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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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あの世はあった

「どうぞ。目をゆっくり開けて下さい」


 やっぱり声が聞こえる。それも身体の後ろの方で。軽く肩に手を添えたような感じもする。

 言われた通りいつの間にか閉じていた瞼をゆっくりと開ける。まだ光りに目が慣れていないし涙で曇っているけど、やっとあの場所から解放されたことに胸がホッとしている。


 指を使って涙を拭ったり擦ったりしてやっと目が慣れてきた。


 今度ははっきりと光景が見える。真っ白な壁と照明装置が見当たらないけど光を放つ天井に半透明の床。透けて見えているモノはよく分からない。

 それから自分の手を見る。久し振りに見る手・・・・やっぱり好きだな。それに制服もあの時と一緒。生きていた時と何も変わっていない。ホントに死んだんだよね?なんだかよく分からなくなってくる。


「大変お待たせしてしまってすみませんでした」


 忘れてた。振り返って声の方に視線を合わせると、そこには五センチは背が低い女の子がいる。真っ白な髪のツインテールには赤いリボンが施されていて黄色い瞳が印象的だ。それに陽に焼けたような褐色の肌。身に纏っている服は膝上の丈しかない白い着物みたいな感じでフチには赤いラインで縁取りされているし帯の色も赤い。裸足で履いている黒い下駄の鼻緒は赤い。あと手にはタブレットのような端末があった。


「では、早速行きましょうね」

 ニッコリと可愛い笑顔で言うと真っ白な歯が見えた。覗く八重歯はキバのように見えなくなくもない。

 まだ今の状況が分からず動くことができないでいると手招きをして

「こっちです。ずいぶん待って退屈でしたでしょ。最近忙しいんですよね。それで仕方なくトリアージを取っていたんです。まあ、あなたは重要度から言ったらDランクだったので後回しになってしまったというわけです。ここまでは理解出来ますね」


 全然理解できない。出来るはずもない。ただ呆然とするしかない。

 トリアージ?Dランク?何を言っているのだろう?

 ただ感じとして私自身はそんなに重要視される立場ではないということだけが辛うじて理解できるくらい。少しくらい質問しても構わないのかな?


「どうしました?早く行きましょう」

「・・あ、あの」

「?」

「ここって死後の世界で合っているのでしょうか?」

 やっと思っていたことが言葉になる。

「そうですよ。だってあなたは死んだんじゃないですか」

 当然のことを聞いてどうするっていう感じで返事が返ってくる。

 これで少し実感できるような気がする。ここが死後の世界ならずいぶんイメージと違う。

 そしてそんなことは慣れていると言わんばかりの笑顔で

「やっぱり動揺しますよね。みんなここには初めて来るんですから当然と言えば当然ですけど。これから閻魔大王様に謁見するんです。だから正確にいうとここは死後と現世のちょうど中間に位置していると思って下さい。もちろん死なないと来られない場所ではあるんですけど」


 閻魔大王!ホントにいるんだ。想像だけどやっぱり怖い顔してるのかな?ちょっと怖いな。


「あ、もしかして閻魔大王様のこと怖がってます?」

 こっちの気持ちを察したのだろうか。

「まあ、現世でのイメージが強いでしょうが、そこまで怖がることはないですよ。あ、ちょっと待って下さい」

 そう言って腕にあるこれまた現世でよく見かける腕時計型の端末を前にして耳には街でほとんどの人がしているイヤフォンがある。

「はい、はい。すみません、すぐに、はい、はい」

 誰と話しているか分からないが、駅とかでよくこういう光景を目にする。最近独り言を言う人が増えたなって思っていたけど、あれが電話だとはね。ここにも同じようなことが日常化していることが驚きである。


 死後の世界ならそんな端末に頼らなくてもテレパシー的なことで繋がりそうなのに。これも実態を知らないで生きている世界での想像に過ぎなかったのだろうか。ん〜なんかあんまり死んだって実感がなくなってゆく。もしかしたらホントはまだ生きているんじゃないのだろうか。


「安心して下さい。確実に死んでますから」

 またしても心を読まれているみたい。聞いてみたいけどまた先読みされてしまうのでは?

「あれ?どうしたんですか?もしかして私が心を読んでいるとか思ってます?あの、何て言いましょうか、これは所謂職業病みたいなもので、ここに来る人たちって同じようなことを考えているんですよ。だからその人の顔を見ていると大体のことが分かるんです。言っておきますが一応死んでいるとはいえ個人のプライバシーはちゃんと確保されています。それより急ぎましょう。予定よりずいぶん遅れちゃったんです。これ以上遅れると怒られるのは私ですが、結構怖いんですよ、怒ると。だから、ね」

 彼女に手を引かれ透明な回廊を早歩きする。コツコツと革靴の底が当たる音とカラコロと下駄の一本歯が当たる音がする。それ以外の音は海の凪に飲み込まれたように静かだし他に誰もいない。


 やがて目の前には床と同じ透明な階段が現れる。見上げるその先に見えるのは一つの黒い点。

 もしかして・・・・ここを上がるの?


