また狙われたヨ!
ラーヴァワームとマザータイラントアントを討伐した後、大量のアイテムを私のまじかる☆ボックスに仕舞い込む。私の収納力を知ったみんなから荷物持ちに任命されてしまったのだ。
激戦の後は疲労でヘトヘトだったが、みんなの表情はそれでも明るい。
理由は単純。ドロップアイテムが大量だからだ。
「俺たちがやっても、ここまでアイテムは手に入らないんだがな」
アントからドロップした素材を拾い上げていく中村さんがぼやく。
「魔石はモンスターから確実に手に入りますが、ここまで素材やスキルクリスタルが手に入るとボーナスステージみたいで楽しいですね」
中村さんのぼやきに、柳瀬さんが両手に魔石を抱えて満面の笑みで話しかける。
「魔法少女殿とパーティーを組むと、必ずと言ってもいいほど高価なアイテムが落ちる。何かしらのスキルを持っているのか?」
「そんなスキルを持っていたら稼ぎ放題ですよ」
「政府も黙ってないな」
中村さんと柳瀬さんの会話が私の【音探知】で聞こえてくる。アイテムのドロップ率が高いのは私の運が高いからだろう。ドロップ率が上がるスキルがあるなら真っ先に取得したいところだ。
ダンジョンゲート前に現れた宝箱は3つ。どれも木製の宝箱だが、開けてみないと中身は分からない。
周防院さんと奈々子ちゃんが宝箱に手を掛け、ゆっくりと重い蓋を開けると、錆びた蝶番がギギギと音を立てる。
中にはクラスチェンジオーブが3つ、スキルクリスタルも3つ、他にも装備品や薬品、金貨など大量に詰まっていた。
それを見た追加メンバー組は歓声を上げる。
本来宝箱には、アイテムがひとつか2つ入っていれば当たりであり、このように宝箱に隙間なく入っている事は、本来ならお目にかかる事はないのである。
「ひゃ〜今回も大当たりだぜ。日本に来て良かったな!」
「そうね。侍のクラスチェンジオーブも手に入ってからはマイクなんて敵無しだしね」
メアリーの発言にマイクは目を閉じ、何か別の事を考えているようだった。
「マイク?」
「……あの程度のモンスターを私ひとりで倒せないようでは駄目だ。まだ修練が足らん」
「ったく、マイクは真面目すぎるぜ」
「お前が不真面目なだけだ」
一瞬、私とマイクさんが目が合っけど、それもほんの一瞬で、マイクさん達は足元に落ちている魔石やアイテムを回収していく。
一通り回収し終えた私達は、渋谷ダンジョンセンターでアイテムの分配を行った。
アイテムの分配は、合同合宿1日の終わりの大イベントで、私も楽しみにしている。
アイテムの分配ルールは、基本Chrome Tempest、JDST、ATLANTIS、私と奈々子ちゃんの4等分だ。
欲しいアイテムがあれば買取値を査定し、買い取ってもらう事になっている。
その中で私が欲しいアイテムはスキルクリスタル〈熱耐性〉だった。これは5個ほど回収し、他のメンバー達も買取希望を出したので、私のチームはひとつ購入し、残りは他のチームが買い取っていった。
「それでは残りはオークションに賭けたり、JHAが買取で宜しかったでしょうか?」
みんなが頷く。
「明日の夕方には口座に振り込みますので、ご確認の程宜しお願いします」
「はーい」
奈々子ちゃんはこれからオークションの準備など忙しくなるので、挨拶もそこそこにダンジョンで得たアイテムをカートに乗せ、部屋から退出していった。
私も帰るかな。
面倒だけど、1度ダンジョンの中に入る必要がある。変身を解くためだけど、私が外に出る度に人が寄ってくるので面倒くさい。
