依頼を受けてみるか[雑用]2
「こんにちは!冒険者ギルドで依頼を受けてきました」
教えてもらった隣の建物に入ってみたが、誰もいなかったので、そう声をかけてみた。
すると、奥からものすごい音がして、40歳くらい?のおっさんが飛び出して来た。
「依頼を受けてくれんのか!?」
「はい」
ガシって両肩を掴まれて、
「ゴミ運搬か?ゴミ焼却か?ドブ掃除か!?」
俺は、ギルドの受付で渡された札を見せた。
「マジか!!ドブ掃除やってくれんのか!」
「えーと、あの、はい」
俺が肯定すると、肥えたおっさんにハグされそうになって、全力で阻止した。
肥えたおっさんにハグされるとか、勘弁だ。
なんだ?
ものすごい歓喜してんだけど、なんなんだ?
落ち着いてくれねぇかなぁ。
「すまん、依頼を受けてくれる見習いがいなくてな。俺はこの清掃事務所の所長で、ヨーゴだ」
あー、みんな楽な依頼しかやらねぇんだな?
配達とか草むしりとか。
あれじゃね?文字が読めないから、貢献度のこととかわかってないんじゃねぇかな?
たぶん、受付のお姉さん達もそれを教えるほど親切ではないんだろう。
損したくなければ、文字の読み書きを出来るようになればいいだけだからな。
「俺は、ミゲルだ」
「ミゲルだな。ドブ掃除は、やったこたがあるか?」
「いや、ない」
けど、魔法でなんとでもなるだろう?
「そうか、よくドブ掃除やろうと思ったな」
「あー、なんか町がくさかったから」
「それなぁ…みんなわかってるんだがなぁ」
やっぱりみんなも臭いのか。
気にならないのかと思ってた。
「ドブ掃除やってくれんだよな?なら、やることの説明からでいいよな?」
俺が頷くと、ヨーゴのおっさんは、
「まず指定区間の溝の中の汚泥を取り除く。シャベルでもスコップでもなんでもいい」
あー、手作業だよな。
だから誰も依頼受けねぇんだな。
「その汚泥はどうするんだ?」
「台車でゴミ置き場まで運ぶんだ」
うわー、それはいつまで経っても終わらないヤツだろうよ。
「その汚泥は、何かに再利用とかするのか?」
「あんなくせぇーもん、何にも使えねぇよ」
それなら魔法で、なんとでもなるな。
「掃除の場所とゴミ置き場の場所教えてくれよ」
「こんな説明だけでいいのかよ?」
「やってみて、わかんなかったら聞くよ」
ヨーゴのおっさんが微妙な顔してるけど、気にしない。
ヨーゴのおっさんは、町のざっくりした地図を持って来て、机に広げた。
地図があんのか!
なら、スキル【自動地図作成】発動。
「この建物がココだな」
おっさんが青丸の部分を指差す。
作ったマップの同じ位置に青丸を追加する。
この町はあれだな。
中心から放射線状に広がってる蜘蛛の巣みたいな町の作りだな。
「掃除してほしい場所はたくさんあるんだが、出来るかどうかを試すために、1番区画が短いこの建物の裏の溝を頼みたい」
地図のここからここまでだ、とヨーゴのおっさんの指が地図をなぞった。
ってことは、冒険者ギルドの裏と同じだな?
「この裏だな?ここを掃除したら貢献度5でいいのか?貢献度5の依頼で来たんだけど」
「もちろん、ちゃんと出来たなら、だけどな」
それはそうだろうな。
「わかった」
「ゴミ置き場は、ココだな」
門の外かよ。
そりゃー、依頼受ける見習いがいねぇわけだ。
「とりあえず裏の溝を確認したいんだけどいいか?」
「もちろんだ、最初だから目視で範囲説明してやるよ」
「あぁ、頼む」
建物から出て、ぐるりと裏に回る。
うわー、こんな建物のすぐ近くなのか。
通りで臭いわけだよ。
「そこの角から突き当たりまでが、地図の区画だ。わかるか?」
マップとも一致してるな。
「わかった」
「台車とシャベルを貸すか?」
借りても使わねぇからな。
「いや、大丈夫」
「そうか」
変な顔してんな。
まぁ、そうだよな。
俺、手ぶらみたいなもんだしな。
「終わったら、事務所に来てくれ」
「わかった」
ヨーゴのおっさんは、チラチラこっちを見ながら戻って行った。
さてと、どうすっかな?
