第1話 五味誠、異世界へ召喚される
俺の名前は五味誠。高校一年生。
今、体育館で全校集会に参加している。
……失敗だ。
何が失敗かって?
知り合いが誰もいない高校に入れば、人生を一からやり直せると思った。
結果は逆。話す相手が誰もいなくて、入学から一か月で完全ボッチになった。
詰んだ。
壇上では、生徒会長の中山美咲が司会をしている。
三年生で、学園のマドンナ。容姿端麗、成績優秀、性格まで完璧。
俺とは住む世界が違う。
その隣には、二年生の神崎優太。
サッカーの年代別代表で活躍したらしく、拍手喝采を浴びている。
こいつも容姿端麗、成績優秀、リア充の象徴。
一方の俺は、中肉中背でニキビが出始めた超モブ。
苗字の“五味”から、辛辣な渾名の歴史まである。
(……異世界にでも転生すれば、俺もイケメンに生まれ変われるのかな)
そんな現実逃避をしていた時だった。
体育館が、まばゆい光に包まれた。
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気がつくと、俺は光の円盤の上に立っていた。
隣には、美咲先輩と優太先輩。
三人とも、手首に黄金の平打ちブレスレットをつけていて、幾何学模様が青白く脈打っている。
「ここは……何? あれ、優太君」
美咲先輩が不安そうに周囲を見回す。
「美咲さん……ここ天国? 俺たち死んだのか? ……あれ、君は?」
優太先輩が俺を見て首をかしげた。
「一年の五味です……死んでないでしょ。この王道パターンは……」
三人同時に、自然と口が動いた。
「「「異世界転生!!」」」
「そうです、異世界転生です」
背後から声がして振り返ると、女神のような美しい女性が立っていた。
「うわっ……」
金色の髪が揺れ、瞳は宝石のように輝いている。
その存在感だけで、空気が変わる。
「私の名前はトリニティ、光の女神よ、ようこそ、選ばれし勇者たち。あなた方には、この世界を救っていただきます」
優太先輩は目を輝かせた。
「勇者……? え、マジか! 異世界! 俺が?」
美咲先輩も興奮気味だ。
「やだ……異世界転生! 本当にあるのね……」
(なんだ、二人ともテンション高いな……意外とオタなのか?)
女神は微笑み、俺たちのブレスレットにそっと触れた。
「あなた方には“固有スキル”が与えられています。では、順に鑑定しますね」
「おお〜王道展開!」
優太先輩がはしゃぐ。
まずは優太先輩のブレスレットが強く光り、空中にステータスが表示された。
「神崎優太。スキル《聖剣適性》――伝説級です。素晴らしい」
「キタ〜! マジかよ……!」
優太先輩はガッツポーズを決める。
次に美咲先輩。
「中山美咲。スキル《聖域魔法》。こちらも希少で強力です」
「聖……聖魔法……いいねいいね……」
美咲先輩は頬を赤らめて喜んでいる。
そして、俺の番。
女神がブレスレットに触れた瞬間、光が……弱い。
いや、ほとんど光っていない。
「……え?」
女神が眉をひそめる。
「え?」
俺もつられて声が漏れた。
「五味誠。スキルは……《残滓》……ざんし? 何このスキル……」
女神はステータス画面を操作し、詳細を読み上げる。
「残滓系スキルで現在取得しているのが…残滓共鳴1《リデジューリンク1》……効果は……残滓情動波読取……」
「…どうゆう意味すか?」
「え〜っねえ…わかりやすく言うと…“ゴミの気持ちがわかる”」
沈黙。
「……は?」
優太先輩が固まる。
「ご、ゴミ……?」
美咲先輩も目を丸くする。
「いやいやいやいや、待て待て待て! ゴミスキルは聞いたことあるけど、ホントにゴミにまつわるスキルなんて……」
女神は困ったように眉を寄せた。
「……その……本当に“ゴミの気持ちがわかる”としか……」
「そんなスキルある!?」
優太先輩が気まずそうに言う。
「……なんか特殊なスキルなんじゃないか。気にするな」
美咲先輩も慌ててフォローする。
「そ、そうそう! 後輩くん! 大丈夫!」
女神は申し訳なさそうに言った。
「……そうそう誠さん。あなたのスキルは、正直に言って“最弱”っぽいです。
ですが……世界が選んだ以上、何か意味があるはずです」
「いや、慰めになってませんけど!?」
こうして俺は――
ガチゴミスキルを持ったまま、異世界に放り込まれることになった。




