【選定の儀】1
ギルドの外に出たら、サイジュがいた。
「おう、ミゲル!登録出来たか?」
「サイジュ、良いところにいた。教会の場所を教えてくれ」
「教会?」
なんでだ?と首を傾げている。
「【選定の儀】をやってもらう」
「はぁ!?【選定の儀】だ!?」
その反応が普通なのか?
「ミゲル、おまえ何歳だ!?」
「15だけど?」
そう答えると、
「10歳でやらなかったのか?」
「やってないな」
「なんでだよ」
なんでと言われれば、
「田舎で親と俺しかいなかったから?」
「はっ!?それは田舎すぎるだろう!?」
まぁ、田舎って言うか、ダンジョンの中だったんだけどな。
サイジュは、訳ありか?訳ありなのか?と、ぶつぶつ呟いている。
訳ありといえば訳ありだろうな。
親はドラゴンだしな?
「だから、とりあえず教会の場所を教えてくれよ」
あぁ、こっちだと、案内してくれるようだ。
場所だけ教えてくれても良かったんだけどな?
サイジュは依頼に行かなくていいのか?
教会は真っ白だった。
綺麗すぎて、なんかうさんくさいな。
ラノベあるあるの教会のイメージが悪すぎるからか?
これは、偏見かな?
サイジュは、教会が苦手なのか、目の前まで連れて来てくれたら、逃げるようにいなくなってしまった。
いや、いいんだけど。
教会って、逃げたくなる何かがあるのか?
教会に入ると、シスター?が声をかけてきた。
「今日はどうされましたか?」
せっかく話しかけてもらったから、この人に話してみよう。
笑顔が優しそうだしな。
「【選定の儀】というのをやってもらいに来ました」
シスター?の顔が固まった。
「えっ!?【選定の儀】!?失礼ですが年齢は?」
今日は何回、15だと言わなければならないのか。
「15です」
「えっ!?」
やっぱりこんな反応なんだな。
「少々お待ちください」
シスター?は早足でいなくなってしまった。
俺は、教会の中をぐるりと見回した。
壁にも天井にも、絵が描かれている。
ヨーロッパっぽいな。
まぁ、行ったことはなかったけどな。
中心に描かれているのは、この世界の神様なのか?
俺には、ラノベあるあるの神様の部屋に呼ばれるなんてテンプレイベントはなかったからな。
そんなイベントがあったなら、いきなりダンジョンに捨てられたりしないだろうしな。
そんなことを思っていたら、後ろから声をかけられた。
「君かな?【選定の儀】を受けたいと言うのは?」
「そうです」
話しかけてきた男性は、さっきのシスターよりは、位の高い人だろうな。
なぜかって?
服装が豪華だ。
真っ白に金色のラインで、刺繍されてるっぽいな。
刺繍の模様もゴージャスな感じだ。
教会って金があるんだな。
寄付?お布施?が凄いのか?
なんかヤバいことやってたりしないよな?
「ついて来てくれるかな?少々話を聞かせてもらいたい」
俺は頷いて、その男性について行く。
「私はこの教会の司祭で、プリエストゥといいます。君は?」
「俺はミゲルです」
司祭様らしい。
まぁ、よくわかんないけど。
「なぜ今になって【選定の儀】を受けたいと?」
「さっき知ったので」
「はっ!?さっき?」
司祭様の目が落ちそうになるくらい見開かれた。
「はい、冒険者登録をしに行ったら、職業を書く欄があったので、何か聞いたら【選定の儀】を受けるともらえるのだと教えてもらいました」
「住んでいた村には、教会は?」
「さぁ?両親と俺だけで暮らしていたので、わかりません」
なんと言うことだ…司祭様はそう呟いて頭を抱えてしまった。
大丈夫か?
「【選定の儀】はしてもらえますか?」
「もちろんだとも」
「有料だと聞きました。いくらかかるでしょうか?」
司祭様は、少し考える素振りをしてから、
「知らなかったのだよな?」
と、確認してきた。
「はい」
もちろん知らなかった。
「住んでいるところに教会はなかったんだな?」
さらに確認される。
「はい」
俺は頷く。
だって、ダンジョンの中に住んでたからな。
「それなら、無料で行うというのが規則だ」
へっ!?
無料でいいのか?
「そうなんですか?」
「あぁ、だから君に今から【選定の儀】を行う」
「よろしくお願いします」
なんだかわからんけど、ただで【選定の儀】をしてもらえるようだ。
ラッキーだったな。
これで珍しい職業とかが出て、教会に囚われるとかだったら困るけどな。
いや、フラグとかじゃないからな?
ちげぇーよ?
俺は、なんとなく冒険者やって、なんとなく生活出来ればそれでいいんだよ。
のんべんだらりと過ごしたいんだよ。
ゆるゆるでいいんだよ。
「この水晶に触れてくれ。すると水晶が光って職業がいただけるのだ」
「触るだけ?」
「触るだけだ」
それならいいか。
魔力を流せとか、魔力量を測定するとか、言われても困る。
門のところでみたいに、少し流すくらいなら問題ないけどな。
父さんたちが、俺の魔力量は多いと言っていたからな。
面倒事は避けたいじゃないか。
水晶に触った途端、意識がとんだ感覚になった。
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