第七十話 シーフギルド
「シーフギルドが懐柔されているって、どういうこと?」
アイヴォリーに、ハチメイを流通させる商人のことを調べてもらったんだけど、意外な答えが返ってきていた。
「かなりの利益がでてるっぽいっす、プリン屋くらいの利益じゃ無いッスね、これはかなりきな臭いッスよ」
シーフギルドが麻薬の流通を黙認するくらいの利益。
しかも、ハチメイなんて、およそ儲からなさそうな麻薬で……。
「あんまり嗅ぎ回ると、シーフギルドに嫌がられるッス」
「どうする? コットン」
「プリン屋さんにハチメイを卸しても、そんなに儲けは出ないよねぇ」
「うん、おかしい」
「うーん、まずは、その商人を調べるところからかな」
「じゃあ、あっしが張り込みますか」
アイヴォリーは乗り気だ。
こういうときは心強い。
「報酬は僕が出すから!」
「期待してるッスよ」
「その商人の出入りしているお店と本拠地も調べて欲しいの」
「了解ッス」
とりあえず、調査開始というところだった。
翌日。
裏庭を見に行くと、アーレイが訓練を受けていた。
他の子に混じって木刀を振っている。
ちょっとへっぴり腰で、あんまり向いてはいなさそうだった。
「ふむ、武器を使って戦うのは無理だな」
「はぁ、はぁ、はぁっ……」
やっぱりというか、ネジルさんに適正無しと言われてしまった。
ずっと深窓の令嬢みたいな暮らしをしていたから仕方ないか。
「しかし、詩と呪詛があるのだろう?」
「そうです、そっちの稽古は付けて貰っています」
「まぁ、基礎体力を付ける意味合いで剣を振るのは良いだろう、どのみちこの体力では冒険には行けん」
呪詛は珍しいスキルだ。
それがあるだけでも、十分に食べていけるくらいの価値がある。
そこに加えて、詩人としての適正もあるんだから、後は体力だけだね。
「アーレイは歩くの苦手?」
「ずっと部屋に籠もっていたので、でも、頑張ります!」
ネジルさんが離れると、また剣を振っていく。
他の子達も、卒業できそうな子からまだまだの子まで、色々だった。
このまま大人になっても、就職先が兵隊しかない。
それじゃあすぐに死んでしまうので、冒険者になろうというのがそもそもの考え方だ。
まだまだの子も、訓練から外されないということは、適正があるということだから、頑張れば強くなれる。
一人前の冒険者になれるはずだった。
「アーレイ、詩の練習するよ」
「は、はい!」
詩人のシールズに呼ばれて、アーレイが裏庭を離れる。
現在、裏庭には20人くらいの街の子達がいた。
冒険者になって、少しずつ稼ぎ始めている卒業生の噂を聞いて、やって来る子が増えたからだ。
もちろん、親御さんに確認して、許可を取ってから訓練をしている。
午前中は、みんな武器の使い方と基礎訓練をしていた。
午後になると、神殿の子もやってきて、真名魔法や女神魔法の訓練、モンスターとの戦い方なんかの座学をやる。
魔法の適正無しの子は、スカウト知識を最低限覚える感じだ。
午後になってお昼ご飯を食べると、訓練生の座学が始まった。
今は暇なので、わたしも邪魔にならないように見学する。
スカウト組のところで、ネジルさんが実物を使って鍵の仕組みを教えていると、男の子が鍵を開ける順番になった。
「次はカーツだな、やってみなさい」
「はい」
カーツ君は真面目そうな子で、手先も器用なようだ。
多分簡単なんだろうけれども、なんなく鍵を開けてしまう。
「カーツ君上手だね」
「いいなぁ、上手いなぁ」
「そんなことないよ」
みんなから賞賛されていた。
本人は、照れくささが勝っているようだけど。
「おや、カーツ、お前……」
ネジルさんがカーツ君を椅子に座らせる。
すると、お腹の下辺りを撫でた。
「この辺りに意識を集中させてみなさい」
「焦らず、呼吸を整えて」
「そう、そうだ……」
おっ……。
すると、カーツ君から魔力を感じた。
「おめでとう、カーツ、魔法の素質が開花したな、明日からは魔法の講義に参加しなさい」
「ま、魔法ですか? でも……」
「大丈夫、剣をやりたいなら両方使えるようになればいい、しっかり覚えておいて損はないぞ」
「わ、わかりました」
「カーツやったな」
「うらやましいぜ」
「凄いねカーツ、おめでとう」
「う、うん、ありがとう」
どれ、ちょっとカーツ君を鑑定してみよう。
【名 前】 カーツ
【年 齢】 13
【職 業】 邪教徒(D)
【レベル】 3
【体 力】 D/C
【魔 力】 D/C
【信仰心】 D/B
【筋 力】 D/C
【生命力】 C/B
【素早さ】 E/D
【知 恵】 D/B
【幸 運】 E/D
【成長率】 D/C
【スキル】 剣技〈E〉、スカウト〈E〉、サロード<E>
【因 果】 家族
【装備品】 ロングソード(E)
【気持ち】 家族のためにお金を稼ぎたい
「……っ!!」
邪教徒!? サロード教!?
とんでもない鑑定をしてしまったわたしは、どうしようかひとり悩んでいた。




