閑話休題 かわいそうなコ
よろしくお願いします。
かわいそうな女の子がいた。
なぜだか知らないけど彼女にはよく虫がついていた。樹の下を通れば、樹にいる毛虫が必ず彼女に落ちる。よくアブに刺されたり、蜂につきまとわれたり、それでよく彼女は泣いていた。小学校の時は、毛虫がよく服についていて、「キモむし」なんて呼ばれていた。ぼくは彼女のことをずっと名前で呼んでいたし、周りの人にも自分の目が届く範囲では決して「キモむし」なんて言葉を口にさせなかった。毛虫が服に付くだけならまだ良かったのだが、不幸なことに毛虫のせいで肌が荒れ、かぶれにより彼女の顔に凹凸ができ歪な顔になってしまった。彼女の本来の顔はぼくの幼少時の記憶ではとても綺麗だったと思うのだが、小学校に通う間はそんな面影はなく、彼女も1日中、顔を伏せるような性格になっていた。
彼女が変わったのはぼくたちが中学生になってから。ある日を堺に荒れていた肌は透き通るようになり、顔は小顔になり、ぱっちり二重まぶたで目は大きく、鼻筋がはっきりとなった。彼女の小学校時代を知る誰もが信じられないような変身を遂げた。性格も明るく、顔を上げて自信がある美人な女の子になった。中学一年生の夏休みになる前日、放課後、ぼくは彼女に話しかけられた。正面から彼女に見られると少しどぎまぎして、ぼくは心拍数が上がるのがわかった。緊張して何を話ししたか今も記憶がない。ただ1つ覚えているのは、彼女の美貌の秘訣についてだった。彼女は嫌で嫌で仕方なかった虫を自ら捕まえ、すり潰し、それを塗り薬やスプレーとして全身に纏うようにしたという。そのおかげか虫が寄り付かなくなり、さらに美貌を手にしたという。毎日毎日、虫を潰して美貌を維持しているとのこと。
それに対して当時のぼくはどう思い、なんて言ったのか今も思い出せない。
次の日、彼女は亡くなった。
遊びに外へ出た時、カラスが猛スピードで彼女の後頭部へ激突した。彼女の後頭部に嘴が深く突き刺さったのだ。彼女にとっては希望に満ちた夏休みの初日だっただろうに。かわいそうでならない。
ありがとうございました。
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