会議室にいるみんなに別れの挨拶をすると、まじかる☆アタッチメント【精霊のポンチョ】を羽織る。身体が透明になり、誰にバレる事なく渋谷ダンジョンセンターから抜け出し、渋谷ダンジョンゲートの中に入る。
「ふぅ」
「ご苦労さん」
労いの言葉を掛けてくれたのはルル様だ。
「貯金が96億円越えたぞ。今回の売値次第では100億円突破するかも」
「それは良かった。60層クリアも目前、2つの魔法少女専用クエストをクリア出来れば、ほのりんの目標は達成だな」
「うん。ひとつは私を狙う悪党を倒したからクリア出来たしね」
「レイドをクリアすれば、さらなる高みを目指せる。とても楽しみだな」
そんなに強くなってどうするのよ……。と思ったけど、100層をクリアする為にはもっと強くなる必要があるし、100層の先に何があるのか非常に興味がある。
「ところで感情エネルギーがあまり貯まっておらんな。新たなナヴァラトナが生まれるには時間がかかりそうだな」
「最近、合同合宿でいっぱいいっぱいで、感情が揺さぶられる事がないのよね」
「映画を見ても駄目か?」
「私もそれを思って、ラブストーリーやアクション物とか色々見たけど全然駄目だった」
ふむ……と、ルル様は小首を傾げ、考える素振りを見せる。
「やはり羞恥エネルギーが1番効率が良いか……。最近は大衆の前に出る事が多くなったが、もっと露出を増やせぬか?」
「え? 露出? 肌を見せるの?」
「違う。普段から外で魔法少女として行動するのだ」
「えー。用事もないのに魔法少女で外に出るのはなぁ」
ただでさえ魔法少女の姿で外に出歩くのに抵抗があるのに、理由もなく歩き回るのは無理がある。
「用事があればいいのだな? よし。それではまた明日会おう! さらばだ!」
「あっ! ルル様!?」
ルル様はパッと光ってパッと消えてしまった。
最後に不吉な事を言っていたよう気がするけど……なんだか嫌な予感がする。
溜息を吐くと私は変身を解き、渋谷へ戻る事にした。
渋谷の喧騒の中を歩き、息抜きの為に代々木公園へと向うと、公園内にはカップルがやたらと多く、私には少々居心地が悪い場所だった。
日はすっかり落ち、あちこちで若者がお酒が入った缶を片手に楽しそうに談笑している。
ちなみに私はコンビニで買ったアイスコーヒーをちびちび飲んでいる。
たまにはのんびりするのも良いな〜、なんて考えていると、いつの間にか真夏の夜なのにフードを深く被り、黒いマスクをした女性が私の目の前に立っていた。
え? いつからそこにいた? 突然現れたように感じたけど……。
私の不安を余所に謎の女は口を開く。
「お前、魔法少女のポーターをしている十条穂華カ?」
突然、私の名前を聞かれたので驚いて固まっていると、何も言わない私に痺れを切らしたのか、懐からナイフを取り出す。
「ちょっ、ちょっと! な、何ですか! 止めて下さい!」
「静かにしないと殺すヨ?」
ん? この訛り……どこかで?
「帅 宁宁さん?」
「!?」
おもわず私の口から出た言葉に動揺する謎の人物。右手に持ったナイフがワナワナと揺れている。
「わ、私はそんな名前じゃないヨ……」
動揺を隠せない謎の人物の正体は帅 宁宁本人で間違いないだろう。しかし、何故このタイミングで私の前に現れたのだろうか? 私の事を魔法少女だと知らないで現れたと思うが……私を人質にして、魔法少女ほのりんを炙り出そうとしているのだろうか?
