第九十六話 ティラキラ
「ティラキラ」
「うん?」
朝の忙しい時間が終わって、一息ついたところ。
わたしは、シールズに同調していた。
このパーティーは、ちょっと見てないと危ない。
アイティラさんが、廃墟の礼拝堂という初心者向けダンジョンで、ティラキラと言って石を指さし、その後自分を指した。
「この石をティラキラって言うの?」
ココが不思議そうにしている。
みんな立ち止まって、話しを聞いていた。
そう、廃墟の礼拝堂には謎の粘土がたくさん出土する。
魔力を帯びている粘土だけど、特に使い道もないので打ち棄てられていた。
他のダンジョンでも、割と落ちている粘土だ。
「ティラキラ」
アイティラさんが手の上に粘土を乗せてそうつぶやくと、粘土が鳥の形になった。
「鳥」
「えっ!?」
みんな驚いている。
はー、こんな使い道があったんだ。
わたしも、初めて知った。
「すごい、なんですかそれ」
「アタシにもできる?」
「できるかな、わからない」
「ティラキラ」
ココがやってみるけど、反応がなかった。
アイティラさんだけなのかな?
「なんだろう、魔力かな」
今度は、カーツ君がやってみる。
「ティラキラ」
「おっ!?」
粘土がフォークの形になった。
そのままにしていると、フォークの形で固まる。
「こういうフォークが欲しかったんだ、丁度良かったよ」
「えええっ、ダンジョンに落ちてた粘土だよ?」
「そういう問題じゃないでしょ!」
チェリーがティラキラすると、名前の通りチェリーが出来上がった。
「す……」
「す?」
「すごい発見だよ! この粘土売れるよ!」
チェリーさんが興奮している。
どうなんだろう、使い道あるのかな。
「使い道は、コットンとかに考えてもらおうよ、この秘密を売ればいいんだよ」
なんか、勝手なこと言ってる……。
いや、見てたけどね。
思った通りの形になるのなら、冒険でも使えるのかなぁ、粘土だけ持っておいて、必要なときにティラキラするとか?
「違う」
でも、アーレイが違うと言っていた。
「何が違うんだ? アーレイ」
グレイ君が優しく聞き直す。
「アイティラがこれを何に使っていたか聞けばいい」
「「それだ!」」
全員の声が合わさった。
「こ、これ何に使ってたの?」
「これは、アイキラに使う」
「アイキラ?」
「そう、壁とかに使われてる……」
え……まさか。
「あの、金色の金属?」
「そう」
「あの黄金都市の建物の!?」
「そう、それ」
「あの加工に使うってことか?」
「そうだよ」
「「売れる!」」
また全員の声がハモっていた。
「持って帰って権利を売ろう!」
この粘土自体は、名前を付けられることもなく、粘土とだけ呼ばれていた。
ダンジョンを作ると、たまにこの粘土が湧き出てくることがあって、なんでだかわたしも不思議に思ってはいた。
まさか、こんなことになるとは……。
わたしは、パーティーが帰ってくるのを心待ちにしていた。
「買って欲しいんだけど」
受付で、人垣のバリアを張りながら、チェリーが粘土を見せてきた。
「粘土をですか?」
わたしは、白々しく聞く。
なんだか、嘘が上手くなってしまいそうだ。
「見てて、ティラキラ」
それが、さくらんぼの形になった。
「おおおおっ?」
「すごいですね、ティラキラってなんですか?」
「なんなのかわからないけど、黄金都市の金属を加工するのに使うってアイティラが言ってる」
「ホントですか!」
ちょっと演技したけれども、驚いて見せた。
さて、話しはここからだけど……。
「希望額はおいくらですか?」
「すまない、コットン、俺たちでは値段が付けられない、ギルドで適正な値段を付けて欲しい」
「うーん」
王様、いくらで買ってくれるかな……。
「取りあえず、事情はわかりました。実際に使ってみて、それから値段を付けさせてください」
「高い!?」
ココがずばり聞いてくる。
みんな固唾を飲んでいた。
「物自体はありふれた物なので……あくまで、使い方を教えてもらった、そのアイディア料と言うんでしょうか、そういう物をお支払いできると思います」
「今のうちに、粘土集めておいたら高く売れる?」
「いいと思いますよ、加工が上手くいけばですが」
「やろう、粘土集めよう、マジックバックをいっぱい貸して欲しい」
「お願いします、今日の分はちょっとお高めに、銀1グラムと同じ値段で買いましょう」
「本当!?」
みんな喜んでいる。
アイティラさんも、なんだか嬉しそうだった。
「同じ銀貨の重さで交換です、今回だけですよ?」
「やったー!」
「いっぱい取ってきたんだ」
知ってる、見てたから。
加工を試すのに、いっぱい使うだろうし、使い方のアイディア次第で色々できるから、それくらいの値段にはなるだろう。
わたしは、その粘土を全部買い取った。




