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地位を奪われた元ダンジョンマスター、7歳のギルド受付嬢に転生して冒険者を作成し、自分の作ったダンジョンを攻略します  作者: 夕綺柳
第二章

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第六十三話 ヒュギーアの詩


「う……うぁ……うぅ……」


 オリーブに案内されて、実家のお屋敷に来た。


 結構大きな家で、格式を感じる。


 お爺さんは寝たきりで、あまり話もできないようだ。


 看病しているメイドさんに下がってもらって、オリーブとシールズとわたしの3人になる。


「うぅ……う……」


 お爺さんはうなされているけれど、目の光が消えていない。


 ちゃんと話は通じるように見えた。


「これからヒュギーア神のコールゴッドを使います。お覚悟はよろしいですか?」


 お爺さんは、なんとかコクリと頷いた。


 他に手はないことも、もうそんなに先が長くないことも理解しているんだろう。


「じゃあシールズ、始めて」


「では、ヒュギーア神の誕生を讃える詩です。ご静聴よろしくお願いします」


 シールズは、持っていた弦楽器を軽やかに奏で始める。


 ちょっと格調高い感じで、神の誕生という曲目にピッタリだと思った。


「――ヒュギーアは粗たる六大神の一柱、光神バルリオンの6番目の横暴な娘として生まれる」


「――光の巫女たる母女王は、ヒュギーアを嫌い、地下深くの闇に落とした」


「――闇にはルルカがいて、ヒュギーアに仕えた」


「――闇から這い上がると、ルルカは灰になり消え失せた」


「――悲しんだヒュギーアは改心し、母女王に助けを求める」


「――闇に戻るならルルカを元に戻すと約束した母女王は、洪水で死んだ」


「――バルリオンは改心した娘に治癒の力を与える」


「――ヒュギーアがルルカの灰に治癒を施すと、ルルカの姿をした母女王が生まれた」


「――そして、母女王は成長しバルリオンと子をなすと、その子は世界樹となりヒュギーアに永遠の治癒の力を与えた」


 9節の物語を歌い終えると、シールズの背後に光が差した。


 その光は溢れる程に大きくなっていき、思わず目を瞑ってしまう。


 そして、その光が収まると……そこには、美しい少女の姿をした威厳ある女神が降臨していた。


「芸術のコルシアに愛されし娘よ、我を呼んで何とする」


 わたしは、輪廻の女神アニエル様としか話したこと無いけど、もっとずっと古い神様のように思えた。


 話しやすさとか、親しみ易さみたいなものが感じられない、純然たる『神』だ。


「この者に治癒の施しを」


 シールズが、やっとそれだけを言う。


 そして、ヒュギーア神はわたしを見た。


「そこの幼子よ、お前は見たことがあるぞ、アニエルの愛娘だな」


「あ、え……」


 そ、そうなの?


 でも、口で答えるよりも心がそうだと答えているようだった。


「幼子に免じて施しを与える、恢復(かいふく)よ」


 お爺さんに光の雫が落ちる。


 どこか虚ろだったお爺さんの目がカッと見開き、ベッドから飛び起きた。


 そして、消え去るヒュギーアに向かって深々と頭を垂れる。


「終わった……んですの?」


 オリーブが静寂を破る。


 すると、お爺さんが起き上がり上着を羽織った。


「お嬢さん方、ワシを助けてくれたのですな」


「いえ、下心があってのことです」


「その下心とやら聞かせて頂こう」


 神様を見た後だから麻痺してるけど、さすが威厳がある。


 人間としては、かなりのレベルで威厳があった。


「国王がモンスターを司る神をこの街で創り出そうとしていますが、邪神です。

それを止めてもらいたいのです」


 お爺さんは、髭を撫でつけるようにしながら考えている。


「信じないわけには行きませんな、もう少し事情を聞きましょう」


 わたしは、話せるところを全部話していった。


 オリーブとシールズにも聞かれてしまうけど、問題ない範囲でだ。


「国王の私生児に、その付き人、天上の歌のギルド員ですか」


「そうです、国王陛下の後ろ盾がある以上、わたし達ではなにもできません」


「ふむ……そして、アルクメーネという土着の神……すぐに裏を取らせましょう」


「お願いします」


「オリーブ、お前の父親を呼んできてくれ」


「はい、お爺さま」


 オリーブに、行くぞと視線を向けられる。


 わたしは、シールズを引っ張ってお爺さんの部屋から出ていった。






「いやあ、上手く行って良かったですよ」


「上手くいかないこともあるの?」


「そりゃあ、神様を呼べるかどうかは、やってみなければわかりませんて」


 そうなのか。


 しかも、気安く呼ぶと罰を受けることもあるとか怖すぎる。


「今回の仕事料は、オリーブが払ってくれるから」


「わかりました、それじゃあ、もういっちょ仕事をしますかね」


 ギルドに帰ると、シールズは早速営業を始める。


 遅い朝食を取っているパーティーのところに行くと、曲を奏でていった。


 一曲いくらなんて言わずにタダで何曲か歌っていく。


「夜になったらテーブルに呼んでください、そのときにはお代を頂きます」


 はぁ、シールズは戦っても強そうだけど、吟遊詩人って戦えるのかな。


 戦の神とか雷の神とか効果がありそうだけど……。


 訓練で適正無しだった子に、吟遊詩人の適正があるなら教えてもらったりも出来るんだろうか。


 なんにせよ、シールズの加入は心強かった。



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