第六十四話 真祖の襲撃
オリーブのお爺さんを治癒してから、半月ほどが経過した。
若い冒険者達はお金を稼いで日々を楽しそうに過ごし、ベテラン達は黄金都市でどう稼ぐかに血道を上げている。
その稼ぎは街に還元され、少しずつだけど活気が戻っていた。
黄金都市の噂は他の街にまで届いていて、何パーティーか新しくギルド登録をしたくらいだ。
この分だと、赤い風にも戦力が入っていることだろう。
「コットン」
「オリーブ?」
オリーブが見知らぬ男を連れてきていた。
神官衣をまとっているので、家の者か近しい者だろう。
「話のつづきですわ、どこか人気のないところで」
「じゃあ、わたしの部屋にどうぞ」
1Fは冒険者用の酒場や解体所、物販コーナーなどがあり、2Fは冒険者用の宿になっている。
100人を超える冒険者が登録されているけれど、2Fに住んでいるのは60人程だ。
訓練所(ギルドの裏庭)出身の街の子達や、一部の腕がある冒険者達はもっと良い宿を取っていた。
3Fは家族のスペースと、物置やX指定アイテムの保管庫、一部を冒険者に貸し出すスペースにしている。
部屋に入ると、男がぺこりと頭を下げた。
「私の名前は言えませんが、信用して頂ければ」
「お爺さまの腹心ですわ」
それなら信じないわけにもいかない。
「何か成果が出ましたか?」
わざわざ尋ねてきたってことは、あるんだろう。
報告するような何かが。
「国王派の企みは阻止しなければいけません」
「はい」
「とりあえずのところ、アンデマンドの街の天上の歌支部は解散となるよう手配を取りました」
ふぅ、ひとつ問題は解決したかな?
まぁ、アインザックさんとラドクリフが個人で動くこともあるだろうから、油断は出来ないけれども。
「まだ国王は神の創造を諦めてないんですよね?」
「諦めていないでしょう。しかし、情報にあった通り、ラドクリフという男が使うコールゴッドが神の創造に必要なのは間違いありません」
サーリャと同じ見解なんだ。
詳細まではわからないけど、それだけでも十分かも知れない。
「それと、手荒なことはしませんが、彼の故郷が邪神の一大拠点になっているというのは見過ごせません」
「そうですよね」
邪神と呼ばれるには、それだけの理由がある。
人間の平和な生活には、害になる教義や行動が多すぎるんだ。
「それに絡めて、ラドクリフを逮捕し、改宗させるというのが現時点での方針です」
改宗……洗脳?
怖い怖い、考えないでおこう。
「はい」
そこにノックがした。
モルソー君に、部屋に行くと伝えてあったから、問題でも起きたんだろうか?
「コットンさん、お客様です。お急ぎみたいです」
お客様? 誰だろう?
「ええい、どけ!」
「うわぁ、ちょっと待ってください」
モルソー君の制止も聞かずに部屋に入って来たのは……ヴァンパイアの真祖、ラファエルだった。
「アインザックとラドクリフを襲撃したら、コールゴッドで返り討ちにあったわ!」
あわわ、神殿の人とラファエルは鉢合わせちゃいけない関係だ。
わたしが、ふたりからラファエルを隠すように立つと、そんなことどうでもいいと言わんばかりに肩を掴まれる。
「そのコールゴッドを使ったラドクリフが、新しい神の創造を願っておるぞ!」
「そうなの!?」
「なんですと!」
天上の歌がこの街から撤退となり、ヴァンパイアにも襲われて、色々と切羽詰まったのかも知れない。
窮鼠猫を噛むじゃないけど、活路がそこしかなかったのか。
「どうしよう」
今は、サーリャもママも出かけていていない。
ガブリー達もいないし……。
あ、トレイシーがいた……。
フラニールさんは今日休みだ。
「頼りになる冒険者がいます、天上の歌に行きましょう!」
わたしはフラニールさんのパーティーを連れて、天上の歌の支部に向かった。




