21.武具屋
次に俺が向かったのは、武具屋だ。
武具というので少し本筋から離れている気もするのだが、通りすがりの何人かの冒険者(のように見えた)に尋ねたところ、
「動きやすい普段着なら、武具屋がおすすめです。デザインに工夫を凝らしたのもありますし、街中で何かに襲われたとしても、武具屋の服なら安心ですし。」
ついでに服屋のことも聞いてみると、
実体験なんだけどね、と断りを入れた後に、
「あの服屋は貴族しかいないし、貴族たちがパーティーの時に着るドレスとかしか売ってないから、もしお金を持ってたとしても普段着には向かないと思うよ。特にあそこは成金の貴族が多いし、無駄にプライドが高いから行かない方がいいよ。」
と教えてくれたが、案の定悪評が流れてきた。
こんな訳でおすすめされた武具屋に向かったのだった。
五分としないうちに武具屋に着いた。この武具屋は冒険者っぽい服装の人が沢山いる区域の中でもど真ん中に位置しているので、人気店だという予想だ。さらには、他の店は露店なのにも関わらず、この店だけはかなり広い敷地の店舗を構えていたのだ。
中に入ってみると、いきなり声がかけられた。
「おう、お前さんは見たことない顔だな。初めてか?」
声がした横を見てみると、無精髭を蓄えた色黒の小さい男からのものだった。
「はい、そうです。」
俺がそう答えると、
「だめだだめだ、そんなんじゃ。冒険者にはなれやしねえ。その敬語をやめろ。舐められたら、冒険者なんてやってらんねえからな。」
一理あるな、そう俺は感じたので、
「これでいいか?」
そう敬語をやめて返事をすると、
「おう、よくなったぞ。紹介がまだだったな。儂はドワーフのゴッゾ。今はドワーフの本業の鍛治をやっておるが、これでも昔は冒険者だった。いろいろと初めはわからないこともあるだろうが、聞きたいことがあれば、ギルドか儂に聞くといい。」
意外と優しい人なのかもしれないな。
「ありがとう。早速、聞きたいんだけど身軽な服はこの店には売ってる?」
「ああ、儂が作ったのではないが、知り合いから仕入れたものなら、奥の方にあるはずじゃ。見てくるといいぞ。」
そう言われたので、俺はその店の奥に向かって歩いていくのだった。
店の奥に行くまでにも、沢山の日本では見ることが出来なかったであろう実剣や大槌、短剣などが置かれてあった。
無造作に置かれているものと丁寧に置かれているものとの差は俺にはわからなかった。
もちろん、俺が向かった服のコーナーは貰い物だからか、全て丁寧に陳列されていた。




