ったんだが。」
すると、神崎はそんなこともわからないのかと言った少し馬鹿にしたような顔で、
「何があるかもわからない場所で、見知らぬ場所に足突っ込むとか愚の骨頂だろ?」
危機回避能力は身につけているんだなと俺は感心し直した。
「ああ、そうだな。」
そんなやりとりがあって、それを聞いていたのか、遥香が、
「そもそも、なんでこの国の貴族たちは私たちを欲しがってるの?」
俺が答える前に、皇がその問いに答えた。
「それは、知識が欲しいからです。僕たち異世界人の知識、今までにない思考、思想、武器なんかを彼らは手に入れたいんです。だから、こうして、ロランさんの元にいるにもかかわらず、何人も近づいてくるんですよ。今、こちらに来た方は、少し毛色が違いそうですけどね。」
そう言った皇が向いた方向には俺たちと同年代ぐらいの少年がこちらにやって来ていた。
そして、ロランに対して慇懃に、
「すいません。少し、異世界人の方と話したいことがありまして、お話させていただいてもよろしいですか?」
そう尋ね、軽くうなづいたことを確認してから、こちらにやってきた。
「やあ、僕はアストルと言うんだ。これから、君たちと戦うことになるグループの一人だよ。よろしく?」
その少年は、新たなる戦いの足音を俺たちにひしと感じさせた。
これで二章は終了です!
いかがでしたか?
一、二週間後から更新再開しますのでよろしくお願いします!




