50 魔法少女vs結社
決戦の前夜。
私は桃華先輩と話していた。何を話していいか分からなかったから、他愛のない話をした。
チーム・グレイスも、導き手の将さんが人気らしい。私達と同じく、決着はついていないようだけれど。
「気持ち、伝えないんですか?」
「私達はいいの。皆とも話して、そう決めた。変な話かもしれないけどね」
「いいえ、気持ちは分かりますよ」
私達だって、もう先がないと知ったらそのままにしようとするだろう。そして、世界に身を捧げる。
「桜乃達も、今後は色んな場所にいって任務をこなすことになると思う。私の知っている限り、美味しいお店の情報とか残しておくから、参考にしてみてね」
「はい……」
口で教えてほしかった。そう思うといたたまれない。思わず涙がこぼれそうになる。
「もう、桜乃……」
桃華先輩が肩を抱いてくれる。私はそちらに体重を預けた。
「すみません、先輩の方が辛いはずなのに……」
「あはは、頼ってくれるのは嬉しいよ」
桃華先輩に肩を抱かれながら魔法少女連盟の施設を歩く。
今夜は、明日の決戦のために多くの魔法少女がこの施設に集まっている。私達と同じように、外に出て気持ちを落ち着けようとしている娘もチラホラいた。封印の真相を知っているのは少数だったけれど。
ふと、青を基調とした服を着た、見知った少女が空を眺めているのを見つけた。
「あっ、リゼ」
「ん? ああ、桜乃と桃華先輩」
リゼは身を翻し、私達の方に歩いてきた。
「夜風に当たってたんですか?」
「うん。リゼも?」
「そうなんですよ。なんか皆浮ついてて、告ってる現場とかもありましたよ」
「え、そうなんだ!」
リゼと桃華先輩が何でもない会話をする。こんな光景も今日が最後になってしまうのだろうか。どうしても、受け入れられない。
「リゼも色々とありがとうね」
「どうしたんです、急に? あたしは桜乃や皆と違って、そんなに魔法少女力はないから気にかけてもらうほどの奴じゃないですよ」
「多分、リゼの強みって、そこじゃないんだと思う」
桃華先輩のその感想には私も同意だ。リゼは今ある手段で現状を打破する力が凄い。
「私達チーム・ユーラルも助けられていますからね」
「どしたん桜乃? 急にそんな話、照れるじゃん!」
リゼはケラケラと笑う。
どうも、リゼは少しも明日を憂いていないようにも見えてしまう。今からでも桃華先輩達を何とかできる手を思いついてくれるんじゃないかと、そんな気持ちにもしてくれるのだ。
そんな私の顔を見て、リゼは私と桃華先輩の手を取った。
「きっと何とかなる」
「え?」
「リゼ?」
「だから、桃華先輩! それに桜乃も! あんまり頑張りすぎないように!」
リゼは不思議なことを言った。
そう言うと、リゼはとぼとぼと歩いてその場を後にした。
「何かをやってくれそうな気もするんだよね、リゼって」
「いつもそうですよ」
それでも、今回の件をどうにかできるかといったらそれは飛躍が過ぎている。桃華先輩もそれは分かっているだろう。けれど、何かを期待せずにはいられなかったのだと思う。
◇
「戦闘開始!」
全体への司令が伝わり、魔法少女による結社の船への攻撃が開始された。
チーム・グレイスは大事な役目があるため基本は待機で、私達チーム・ユーラルも最初は待機組だ。魔法少女連盟の魔具である大型飛行船の中にいた。
ネクロズガカに近づきすぎると魔法少女特攻の触手が伸びてくる可能性があるため、結社の船からは微妙に距離を取る必要があり、遠距離攻撃がメインとなった。空に魔法少女の魔法攻撃による様々な色が発生する。
「これで結社を倒せるのかな」
「分からない」
理人とユリールが呟いた。それは当然の疑問だと思う。近距離戦でも以前は大敗したのだ。チクチクと遠距離攻撃をしてもどれだけ効果があるのか。
「チーム・ユーラル、お願いします」
「分かりました」
職員から声がかかり、私が答えた。リゼと浅黄と紫帆と共に魔法少女に変身し、空に飛び出した。私は最初からアルティメットフォームだ。理人とユリールは導き手用の小型船に乗り、私達をサポートしてくれる。
空には、結社が準備した魔物もたくさん飛んでいた。しばらく強化魔物の姿を見なかったと思ったら、この戦いのために温存していたのだろう。
「邪魔よ!!」
私はピンク色の魔法ビームを展開し、魔物を撃ち落とす。多分、魔物には遅れを取らない。だから、No.持ちを倒すことに集中すべきなのだろうが、魔物が多すぎて結社の船に近づけなかった。
ふと、結社の船の甲板を見ると、一人の男が腕組みをして立っていた。
「No.1のブロードよ」
「あれが……!」
一緒に出撃した魔法少女が教えてくれた。ブロードは不敵な笑みを浮かべながら立ち尽くしている。魔物を突破してあの男を倒さなければ話にならない。
対抗できるのはランク1位と2位のチームぐらいだと魔法少女連盟も考えているため、ランク1位と2位は温存しているのだった。
「ユーラル・ハート! 近づきすぎよ!」
「えっ!?」
周囲から聞こえた声に我に返ると、ネクロズガカの周囲の次元の割れ目から黒い触手が漏れ出してこちらに近づいてきていたのに気づいた。
「や、やば!」
私は慌ててそこから距離を取る。すると、触手は後退して次元の割れ目の中に戻っていった。本当にひたすら魔法少女に反応するらしい。
私は出すぎていたと思い、チーム・ユーラルが固まっているところまで移動した。
「ハート、落ち着いて!」
「ご、ごめん……!」
ユーラル・ラベンダーの言葉に答える。
しかし、そのタイミングで理人から慌てた声が届いた。
「チーム・ユーラル! 緊急だ!」
「えっ、どうしたの!?」
「チーム・グレイスが襲撃された! 援護に行くぞ!」
「ええっ!?」
全員で顔を見合わせ、チーム・グレイスが乗り込んでいる魔法少女連盟の船に急いだ。
確かに、封印の生贄の魔法少女を倒すというのは理にかなった考えだ。だから防御策も講じていたのに、こんなにあっさりと突破されるなんて。
◇
私達が慌てて船に突入すると、職員達や援護の魔法少女だけでなく、チーム・グレイスも倒れてしまっていた。
「く、くそぉ……!!」
「生贄の訓練ばっかりやっているからよ。戦闘力という意味では、以前にダリヴァーと戦った時の方がマシだったわね」
膝をついているとはいえ、アルティメットフォームを維持しているグレイス・キルシェ先輩がいて、その前に結社No.3のガーベラがいた。
「ガーベラぁぁ!!」
私は思わず飛びかかった。
「おっと!」
ガーベラは右手のステッキに赤い光を込め、私のピンク色の魔法攻撃を防いだ。
「チーム・ユーラルか」
ガーベラはそう言うと、私達に向き直った。
私とユーラル・トパーズ、ラベンダーで近接戦を仕掛け、アクアが援護。いつも通りの私達のフォーメーションだ。
「ユーラル・ハートは物凄い強くなったわね。確かに将来性は認める。でも、まだグレイス・キルシェの方が強い!」
ガーベラはステッキを巧みに操り、赤い光で攻撃してくる。私は必死にそれらを防いだ。
強い……! ダメだ、こいつは許せないのに、絶対に倒したかったのに……。今の私では勝てない……。
真正面からまず私が倒され、トパーズとラベンダーもダウンし、アクアも吹っ飛ばされてしまった。




