8.初めてのバトル「■■■」
果たして、今日神崎は決闘を仕掛けてくるのだろうか。
あのルールブックを見る限り、第六条があるので、仕掛けてくるのはよほど勝算があるのか、自分の能力に自信があるのか、俺たちが余程舐められているのか、その三パターンくらいしか思いつかないな。
例えばの話だが、もしただ単に遥香をグループに入れたいだけだったら、それは笑えるというものだ。
アルンが勝ちたいと本当に思っているとしたら、そんな単純な人間を参加させることはないだろう。
もしかしたら、他にも理由があるのかもしれないな。
俺はそう判断し、学校に行くことにした。
まあ、仕掛けられるなら、負けない策があるからな、とそんな風に思いつつ……
今日から端末で、「元の学校の授業動画を見ろ!」との指示だったので、端末を見ていたのだが、
「どうして、数学が三時間もあるんだよ?」
思わず、そう口にしてしまった。
そう、何と今日の六時間授業のうち、五つが理系の教科だったのだ。
具体的には数Ⅱ、数B、物理、化学である。
「なんで今日に限って・・・」
実は、親の職業からもわかるように、俺は、根っからの文系なのである。(別に数学ができないわけではないが。)
そんなわけで、すごくテンションが低かった。
ただ神崎が休み時間、絡んでこなかったのはよかった。
今の俺なら、ストレス発散のために、神崎に決闘を仕掛けていたかもしれないからだ。
〜放課後〜
まぁ、いろいろあったが、放課後になった。
やっぱり神崎は決闘を仕掛けてくるらしい。
神崎のグループの人がやってきて、家庭科室にくるように言われたので、俺はおとなしく家庭科室へ向かうことにした。
〜家庭科室にて〜
「それにしても遅いな、来栖は」
「さっき伝えたって言ってたので、もうすぐきますよ」
その時、ガラガラという音がして、人が入ってきた。
「やっと来たか、来栖!」
が、それは海斗にここにくるよう伝えに行っていたメンバーだった。
「なんだよ。紛らわしいな」
〜Side 海斗〜
ここか。まあ、普通の家庭科室か。特に変わったところはないように思える。俺は中に入ることにした。
「やっと来たか。まあ長くなるかもしれないから、ゆっくりして行ってくれ」
神崎はそう言って、コーヒーを出してきた。
神崎には悪いが、このコーヒーは飲まない方が賢明だろう、そう思い、俺はすぐに手をつけることをしなかった。
「早速だが、今日お前に申し込む決闘の話をしようか」
「そうだな。手早く本題に入ってくれると助かる」
「今回お前に申し込むのは、トランプを使ったゲーム、大富豪だ。」
大富豪といえば……順位によって、貧民、富豪、大富豪、大貧民などに分けられ、貧民は、富豪にカードを渡さなければいけない。そんな感じのトランプのゲームである。
「ローカルルールはありなのか?」
「いや、一部だけアリにしよう、階段や色縛りぐらいにしておこうか」
「じゃあ、好きに追加ルールを決めてくれ」
「そうだな……」
俺は少し悩んだふりをしたあと、
「じゃあ、人に直接的に効果を及ぼす能力の使用禁止にしよう」
「なっーー。いや、なんでもない、ほかに追加があれば言ってくれ」
「あとは4人バトルにすることだな」
「ああ、わかった。こっちから二人出すのでいいか?」
「ああ、いいぞ」
そう俺が言うと、決闘が始まった。
だが、俺がトランプゲームで負けることはない。
俺の能力の「■■」の一つ目の権能、
「神眼」によるものだ。
これは、『見たものの全てを見透かすことができる能力』だ。
もちろん、トランプのカードにどの数字があるかもわかる。人が隠していることもわかる。どんな能力かもわかる。
服か透けて見えるみたいなことはないが。
一回目
『ここでスペードの2か。普通にやってもうまかったんだな』
『だが、神崎の手札に強いカードしかない』
「革命だ」俺は10を四枚出した。
「あぁっーー!」
この時に一回目の勝ちが決まったと言っていいだろう。
二回目
「なっ!階段だと?自分の首も締めるんじゃないのか?」
そんなこと次のカードを出しながら言う神崎に俺は笑みを向け、次のカードを出した。
「俺の勝ちだ」
三回目
「革命だ」
俺がそう告げると、
「これでどうだ? 革命返し!!」
今回は手札が悪かったので、この時点で負けたなと思った。
四回目
「革命!!」
神崎が、そう言ったとき俺は、
『あ、こいつ革命したら勝てる!とか思ってる感じのやつかな?』と思ったので、
「色縛り階段だ。」
「あ、あ、あ、ああああああっっーーー!」
この時俺の勝利が確定した。
次回は月曜日です!




