……いよいよ。だよ。
スーツケースにラベンダー色のワンピースをしまった。
そう。
約束の日に着ていくために。
麦わら帽子と一緒に買ったんだ。
ワンピースのデザインは違うけど。
彼に私だって。
分かってもらうための目印。
髪もね。
大学に通うようになってから。
伸ばしはじめて。
あの頃の長さと同じ。
変わらない装いにしたくて。
想いも変わってないよって。
ね。
ちゃんと……
話せるかな。
伝えられるかな。
好き。
って。
言葉。
くまのぬいぐるみ。
クリーム色の巻き貝。
白い日日草も。
もちろん。
一緒。
準備しながら。
頬は緩みっぱなしで。
心臓は。
鼓膜のそばで。
演奏中。
初めての一人旅。
二泊三日。
もう少し滞在したかったけど。
講義や実習やら色々。
やらなきゃいけないことがあるから。
彼と交わした。
約束の日は明後日。
8月19日。
また。
あのキラキラした季節に会える。
そう。
想い浮かべただけで。
ご機嫌な私。
よし。
スーツケースを閉めて。
ぽんと。
叩いた。
明日。
朝一番の飛行機で高松に向かう。
お父さんとお母さんは。
行き先が夕凪島だと聞いて。
驚きつつも、少しばつが悪そうだった。
両親なりに。
何かを察したんだと想う。
だからって。
責める気持ちなんて。
毛頭ない。
だって。
私を高校や大学に。
進ませてくれたのだから。
あの頃は。
彼も私も。
10年後に会おうって。
何の躊躇いも。
戸惑いもなく。
口にしていた。
すぐに。
また会える。
そんな風にさえ想っていた。
けど。
10年。
長かったかな。
早かったのかな。
色んな事があったけど。
心の中に。
体の隅々に。
塗り重ねて。
染み着いた。
彼との想い出が。
褪せずに。
私の道を照らしてくれたから。
ピコン。
?
テーブルの上のスマホが呼ぶ。
腕を伸ばして。
それを手に取る。
美瑠から。
『いよいよだね。梨花。気を付けてね。お土産話楽しみにしとく』
「うん。いよいよだよ」
『梨花、その調子じゃ、寝れなくて朝になっちゃうから、寝ちゃいなね、おやすみ』
え……?
もう。
美瑠ったら。
「頑張って寝るよ。おやすみ」
スマホの画面に微笑みを落とす。
待ち受けの。
美瑠とのツーショット。
「ありがとう、美瑠」
私はベッドに潜り込んで。
枕元にスマホを置いて。
リモコンで。部屋の電気を消した。
暗くなった部屋で。
そっと。
目を瞑った。
~あとがき~
『約束の木の下で 欠片』を、
最後までご覧頂いてありがとうございます。
約束の木の下でシリーズ本編。
『約束の木の下で 忘れられない初恋の記憶』の主人公。
梨花の10歳から20歳までの日常の欠片を掬いあげた物語でした。
本編を読んで下さった方は、お分かりだと思いますが。
20歳の梨花が夕凪島を訪れ、10歳の頃のキラキラとした時間に触れながら、約束へと向けて進んでいく物語です。
作者にとりまして。
主人公の梨花の存在は大きいものがあります。
主人公憑依型の原型になった人物でもあるからです。
本編だけで終わるつもりが。
当時、本編を読んで下さって、ありがたくも感想やメッセージをくれた方々が、梨花の10歳から20歳の間、どんな風に過ごしていたのか知りたいと仰って頂きました。
その時は何気なく心に留め置き。
しばらくは、他作品を書いていました。
そんなある時に。
ふと。
本編を読み返していたら。
梨花がやって来て。
私は普通に過ごしていたよ。
と。
『約束の木の下で 風と雪の中に』が出来上がり。
梨花の友人の美瑠との物語。
『約束の木の下で 心友』
も作ることが出来ました。
ここまで来た時に。
梨花を生ききらせてみたい。
生ききらせてあげたいな。
そう感じていました。
かつ。
本編の隠し要素を明らかにしようとも。
それが、
『約束の木の下で 忘れられない想いから生まれたもの』になります。
この『欠片』は。
作者が梨花に会いたくて。
梨花と一緒に紡いだ物語です。
これで書き残したことはないかな。
彼。
シンくんの視点を読んでみたいと仰って下さった方々もいらしたのですが。
この作品は梨花の物語なので、それは、今後もないと想います。
作者の作風上。
梨花も、今後、他の作品にひょっこり登場するかもしれません。
現に2作品に出てきていますけど。笑
重ねて拙作をお読み下さりありがとうございました。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




