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地位を奪われた元ダンジョンマスター、7歳のギルド受付嬢に転生して冒険者を作成し、自分の作ったダンジョンを攻略します  作者: 夕綺柳
第二章

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第六十六話 招かれざる客


「アーレイ!」


 みんなが倒れているところに、アインザックさんの声が聞こえる。


 するとそこには、前に歌を歌っていた女の子が立っていた。


 レベル2の呪詛師の子だ。


「お兄ちゃん、止めないと」


「わかってるが、できるのか?」


 呪詛師に必要なのは、相手の情報だ。


 ほとんど、情報も無しに戦ったトレイシーは本当にすごい。


「大体わかるよ、ラドクリフさんのことも、この化け物のことも」


 アーレイと呼ばれた子は、手を振りかざすと上から下に下ろす。


 そして、その瞬間。


 瞬き一つもしない時間に、隕石が降ってきていた。


 異形を中心に爆発が起こる。


 わたしは、身体を伏せて爆発に耐えていた。


 倒れていたフラニールさんとオリーブが飛ばされて、異形から離れる。


「確率操作とは、やりますよあの女」


 同じ呪詛師だからか、トレイシーが喜んでいる。


 空から隕石が降ってくる確率を操作したということか。


 何気に凄い。


 でも、異形はそれだけでは倒れずに、凶暴状態を真化させていた。


「キシャァァァァァァァァァ!」


 身体中、大量に生み出していた口の中から目が出て来る。


 そして、その目から怪音波を出した。


 これは、一つ目のモンスターがたまにやる攻撃だ。


 効果は様々で、この異形がどんな効果を出すか想像も付かない。


「無駄です!」


 アーレイが声を発すると、その怪音波が自分に跳ね返っていた。


「イエエエェェェェェェェ!」


 何をどうした確率なのかはわからないけど、異形が苦しんでいる。


 凶暴状態になってから、更に真化までした。


 もう命は長くないはずだ。


「最後は、とっておきを見せましょうぞ!」


 トレイシーが杖を振るう。


 すると、怪音波が色とりどりに変化し、異形の目から放たれていた。


 そしてそれが、アーレイによって跳ね返され、異形に返って行く。


 パンと、風船が割れるような音がした。


 それが……異形の最後だった。


「うっ……」


 フラニールさんが起き上がる。


「オリーブ!」


 デイジーがオリーブを助け起こす。


「だ、大丈夫ですわ……これくらい……」


 どうやら勝ったようだった。


 デイジーのところにデスタがすり寄っていく。


「デスタも頑張ったね」


「オン」


 デスタを撫でると、気持ちよさそうな声を出す。


「あの男を捕らえろ!」


 名前を言えないと言っていたオリーブの家の人が、部下達にそう命じる。


 あの男とは、ラドクリフのことだ。


 気絶しているところを、引きずるように連れて行かれた。


 改宗するのかなぁ。


 そうなれば、国王陛下もモンスターを司る神の創造を諦めてくれるか。


 すると、その場にふさわしくない拍手の音が聞こえてきた。


 え!?


 姿を見たのは三度目。


 全身黒ずくめで黒い髪に黒い瞳。


 わたしを殺した……現ダンジョンマスターだ。


「惜しいな、実に惜しい」


「貴っ様っ!」


 異形との戦いでは聞けなかった、トレイシーの本気の声だ。


 一秒もない、その数十分の一の時間に、倒れている天上の歌のギルド員の全ての武器が突き刺さる。


 そして隕石が二重三重に降り注いで爆発を起こし、地面が割れてダンジョンマスターを挟み込んだ。


 爆発の煙が晴れる。


 すると……そこには、倒したはずの異形が3体立っていて、全ての攻撃を受け止めていた。


「この成果のつづきは俺がやってやろう」


「神を作るつもりなの?」


 わたしの問いかけに、ダンジョンマスターは笑う。


「作れないと思っているな? まぁ、ものは試しだ、やってみるさ」


「あれは……ダンジョンマスター!?」


 パーシアさんが叫ぶ。


 半年前の広場で見たんだろう。


 それを聞いたアインザックさんも叫ぶ。


「アーレイ!」


「お兄ちゃん!」


 アーレイが呪詛を掛ける。


 また防ぐかと思いきや、ダンジョンマスターは呪詛を受けた。


「やれる!」


 身体がどんどん変質していく。


 歪み、捻れ、膨張し、収縮した。


「ふふふ、俺に呪詛を掛けるか」


 ダンジョンマスターは笑っている。


「それでは、面白いものを見せてやろう、呪詛返し!」


「……っ!!」


 アーレイの放った呪詛が、アインザックに跳ね返る。


「おおっ、おおおおおおおおっ!」


 腕が変質し、牙が生え、角が伸びて来る。


 呪いへの耐性があると言っていたけれども、これは防げないのか。


「お兄ちゃん!」


 呪詛を和らげる方法なのか、アーレイがアインザックを抱き締めた。


「ふふふ、やはり呪詛も俺には利かないな、自分が天才過ぎて怖くなる」


 駄目だ、今回はこちらの手駒が少なすぎる。


 ダンジョンマスターと戦えるのは、トレイシーとアーレイだけだろう。


「それでは、コレはもらっていくぞ、じゃあな」


 ダンジョンマスターは異形を摘み上げると、そのまま消えた。



今日は、二話投稿します。

次で二章終わりなので、よろしくお願いします。

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