第七十三話 門番と返答
領主様のお城に行くと、正面の門に門番がいた。
外に二名、内側に人数を悟られないように複数いるっぽい。
不法に侵入しようとすると、門番の数がわからないのはやっかいなんだろう。
ベテラン冒険者から領主になっただけあって、その辺りは周到だった。
わたしは、堀にかけられている橋を渡って門の前まで行く。
「どうしたお嬢ちゃん?」
ギルドの制服を着た七歳のわたしを見て、釣り目の門番が聞いてくる。
持っている槍で進路を塞ごうとかはしてこない。
まぁ、それはそうだよね。
「銀の月冒険者ギルドのギルドマスターである、クロースから、領主様に手紙をお届けに来ました」
「手紙だぁ? どれ、見せてみろ」
釣り目の門番が手を伸ばしてくる。
わたしはそれから逃れるように、身体を捻った。
「領主様に直接お渡しするように言われています」
「領主様はお忙しいんだ、こっちで預かる」
「だ、駄目です」
わたしは拒否する。
門番は、ちょっと頭に来たみたいに声にドスを利かせた。
「めんどくせえガキだな、さっさと手紙を寄越せ」
今度は本気で掴まえに来る。
どうしよう!
「オイ待て、銀の月冒険者ギルドは、領主様も世話になった昔なじみのギルドだ、なにか理由があるのかも知れない」
そこに、もうひとりの門番が助け船を出してくれた。
こっちは少し話のわかりそうな人だ。
「だから、俺たちが手紙を預かって確認すりゃ良いでしょ?」
もうひとりの門番は、問答をするつもりはないらしく、門の内側に向かって声をかけた、
「おい、領主様に確認だ」
「ふぅ」
この人がいてくれて良かった。
手紙が届けばそれで良いんだけど、門番の判断で必要ないと止められてしまったらどうしようもない。
「いいよ、行かなくて! オイガキ、手紙を寄越せっ!」
「えっ!?」
釣り目の兵士が乱暴に肩を掴んでくる。
「きゃあぁぁぁっ!」
「オイ、やめろ!」
もうひとりがそれを止める。
でも……。
「何を揉めてるんだ!」
責任者なのか、内側から人が出て来た。
少し年かさで、階級章が違う。
「ハッ、銀の月ギルドマスターの使いの者が手紙を持参しております。領主様に直接手渡したいとのことです」
責任者らしき人が、わたしを見る。
「今、領主様に確認を取っている、お前達は持ち場に戻れ」
「チッ」
釣り目の兵士は、渋々とわたしから離れた。
「…………」
鑑定する。
すると……釣り目の兵士の職業が、兵士ではなく盗賊になっていた。
盗賊……シーフギルドの人なんだ。
元々、シーフギルドの人間が門番として入り込んだのか、門番が買収されているのかはわからないけど、良くない兆候に見える。
「領主様に確認を取りました、中に通すようにとのことです」
確認に行っていた者が、戻ったようだ。
わたしは胸をなで下ろす。
「チッ」
「通れ」
わたしは、領主様の城の中に案内された。
攻め込まれたときのためなのか、複雑に作りが入り組んでいる。
案内する兵士も、わたしが道を覚えられないようにか、わざと遠回りして進んでいるようだった。
「ここが領主様のお部屋だ、粗相のないようにな」
「わかりました」
おばあちゃんの知り合いらしいけど、本当だったんだ。
普通なら、冒険者ギルドの使いに領主様が自ら会うことはないだろう。
兵士の人がノックする。
「銀の月冒険者ギルドの者です」
「入れ」
中から領主様の声が聞こえてきた。
兵士の人が扉を開けてくれたので、わたしは中に入る。
するとそこには……何度か演説でも見た、豪放磊落な領主様の姿があった。
「お初にお目にかかります、銀の月冒険者ギルドのクロースの孫で、コットンと申します」
「噂はかねがね聞いているぞ、座りなさい」
「はい……」
うわさ? うわさってなんだろう?
ちょっと考えながらも、おばあちゃんからの手紙を出す。
新種のハチメイのこととか、シーフギルドのこととかが書かれているはずだ。
「クロースから手紙ですので、お受け取りください」
「うむ」
領主様は手紙を受け取ると、それを読み始めた。
でも、すぐにわたしの方を見る。
「君はどう見る?」
「え? わたしですか?」
それが領主様の返事だった。