「ところで、私に何の用ですか? ダンジョンランキング2位の人に声を掛けられるほど、私は有名ではないですが」
彼女は私の命を狙っているはず。今の私は無防備でピンチだ。この場を何としても乗り切る必要がある。
「私はもう2位じゃないネ。魔法少女に奪われたヨ」
さり気なく帅 宁宁本人だって認めてるやん。まぁいいけど、それよりも重要な情報が! 私のランキングが2位に? 知らなかったよ。 もしかしたら今回のダンジョンアタックでそこそこに貢献したのかもしれない。
「……そうなんですか。魔法少女って凄いんですね」
「お前、魔法少女のポーターなんでショ? 死にたくなかったらアイツの居場所を教えロ!」
「知ってどうするんですか?」
「アイツのせいで本国に帰れなくなったネ! こうなったらアイツからナヴァラトナを奪うかクラスチェンジオーブ抜き取るしかないネ!!」
え? この人もナヴァラトナの存在を知っている? それよりもクラスチェンジオーブを抜き取る……? そんな事が可能なの?
私の思考が混乱していると、帅 宁宁の右手に持ったナイフが、私に向かって突き出される。
「っ!」
あまりの出来事に目を瞑るが、衝撃や痛みは襲って来ない。恐る恐る片目を開けるとそこには……。
「くっ! 離せ!」
「お前がやっている事はこの国では犯罪なのだが? それとも中国では合法なのか?」
帅 宁宁の背後に背の高いホワイトブロンドの超絶イケメンが立っていた。
その人はダンジョンランキング1位のマイクR.エバンスさんだった。
マイクさんは帅 宁宁の右手を背中まで捻り、地面に抑え着けた。
「マイクさん……」
「ホノカ、怪我はないか?」
「お陰様で助かりました」
助かったのは良かったが何故マイクさんがここにいるのだろうか? 彼が泊まっている帝都ホテルとは逆方向なのだが。
「たまたま散歩していたら久々に君を見かけてね。あの食事以来だ」
「あ〜、その節はご迷惑をお掛けしました」
私がメアリーさん達に食事に誘われて、緊張のあまり、胸からナヴァラトナの宝石を出してぶっ倒れた事件以来、十条穂華として合うのは2週以上ぶりだろうか? 思い返すとつい最近の事にも思える。
「それよりもコイツだな。シュアイが何故ホノカを狙う?」
「煩い! 早くどけ!」
帅 宁宁は激しく抵抗しようとするが、マイクさんに拘束されているせいで抜け出せない。クラス【アサシン】のスキルを使用されると厄介だけど、今のところその素振りは見せない。武器も地面に転がっているナイフだけのようだ。
代々木公園は夜でも人は多い。そんな公園内でトラブルが起きれば嫌でも目立つ。野次馬達が集まりだすと、マイクさんの事を知っている人が大勢おり、スマホを掲げて撮影を始める。
「ちっ。場所を変えるか。ホノカ。私のバックから腕輪型のアイテムがあるからそれを取り出してシュアイに嵌めてくれ」
「わかりました」
マイクさんの背負っている鞄を恐る恐る開けると、色んな物がごちゃごちゃと入っていた。その中から腕輪をみつけ、帅 宁宁の空いている左腕に嵌めると、マイクさんが溜息を吐きながら立ち上がる。
「拘束しなくても大丈夫なんですか?」
私の疑問は当然だろう。帅 宁宁はアサシンでレベルも高く、暴れられたひとたまりもない。そんな人を放置すると面倒だと思うのだが……。
「大丈夫だ。また暴れたらダンジョン法に則って処罰するだけだ」
マイクさんの言葉に納得する。ハンターが町中で暴れた場合、ハンターが私人逮捕を可能とする法律だ。これにより、拘束して逮捕も可能だが、もし相手が明確に殺意をもって襲ってきたら、殺してしまってもやむを得ない、っていう事も可能だ。
「それに、この腕輪はレベルを強制的に10にする腕輪だ。今のシュアイなら周りにいるハンターなら誰でも倒せる」
マイクさんの視線の先には何事かとやって来た警備で巡回しているハンターがいた。
マイクさんは彼らに適当に説明すると、場所を変える為に、不貞腐れた帅 宁宁と私を連れて、渋谷ダンジョンセンターに戻った。
読んでいただき、ありがとうございます。
ブックマークと広告下↓の【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて応援して下さると嬉しいです!宜しくお願いします。