父さんたちに教わった龍族の魔法だと、威力ありすぎるっつうか、魔力使いすぎるか?
いや、別に攻撃魔法を使うわけじゃねぇけど。
どうせなら、さっき読んで覚えた人族の魔法を試してみるか。
ほら、俺も人族だしな?
龍族の魔法なら、【範囲指定】の【結界】で汚泥を囲って【滅却】すれば終わり。
あとは、【消臭】とかかな。
それを人族の魔法に置き換えると?
【結界】は【バリア】だな。
場所の【範囲指定】は、なんだ?
おっ、これかな?
【ロケーションエリア】。
【滅却】は、【ディストラクション】かな?
【消臭】は、【デオトライズ】か?
【浄化】とかもしておきてぇな。
【ピュリフィケーション】か?
【状態維持】とかも必要か?
【キープアップ】でいけるか?
【メインテイン】の方かな?
とりあえずやってみるか。
魔法の練習も兼ねてるからな。
こんな町中でやるのは、どうなんだとは思うけど。
攻撃魔法じゃねぇしな。
まっ、いいだろう。
【ロケーションエリア】の魔法陣展開。
場所を指定。
【バリア】の魔法陣展開。
汚泥、ゴミ、汚れを隔離。
【ディストラクション】の魔法陣展開。
対象はバリア内の汚泥とゴミと汚れ。
魔法発動。
おー、綺麗さっぱりなくなったな。
あとは、消臭と浄化だな。
【デオトライズ】の魔法陣展開。
【ピュリフィケーション】の魔法陣展開。
魔法発動。
で、この状態を維持して欲しいわけだよ。
ふたつともやっておくか。
でもこのふたつの魔法って、魔力を消費し続けるんだよな。
微々たるものだけどな?
1分で魔力1とかだからな。
そのくらいなら、寝たら回復するしな。
【メインテイン】の魔法陣展開。
【キープアップ】の魔法陣展開。
魔法発動。
ちょっとクサイのが緩和したか?
まぁ、ここだけ綺麗にしても他が汚泥だらけだからなぁ。
しかし、慣れない魔法は、面倒だな。
いちいち、魔法陣展開して確認しないと使えないのか。
数こなすしかないか。
「ヨーゴさん、終わったぞ」
「はぁ!?さっき始めたばっかりじゃねぇかよ」
「でも終わったし」
「適当なこと言ってんじゃねえぞ」
まぁ、そう言うのもわかるけどよ。
「なら、確認してくれよ」
ヨーゴのおっさんは、ぶつぶつ言いながら裏に回り、目を見開いて、口もあんぐり開けて固まった。
「なっ?終わってるだろ?」
じゃなきゃ、終わったって報告しねぇだろ?
「どうなってんだ!?どうやったんだ!?こんな短時間でこんなキレイになるなどありえん」
ありえんって、キレイになってるだろ?
「なんでだよ、ちゃんと掃除出来てるじゃねぇかよ」
これでもダメだってか?
「いや、すまん。こんなキレイになったことがなかったから驚いた。もちろん問題ない。依頼完了だ」
「わかった。手続きとかしてくれ」
「それはするが、頼みがある」
それはあれだろ?
「他のところも掃除しろって話か?」
「そうだ、やってくれねぇか?」
まぁ、そうなるよな。
「依頼で貢献度と報酬がちゃんとしてるなら、受けるのは問題ないぞ」
たくさん掃除して欲しいからって、貢献度下げられても困るしな。
「そこは、ちゃんとするから、頼む」
「わかった。けど、他に採取とかもやるから毎日とかは無理だぞ」
毎日、朝から晩までずっと、ドブ掃除とかやりたくないからな。
「あー、そうだよな。それでいい」
俺は完了の手続きをしてもらい、
冒険者ギルドに戻って、札を提出すると、本当に終わったのか確認されたので、
窓の外の汚泥だらけだった溝を見るように促すと、
なぜかそこにいたお姉さんたちがみんなで窓の外を見て歓喜した。
そして、なぜかみんなで俺の頭を撫で回して、仕事に戻って行った。
臭かったんだろうな…。
最後に報酬の大銅貨3枚をもらって、宿へと帰った。
大銅貨3枚じゃ、誰もやらないかもなぁ。
だって、手作業でやってたら、1日で終わらないだろう?
割に合わないもんなぁ。
宿の晩メシは、今日も可もなく不可もなく、だった。
なんでだ!?
おしらせ
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