話をしよう〜サイジュ(第三王子)
ミゲルの焼いたラビットは、美味かった。
なんで、あんなふっくらジューシーになるんだ?
ラビットだぞ?
城で食べたラビットでも、ここまでふっくらしてなかったし、何よりも味付けだよな?
塩味しか食べたことがないのに、なんだよ?
あのテリヤキってのは。
あんな美味いソース?タレ?なんて、食べたことがないぞ。
マリンだって、美味しそうに食べてたぞ?
スライムって味がわかるのか?
ミゲルが、緊急だったからと教えてくれたこの亜空間。
見たことのないものだらけだ。
本当は、教えるつもりはなかったんだろう。
もしかしたら、そのうち教えてもらえたかも知れないが、それは俺のことを信用に足ると判断してくれた時だったのかも知れない。
俺は、ミゲルの両親が誰かを知っているし、ミゲルが曲がったことが嫌いな性格なのもわかっている。
だから、俺のことも話すべきだとは、思っている。
でも、実際に実は王子でした、と告げたらどうなるのかはさっぱりわからない。
貴族だと思われてはいるが、ミゲルの態度は最初と変化はない。
王子だとバラしても変わることはないかも知れない。
言うなら、今しかないと思う。
遅くなれば遅くなるほどマズイ気がする。
「ミゲル、聞いて欲しいことがあるんだが」
「んー?なに?」
緊張感はないな。
このくらいの方がいいか?
「実はな、俺の名前は、本当は、アルサイジェス・ラズリ・トライアングリカというんだ。そして、この国の第三王子なんだ」
言ったぞ!
「はっ!?王子!?王子様!?」
ミゲルの目が、すごい見開かれた。
やっぱ、驚くよな。
「そう、第三王子だ。黙っててすまん」
「へぇー?サイジュ、王子様だったの?俺、不敬とかで咎められる?あっ、サイジュとか呼び捨てにしたらマズイ?」
えっ?そんな反応なの?
「いや、咎めるとかはない。俺はミゲルのこと友達だと思ってる」
「そっか、今まで通りでいいの?」
「もちろんだ」
ミゲルは、良かった、とか、そりゃ、男前なわけだよな、とか言ってる。
えっ!?本当にそんな反応なの?
「騙されたとか思わないのか?」
「別に?王子様が冒険者やるくらいだからなんか理由があんだろうし?」
そんな考え方をするのか?
「俺は、王子だとわかったら今までと態度変わっちゃうかも知れないとか考えて、悩んでたんだが…」
「えっ?王子様扱いした方が良かった?」
イヤイヤ、それは勘弁してくれよ。
「今のままで頼む」
「んっ、わかった」
ちょっと拍子抜けしたな。
でも、よかった。
「俺が王子ってことは、秘密にしてくれな」
「もちろん。この亜空間のことも秘密でよろしく」
俺は、もちろんだと頷いた。
で、話を振ってみた。
「ミゲルは他に何かあるか?」
と…。
ミゲルは、うーん?と考えて、
「あっ、俺さ、生まれたその日に捨てられてさ」
捨てられてたのは、聞いていたが、
「生まれたその日!?」
「そう、生まれたその日にダンジョンに捨てられてさ」
「ダンジョンに…?」
ダンジョンって、生物以外はダンジョンの糧になっちゃうんだったよな?
「そう、死んだらダンジョンにのみこまれるからって」
酷い奴らだろ?と笑う。
なぜ笑える?
「ミゲルは、それを覚えてるのか?」
「覚えてるよ?【完全記憶】を持ってるって言っただろ?」
生まれた時から持ってるのか!
その時のことすら、覚えているのか!?
「つらくはないのか?」
「別に?俺はそいつらのことを親だと思ったことはないし、今どこかで野垂れ死んでようと関係ない。俺の親は俺を拾って育ててくれた龍だけだからな」
本当の親のことも覚えていると言うことか?
でも、それは関係ないんだな。
「そうか、素敵なご両親なんだな?」
「あぁ!」
ミゲルの笑顔に救われるな。
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