17 クズ狩りの堕星
「っ……くそっ……!」
一人の男性が、森の中でそうつぶやいた。
醜く肥え太った姿に、ため息に似た何かが漏れる。
それは言葉か、あるいはただの息か。
「誰か……助けてくれ……!」
腰を抜かし、四つん這いで逃げる姿を見下ろす。
豪華に飾られたお洋服が汚れてしまってますねぇ、と言いたくなった。
しかし今は、そんな言葉よりももっと面白い言葉を先に言おう。
「追いついたぁ」
にやり、と笑った。ひっ、と声が聞こえてきた。
深く被ったフードを取る。しかし男は、こちらの外見を確認する余裕はないようだ。
仕方なく、わざと狙いを外して火魔法を撃った。
「うわぁっ!」
間も開けずに闇魔法を放つ。
そして手に持っている氷で作られた鎌を振れば完璧。
炎、闇、氷……ここまで見せれば相手は悟る。
ほら♪ ちょうど今気づいたみたいだ。
「黒焔の堕星……!」
黒焔の堕星……クズ狩りの時に何度か聞いた名だ。もしかしてアルヴァンの二つ名だろうか?
いやどうでもいいな。俺は今――リゲルなんだから。
「ははっ、誰のことだよ」
「嘘をつくな……! お前はあの……フォン・ローゼンベルク家の――ガッ」
男の口を闇魔法で切った。痛みでその場を転がりまわる。
そんなみじめな姿を見下ろしながら、感情の高ぶりが収まっていくのを感じた。
ああ、萎えた。
もう殺そう。早く帰りたい。
肩をすくめて、男の目の前にしゃがみ込んだ。何も言わず、ジッと男の目を見つめる。
ここはセリュシアじゃなくてフェルメリアだから、当然この男がどれだけ高貴な身分だろうと助ける者はいない。
まあ、たとえセリュシアだったとしても、こいつを助けるものはいないと思うけど。
「あ……か、金ならいくらでも払う! 土地も……召使いも、地位だって!」
命乞いをしてくる。
「わたしの娘もやろう! それに、所有している奴隷も――」
男の顔を掴んだ。俺に掴まれているから不可抗力とはいえ、なんて不細工――失礼、不格好だ。
こいつは、急に魔法ではなく自ら手を出してきた俺に驚いている。
「……あの国で、人身売買は禁止されているはずだが?」
あっ、と言うように男の顔が真っ青になった。
もう殺し時か?
「違う! 言い間違えた!」
「ほう? 言い間違い? なら本来なんて言うつもりだった?」
「それは……そう! 下働き! 下働きだ!」
見苦しいなぁ。別にお前がなんて言おうともう殺すことは決まってる。
ちょっと騒ぎ過ぎた。そろそろ殺すか。
・・・
「ふう」
軽くため息を吐いてから、血のついた氷の鎌を消した。
魔法でできた物だから、粉が飛んでいくようにサッと消える。
目の前の死体を闇魔法で作った空間に落とす。
これで簡単に持ち運べるし、誰にも見つからない。
『黒焔の堕星』――アルヴァンの二つ名。
無意識に表情が歪む。
眉がこれでもかというほど下がる。反対に瞳は上に向く。
あんな――自分一人じゃ何もできないガキと一緒にされるなんて心外で仕方ない。
だってこれは俺にしかできない。
堕ちたとしても俺は崇高で、手の届かない星なのだから。
そうだ、星でなければ。
俺だとしても許されない。アルヴァンの罪《《だけ》》背負って罪滅ぼしをする。
その罪滅ぼしで罪を重ねる。
拝啓、居るかもわからない神、アルカディオン様へ。アルヴァンの罪はお返しします。
「はは」
急に変なことを始めてしまったな、と乾いた笑いが浮かぶ。
アルヴァンはこうしてまた少し、俺の中から消えてゆく。
…………はいっ。
『Merry Merry White Christmas』、これにて完結となります。
皆様きっとここまで読むの体力入りましたよね……(泣)反省はしています。後悔は微妙です(笑)
タイトルも適当だし、ストーリー展開は早いし、その割にキャラ多いし……。
不満がある方は数えきれないほど不満を持っているかと思います。
言い訳が許されるのであれば「群像劇の中の一つの章からコピペしたから」としか言いようがありません。
ここで物語は終わりますが、おまけを二つ投稿します。
『キャラ設定』
と、
『○○からみた各キャラの印象』
です。
まあこれは見ても見なくてもいいです。
おまけってそういうものですので。
では、またどこかでお会いできるのを楽しみにしております。
ゴートゥーネクストライフ☆
ついで
熱が出た時に中指にはめてリズムを刻んだ透明なプラスチックの何か、あれ、「新品の歯ブラシのブラシの部分に付けられているカバー」でした。




