9話:証拠と戦力外通知
「はぁ…はぁ…」
「はぁ、はぁ」
葵をナンパした男達から全力で逃げた2人は、少し離れた公園のベンチに座りゼーハーゼーハーと息を荒げていた。
「はぁ…はぁ…大丈夫かい?」
「はぁ、はぁ、はい、ありがとうございました……」
「お礼なんていいよ。困っている女の子を放っておくなんて出来ないからね」
息を整え終えた女の人が爽やかな笑顔でそう言う。
整ったかっこいい顔と相まって、かなり似合った表情だ。思わず見惚れてしまい、彼女の顔をまじまじと見てしまう。
「……あれ?もしかして木崎琴羽さん?」
「え?……そうだけど、知り合いだったかな?」
冷静になって彼女を見て気がついたが、葵は助けてくれた女の人が誰なのかを知っていた。
「いきなりですみません。僕同じ土古花乃高校の米谷葵です」
「……すまない。昨日入学したばかりだから誰が誰やらわからなくて……」
「それは仕方ないですよ。僕も今まで気がつかなかっもの」
「……だが、言われてみるとそうだな。私と同じ制服……ん?」
女の人……てもう名前わかっているか。
琴羽は葵を上から下までみると、とても不思議そうな顔をした。
「君、なんで男子の制服着ているんだい?」
「え!?」
琴羽からの(当然な)質問に葵は驚いた様に声をあげる。
「なんでって、僕は男だからだよ!!」
「えぇ!!いや、冗談だろう。こんなに可愛くて美しく神秘的な見た目の君が男だなんて」
「じゃあ証拠を見せます」
そう言って葵は琴羽に背中を向けてガサゴソと何かを始めた。
「お、おい!ズボンが動いているぞ!まさかここで……いや、こんな所で……変質者と間違われてしまうぞ!!」
「はい」
「ひゃあ!!……ん?」
葵が急に琴羽の方に向き直る。それに何故か驚いて琴羽は一瞬顔を逸らすが、すぐに向き直る。
「何慌ててるの?顔真っ赤だよ」
「こ、これは……」
「生徒手帳だよ。証拠を見せるって言ったでしょう」
「あ、ああ、証拠ってこれのことか……勘違いしてしまった。恥ずかしい……」
「え?今なんか言った?」
「い、いやなんでもない。それより……」
琴羽は顔を赤くしながらも突き出された生徒手帳を見る。
「米谷葵……男……本当だ」
「ね、これで納得した?」
「う、うむ。すまない。本当に男だったのだな」
「そうだよ」
「……と言うか、クラスメイトだったんだな」
「うん。て言うか、木崎さんの名前言ったよね」
「あ、ああ。そうだったな。……しかし、すまないな。クラスメイトなのに気がつけなくて……」
「大丈夫だよ。昨日初めて会って、話もしてないし。初対面だよ」
「そ、そうだな。しかし、君は私の事を分かっていたじゃないか」
「僕、人の名前覚えるの得意なんだ。それに木崎さんかっこいいから印象に残ったんだ」
「そうか。
おっと、もうこんな時間だ。すまないが帰らなくてはいけないんだ」
「僕もそろそろ帰らないと」
「じゃあまた明日会おう。あ、よかったら教室で声を掛けてくれ。2人であんな経験をしたんだ。もう私達は友達だ」
「うん。そうするね」
「ははは、よろしくな」
笑いながらそう言うと琴羽は葵の頭を撫でる。
「えへへ〜」
「っ!!キュン!!」
お約束のあれが発動した。
「じゃ、じゃあ私は帰るからな。君も気をつけて帰るんだぞ(なんなんだあの可愛い笑顔は!!)」
そう言って琴羽はさっきより顔を赤くして走り去っていく。
「じゃあね〜(木崎さん、ちょと変わっているけどかっこよかったな。あんなふうになりたいな)」
琴羽の姿が見えなくなるまで見送り、葵も公園を後にした。
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その頃美乃は……
「あ、また外れた……」
「……やっぱり君、バスケ向いていなかったね」
「……入部やめます」
「……うん」
戦力外でした。




