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36話 カシキダリカとヤギどらごん

よろしくお願いします。


 退社時間は20時。

 当日中にまとめておきたい業務があり、その日私は残業をしていた。


人通りの多いところを通るのが夜道での自衛の1つ。家への帰り道はいつも通りの道を通り、疎らではあったが確かに人もいたので、危険な目に合うなど私は夢にも思わなかった。


駅を出て、住宅街へショートカットのできる車両通行止めの道を通る。歩行者は当然使用する道だが、流石に21時を過ぎる頃には通る人は私と私の前を歩く1人だけである。その人はビニール袋を両手に持つ初老であろう女性だった。


2人きりの状況になって2、3分ほどした時、前を歩く女性が急に私の方を振り向いた。その顔は笑っているのか、にやついた表情か暗くてわからなかったが私を値踏みをしているような目つきであった。両手のビニール袋を離して、それは地面に落ちる。パリンと少し小気味の良さを感じる音がした。ビニールの中身は2つとも、大量のガラス片であり、落下の衝撃とともにビニールが破れ夜道に四散する。異様な気配はすぐに察した。

女性は億劫そうに体を屈めて、道に広がるガラス片の中から包丁を取り出した。ビニール袋の中には包丁も入っていた模様。


私の頭はパニック状態。なぜこの女性はビニール袋にガラス片を持ち、それを道に撒くのか。その中の包丁を持ち、なぜ私へジリジリと距離を詰めるのか。私を見るその目は何を意味をしているのか。足が竦んで動けない。


命を脅かす危険な状況。何も悪いことはしてない。助けてほしい。そんな思考の刹那で私が思い出したのは、母のこと。母がくれた笛のこと。


私は上着の内ポケットに入れている笛を取り出し、すぐに吹いた。ビリビリと高音が夜道に響く。しかし、人通りの少ないこの時間に誰が気づき誰が助けてくれるのだろう。

包丁を持つ女性は少し驚く表情を見せるも、また私の方へ一歩一歩と近づいてくる。


もうだめだと頭に過った時、私は宙に浮いた。そして私は何かに引っ張られるように空中を猛スピードで移動させられる。私の頭は再び大混乱。体を外壁や標識などにぶつけないよう腕足を折り畳むのが精一杯。そうして10秒ほどだろうか、私は交番の前にいた。足は地面ついていた。


助かったんだと思う。

私はそのまま交番に駆け込み、すべて話した。



☆☆☆

ヤギどらごんの笛は現在開発中。呼べる成功割合は公表できないとのこと。





ありがとうございました。

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