「その通りです。これから階段をを上がっていきます。気合い入れてください。言っときますけどエスカレーターなんて近代的なモノはありません。ここはあくまでも死んだ人が来る世界です。一歩一歩自分の足で進むんです。さ、頑張りましょう」

「・・・・ずいぶんあるんですね」

「そうですか?階段の段数はその人が現世での罪の深さというか重さというか、そういうモノが繁栄されているんです。あなたなんか扉が見える分まだマシですよ」

「・・・はぁ」

 そうなんだ。人によって違うんだ。そんなことも知らなかった。当たり前だけど。だがしかしここを制覇しないと先に進めないのであるなら、それがここのルールなら自分の足で上がっていくしかないのかな。どうせ後戻りできるわけないんだ。そう覚悟して最初の一歩を踏み出した。


 私は自分の足で確実に進んでいるのに隣りにいる彼女を見ると涼しい顔して、まるで滑るように階段を上がっていた。一体どんな推進システムなのだろうか?そんなこと考える間もなく身体はだんだん熱くなってゆくし薄らだけど汗の予感さえしてくる。でも今はひたすら足を動かすしかないんだけど。


 時間は分からないしずいぶん上がったはずなのに、つい振り返って下を見るとすでに出発地点なんて翳んでいるし。一体何段あるの?死んだとは言えさすがにちょっと息が切れている。滲んだ汗を拭こうとポケットの手を入れて思い出す。そうだ、何も持ってきていない。やっぱりハンカチとちり紙はいつ何時でも持っていないと駄目だよね。ここが死の世界だとしても。


 彼女の後について一段一段さらに一段、気合いで頑張る。まあ、目標は目の前にあるんだ。何時かは着く・・・・はずだよね。


・・・はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・


「大丈夫ですか?疲れましたか?」

 汗の一つもかいていない涼しげな表情で聞いてくる。けれど声が上手く出ない。おまけにぜんぜん近づいた感じがしない。つい立ち止まって息を整える。大きく深呼吸すると飲み物が欲しくなる。

「少し休みましょう。でも少しですよ。私達は遅れているということを忘れないで下さい」

 頷いて答える。ホント何か飲みたい。死しても喉が乾くなんてことがあるなんて。こんなことならリュックにペットボトルの一つでも入れて持ってくれば良かった。

「あ、喉乾いてます?良かったら飲みますか?」

 そう言うと帯の中からペットボトルを出す。とてもそんなところに忍ばせているなんて。全然分からなかった。差し出された水はとてもよく冷えているのが見ただけでわかる。思わず喉が鳴って受け取った。

 キャップを廻すと“プシュ”と小気味いい音がする。一気に半分まで飲み干すと頭がキーンというあの痛みが襲ってきた。

「う・・・・おいしい・・ありがとうございます」

「最高ですよね。全部飲んで構いませんよ」

 お言葉に甘えて残りも一気に飲んだ。おかげで喉の渇きは癒される。空になったペットボトルをどうしたらいいのか困っていると

「ゴミを散らかすと罰金だから」

 そう言って受け取るとまた帯の中にペットボトルを入れた。やはり気になるがそれよりも気になったのは『罰金』という言葉だ。確かにキレイな場所だ。ゴミは似合わない。けど罰金って。それって言葉通りお金を支払うってことだよね。

「意外ですか?現世で聞いたことありませんか?地獄の沙汰も金次第って言葉」

 ある。知ってる。頷いて答える。

「ま、いざという時にはお金です。それは向こうもこっちも同じ。私達だってこうして仕事してお給料もらって日々やりくりして生活しているんです、ってあなたには関係ない話でしたね」

 もしかして死後の世界って現世とシステム的にはあまり変わらないのかな?

「さ、もう一息ですよ。頑張りましょう」

 ということはさっきの水って?あれ?もしかして後でお金を請求されたら困る。何もない。財布も持ってくれば良かったと後悔する。

「もしかして」

 もう心を読まれた。素直に頷く。私はどうしたらいいんでしょう?

「これはタダだから安心してください。例えて言うならマラソンの給水所みたいな?」

 それを聞いて安心する。今から取りに戻ることなんてできっこない。誰もがいずれここに来る。もし伝えられるものなら伝えたい。お金だけは絶対持っていった方がいいかもって。


 気合いを入れ直し再び階段を上がり始める。少しの休憩と水分補給のおかげでずいぶん体が軽くなった。もう少しだ。さっきは切手くらいだった扉が今では把手が見えるほどになっている。頑張ろう。その先に何があるのか。そんな希望すら心に芽生えていた。


 しかし思う。死ぬことって簡単なようで実はそうじゃないんだ。何もかも消えてなくなって楽になると思ったら大間違いだ。現世には現世のルールがあるようにここにもちゃんとルールがある、詳しくはわからないけど、それを守らないと罰金だってある世界なのだ。楽になるなんて夢のまた夢でしかないのだろうか。

 気が付いたら目の前に扉があった。どうやら着いたみたい。


「お疲れ様です。それでは先を急ぎましょう。さ、ご自身で扉を開けて下さい」

 言われた通り扉をゆっくりと開ける。音もなく扉が開ききるとすべてを溶かしてしまうような眩しい光が差し込んでくる。いよいよ閻魔大王との謁見が始まるんだよね。ちょっと怖いし緊張する。

 でも・・思いきって来た甲斐があった。私は自分自身のことにやっと意見を言えるんだ。そんな期待すら持って一歩中に足を踏み入れた。



読んでいただきありがとうございます。

ちょっと長かったかな、と思っています。

おまけに読み難いような気もします。

もうちょっと整理てアップしようと思います。

次回もよろしくお願いします。

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