52 突入
俺達は、魔法少女達の総攻撃の中に密かに潜んでいた。リゼの会社の研究部門で密かに保持していた魔具の飛行船を使って戦場近くを飛んでいたのだ。
ユーラル・アクアと連絡をしつつ、チーム・グレイスが結社No.3のガーベラに襲撃された情報を知り、現場に急行した。ガーベラの凶行に、リゼの堪忍袋の緒が切れ、俺も助太刀に入っていった。
今は、飛行船に戻り、戦場を離脱しているところだ。
「皆、本当にごめん。これで魔法少女連盟に目を付けられる」
「いや、さっきのは仕方ないよ。俺もああしていたと思う」
「大丈夫じゃないですか? こっちの準備もまもなく完了しますし」
準備というのは次元竜のことだ。なかなか気難しく、次元に穴を開けてくれないところを、何とか取り入っているところなのだった。
リゼの会社の研究部門に戻り、俺の家から持ってきた奈雲一族の転移魔法陣から移動する。そこでは、研究部門のスタッフやダリヴァーが次元竜とやり取りをしているところだった。
血気盛んなダリヴァーは次元竜に力を示し、スタッフは次元竜が求めるものを解析している。
「おっ、早かったじゃねーか」
「いやまあ、色々なことがあってね」
ダリヴァーに俺が答える。ダリヴァーにも状況を説明した。
「あー、ガーベラね。あいつはやたら感情的になるからな。どうも魔法少女への敵意があからさまだし」
「あたしが自分を抑え切れずに攻撃しちゃった」
「予定が狂ったら変更すればいいって、いつもリゼが言ってることだろ」
「まあ、確かに」
リゼはそこまで悲観的にはなっていないようだった。というか、リゼが爆発しなければ俺が突入していたかもしれない。
「で、こっちの成果はどうなんですか?」
「まあ、見てくれよ」
ハヤテの質問にスタッフが答えた。
巨大な次元竜は寝そべっているだけだったが、その子供と思われる個体が近づいてきて、誰もいない方向に向かって何かを吐き出した。すると、空間に穴が空いた。
「ありゃ、上手くいったんだ」
「なるほど、次元竜自体は動かなかったけど、この子がね」
ダリヴァーが次元竜に挑む姿を見たり、スタッフが次元竜の要望を聞いているのを見かねた子竜が力を貸してくれることになったらしい。
「ちょうどこっちの準備も完了だったんだ」
「なら、結果オーライかもしれないな」
リゼと俺が言った。
そうして、ネクロズガカ本体のいる裏の世界への道は開かれた。流石にリゼがユーラル・アクアとしても戦ってきた直後で、すぐに突入というわけにはいかなかったが、後はタイミングを測るだけだった。
チーム・グレイスが被害を受けてしまったので、魔法少女による総攻撃かつ封印の儀式はいったん中止になった。チーム・グレイスが回復次第、再度行われるだろう。
俺とリゼが正体を晒してしまったので、こちらもあまり悠長にはしていられない。時間が経てば、魔法少女連盟はこちらへの干渉を始めるだろうから。
一晩の休息の後、俺達も作戦に移ることになった。
◇
夜になっても、俺は研究部門のミーティングルームにいた。リゼやハヤテもいたし、スタッフもせわしなく動き回っている。
「リゼ」
「ん?」
俺はふとリゼに話しかけた。これまでのことのお礼を言いたかったのだ。
「俺は、チーム・ユーラルへの関わり方でだいぶやらかした」
「どうした、改まって」
「闇に堕ちかけて皆に迷惑をかけたし、俺のやってきたことは何だったのかって思ったよ。でも、そこにリゼが意味をくれた。だから、ありがとう」
「それはあたしだけに言う話じゃないよ。サイファーギアのことはおばあちゃんから始まって、今までに多くの人が関わっているんだから」
「そうかもな。だったら皆に言う! ありがとうございました!」
俺は突如、部屋に向けて怒鳴った。施設中に届くといいなと思いながら。
「突然ビックリするわ! ばっかじゃないの!!」
リゼが耳を抑えて俺に抗議の目を向ける。
「悪い悪い。でも、そういう気分だったんだ」
「はぁぁ……。まあ、だったらあたしもお礼を言うよ。ネクロズガカを倒すための力を蓄えていたこと、ありがとね」
「それも、俺一人に言う話じゃないぜ」
「奈雲一族の皆に言ったつもり。あたしは怒鳴ったりせんぞ」
「あはは、そっか」
ダリヴァーやハヤテもそうだ。戦力としてこれほど心強い者はいないだろう。ダリヴァーに関しては、強大な敵だと思っていたのに協力関係になっているのは不思議な感覚ではあるが。
「終わらせたいな」
「終わるよ、きっと」
◇
翌日になり、俺達はいよいよ裏の世界に乗り込むため、次元竜のいる密林に移動した。移動させておいた魔具の飛行船もあり、スタッフも何人か来てくれている。
子竜と合流した時に、思わぬ来客があった。
「チーム・ユーラルのリゼ」
「チーム・ブレイブか」
俺達の前に、ランク1位の魔法少女チームである、チーム・ブレイブが現れたのだ。
「よくここが分かったね」
「魔法少女連盟も、巨人を倒した者達を調査していた。ここで怪しい動きがあったから」
チーム・ブレイブの魔法少女は、日本所属ではないにも関わらず流暢な日本語で喋る。俺やハヤテにも分かるようにということだろう。
「それで、何の用?」
「あなた達に、逮捕命令が出ている」
「闇の勢力だからか? 一応説明しておくと、俺達はネクロズガカを倒すためにここに来た」
俺もチーム・ブレイブに語りかける。
「……」
「それでも、妨害しますか?」
ハヤテが言葉を続けた。
「別にオレとしてはこいつらをぶちのめしてから進んだっていーんだぜ」
「ダリヴァーはこう言っているけど、あたしは戦うつもりはない。チーム・ブレイブはどうしたい? ネクロズガカを倒す可能性を潰しに来るの?」
「……」
チーム・ブレイブは何も言わなかった。魔法少女の活動としてなら、俺達のような闇の勢力を逮捕するのは間違っていない。
しかし、俺達の言葉にあまり驚いていないことを見ると、俺達がネクロズガカを倒そうとしていることは、言われなくても勘づいていたのかもしれない。
「勝てる自信が、あるの?」
「あたし達はそのためにここに来た」
「分かった……。リゼ達は見つからなかった。皆、それでいいね?」
魔法少女達は頷き合った。妖精だけが抵抗しているようだったが、魔法少女や導き手の男が説得している。
「ありがとう」
「それでも、全部終わったら、やっぱりあなた達は逮捕することになる」
「全部、承知の上だ」
俺とリゼとハヤテが頷き合う。ダリヴァーだけはそのつもりはないらしく、口笛を吹いていたが。
チーム・ブレイブが道を開けると、子竜が次元に穴を開けた。
まず飛行船が侵入し、俺達4人も入っていった。




