35話 ワジマケントとヤギどらごん
よろしくお願いします。
夢を見た。
その夢の中では、僕は一面の菜の花畑に立っている。
体を撫でる気持ちいい涼風に雲一つない青空。日差しも温かであり、春の陽気なのだろうと思った。
微睡みつつあるところ、口の中に違和感がした。
口の中がゴロゴロする感覚。
違和感の正体を手に出して確認すると歯が一本抜け落ちていた。
痛みはなかったがショックは受けた。僕の歯は全て永久歯であり、差し歯を考えなければならないのは13歳の僕にとってどこか悲しいことであった。
どこの歯が落ちたか確認しようとしたところ、抜けた歯から突如白煙が発生。熱すぎる温度でも、冷たすぎる温度でもなかったのでその場でただ傍観することにした。
すっかり手が白煙に覆われたところで「ポンッ」と可愛らしい音とともに妖精が出てきた。
その妖精は僕の手から飛び降り、こちらを振り向くこともなく菜の花畑を進んでいく。
体長30センチも満たないでろうヤギどらごんはすぐに菜の花畑に飲まれ見えなくなった。
また口の中に違和感。
手に出すと抜け落ちている歯。抜けた歯から白煙が発生。白煙からヤギどらごんが現れどこかへ行く。
これを僕の歯がなくなるまで繰り返した。歯がすべてなくなって気がついた。僕の手は皺だらけになっており、それは13歳のものとは到底思えない。
空は快晴。体を撫でる風は依然涼しく、温かい日差しを体に浴びている。菜の花の黄色は僕の心を穏やかなままにする。
ヤギどらごんは皆、僕の手から飛び出て同じ方へ進んだ。
僕はヤギどらごんと反対方向へ歩くことにした。
そうして僕は夢から覚めたのだ。
ありがとうございました。