幕間4.メイドの追憶
幕間です!
私はアリア。
特に家名などはありません。
ロラン・フォン・エルトリア伯爵の邸宅でメイドをしています。
伯爵家に仕える人を管理する仕事もしているので、メイドなのに侍従長みたいになってます。
あっ、今はもう侯爵になられたんだった。
私はあの人に救ってもらいましたから、そんな大恩のある人のことを知らないなんていけませんよね。
そう、その日は今日とは真逆の日でした。
貧民街が戦火に包まれた日。
そして、私が八歳になった日ーーーー
その日、私は八歳になった。
年を重ねる日と言っても、別に特段変わったこともなく、いつも通りの日々を送っている。
なぜか、それは私は家族がいない、いわゆる孤児と呼ばれる存在だからだ。
いついなくなったのかは正確には分からないが、少なくとも私が物心つく頃には私の目に両親の姿は映ってはいなかった。
ここは庶民からでさえも吐きだめと言われる貧民街だ。
突然人がいなくなることは日常茶飯事だ。
自分のことで精一杯、いや自分のことですら満足に出来ないものたちがここに落ちてくる。
つまり、そんな所で小さい子供に構っていられる余裕などあるはずもなく、両親がいないことに気づいた私が助けを求めても、助けてくれる人などただ一人もいなかった。
だから、私は幼い頃から(といっても六歳も幼い部類に入るが)犯罪に手を染めるしか、この場所で生きていく術はなかった。
一番初めにしたのは盗みだった。
お手軽で、孤児がしたことがバレたとしても、生きる道がなかったとして、国の保護の範囲内。
つまり、自分がする分にはこの時は犯罪ですらなかったのだが、その時の私には意外と常識があったらしく、犯罪だと思っていた。
次は詐欺、服を盗んできて、少しでもいい格好をして、迷子の子供のフリをする。
そして、身なりのよく、優しそうな人に助けを求める。
泣きながら、両親とはぐれたと言う。
私にはそんな悲しみは分からなかった。
だって、そもそも私の両親はいないのだから。
でも、上手く演じられてられていたのだろう。
その人たちはみんな私が帰る道は覚えてるから一人で帰れると言うと、いつも路銀を私に渡してくれた。
そのお金を使って、私は短剣を買った。
店の人にはお母さんに作る料理に使うと言って。
いつも返ってくるのは、
「小さいのに優しい子なんだね。」
と言う言葉。
私にはそんなことをする家族はいないのに。
その時ぐらいからだろう。
私が犯罪を犯すのに忌避感がなくなったのは。




