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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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始まる高校生活

 入学式は講堂で行われた。移動の時、相楽の姿を探したが人混みに埋もれて見つけることができなかった。

 式が始まると前の方に相楽の姿があった。俺の視線には気付かないみたいで、こちらに振り向くことは一度もなかった。今のお前の後ろ姿は誰が見ても普通の女子にしか見えない。

 あの時の言葉。

 昔の相楽ではないのなら今俺が見ているのは誰なのだろう。そんなこと関係ないなんて言ってみたが正直なことを言えばやはり疑問だらけなんだよな。それともう一つ。アイツは全くの別人だとも思えない。その理由として、ふとした仕草なんかが昔の相楽そのものだからだ。

 そんなことばかりに気を取られていたら何時の間にか式は終わっていた。再び教室に戻る時相楽の後ろ姿を見つけた俺は

「一緒に教室戻ろうぜ」

 何気ない感じで声を掛けた。相楽は別にイエスでもノーでもなく普通に俺の隣りに並んで周りのペースに合わせて歩き出す。ときたま肩が触れる。それがどうにも動揺してしまう。俺は意識しないようと思っても、その度に甘い匂いがするとどうにも落ち着かなくなってしまう。よくよく考えてみたら俺は今までこうして女子と並んで歩いたことがなかった。それでも隣りにいるのは親友の相楽に違いないんだ。


「相楽は今日はこれからどうするんだ?すぐに家に帰るのか?」

 やっと出た言葉に相楽は俺の顔と合わせた。

「・・・今日は終わったらすぐに帰ろうかなって・・・」

「だったら久し振りに昼飯でも一緒にどうだ?あとはホームルームだけだし」

「・・・・・・考えとく」

「そっか。考えておいてくれ。それと俺だけだよな、今のお前のこと知ってるのって」

 相楽は不思議そうな顔で見ている。

「だからさ、お前があの相楽だってこと。他にも同じ中学がいるけどまだ誰も気がついていないだろ」

「多分そうだと思う。でも私の名前を見て驚いている人は何人かいた。みんな私の格好、想像できなかったんじゃないかな。話しかけてきたの・・・拓哉だけ。まだみんな気がついていない。それに私のこと見たらみんな驚くよね」

「ま、まあ。そうかもな。実際俺だってそうだったし」

「私も・・・自分のことに驚いてばかりなの・・・それと・・・少し怖い」

「怖い?」

「だって・・・何かの加減で昔の私に戻ってしまうかもしれないって。そうなったら今の私はどこに行ってしまうの?どこか暗い所に消えちゃうんじゃないかって」

 相楽は急に立ち止まる。おかげで他の生徒達はみんな俺達のことを避けて通ることになった。少し端に避けて。なかなか返答しにくい問題だし『気にするな』なんて言葉を簡単に掛けることだってできない。言葉に詰まっている俺を見て

「ごめん。私って変なことばっかり・・・・・行くね」

 言って相楽は一人で歩き出す。俺は何も言うことができなくて少しばかり後ろを歩いた。後ろ姿、揺れる髪、よく見ると相楽の背中ってこんなに華奢だってことに今さらながら気付かされた。結局教室に戻るまで一言も話すことができなかった。


 ホームルームの時間になって入ってきた担任の顔を見て俺は驚く。

「このクラスの担任、沢渡です。よろしく」

 このクラスには俺も含めて同じ中学出身が十人はいたから、他も同じように驚きの声を上げる。クラスが急に騒がしくなった。担任はそうなることは承知していたみたいに冷静に

「静かに。驚くのも無理もないのは承知している。南中出身者は落ち着くように。ちなみに何故俺がここにいるかと言うと簡単なことだ。俺は高校の教職も持っている。納得できたか?」

 俺が相楽の言葉を思い出す。もしかして相楽のことを心配してのことなのだろうか、なんて妙な勘ぐりをしてしまう。その解答は分からないまま自己紹介が始まる。


 こういうのは言うことが大体がお決まりみたいなものだ。俺もみんなと同じようなことを言ってさっさと済ませた。それにしてもどうして俺はずっと相楽のことを見ているのだろう。それにあと少しで廻ってくる。アイツは一体どんな自己紹介をするのだろう。斜め後ろから見ている俺の視線なんか全然気にしていないみたいだ。アイツのあんなに長い髪・・・見るのは初めてだ。本人は気に入っているのかもな。


「次。相楽」

「はい」

 相楽の番が来た。立ち上がるとみんなの視線が集まる。同時に同じ中学出身者がまたしても動揺の声を上げる。それはさっき以上に教室全体を覆ってゆく。俺だって前情報がなかったらきっと同じように声を上げていたに違いない。

「みんな静かに。聞こえないだろう」

 このことも予想していたかのようにすかさず先生が制する。まだ少しざわつきは残っていたが相楽は大きく深呼吸して

「南中出身の相楽美有です。私のことを知っている人は驚いていると思います。実はこの日が来るちょっと前まで病院にいて私は二ヶ月意識がなかったって聞かされました。当たり前ですけどその間の記憶はありません。意識が戻った時今の私がいました。前の私とは全然違っている私が。でも私は間違いなく相楽美有なんです。だからちょっと変わっているかもって自分でも思っています。こんな私ですがみんなと高校生活を送れること楽しみにしています。よろしくお願いします」

 クラスが水を打ったように静かになった。声を殺している空気がクラス全体に広がっている。驚きと意味不明なことが入り乱れている感じがする。

 全く、正直に話し過ぎだ。これが原因でボッチにでもなったらどうするつもりだ?暗黒の高校生活になる可能性だってあるのに・・・そんな馬鹿正直なところだってかつての相楽を思い出す。例えそうなったとしても俺はお前の味方でありたいと強く誓った。

 クラスの中の動揺という空気は当分消えそうにないだろうな。しばらくは相楽はいろいろな質問攻めに合うことくらい簡単に予想できる。その時俺はどうする?何をしてやれる?相楽は何を求める?

 急に降った課題が俺の頭上に降り掛かる。無視なんてできない。俺はアイツの親友だから。

 今始まったばかりの高校生活が色褪せないモノにするためにできるだけ寄り添っていこう。

 喧噪の中で俺だけは冷静さを保っていた。

11月20日。アップ前日は新月でした。

読んでいただきありがとうございます。

都内は何故か新月とか満月は曇天が多いので見る機会が少ないです。

今月は晴天で新月を堪能できました。運が良かったんですね。

今年もあと少しという言葉が聞かれるようになりました。

皆さま、お忙しいことと思います。

次回も立ち寄ってもらえたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

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