表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/140

対マザータイラントアント

 魔法少女ほのりん達がラーヴァワームと戦っているころ、Chrome TempestとATLANTIS達に押し寄せるモンスター、1匹2mサイズの蟻の大群と激戦を繰り広げていた。


 祭壇の前の卵の大半は孵化したが、横穴や縦穴から次々と蟻モンスターがやってくる。

 蟻モンスターの種類はアイアンアント、アイアンアントソルジャー、アイアンアントナイト、アシッドアント、フライングアント、そして、マザータイランアントが襲ってきている。


 普通のパーティーならその物量で押し潰されてしまうが、柳瀬やなせさんの【結界陣】の中までは入ってこれないようで、結界を顎で噛み付いたり、武器を持ったアイアンアントソルジャーやアイアンアントナイトが結界を激しく叩いている。


「結界も長くは続きません。速やかにモンスターの排除をお願いします!」


 柳瀬さんの額には汗が浮かんでおり、アントからの攻撃を受ける度に、結界が激しく点滅する。確かに長くは結界が持たないと判斷したマイクはケルビンを前面に出し、蟻の群れに飛び込む。


「活路を開いていくれ」

「任せな! 【セイントブラスト】!」


 ケルビンが剣を振るうと、3方向に輝く斬撃が地面を這うよう放たれた。アント達はその斬撃を受けるとボーリングのピンのように弾け飛んでいく。


「私達も行くわよ♡」

萬田まんだ、無茶しないでくれよ、ついていくだけで結構疲れるからさ」

「僕も行きます!!」


 【結界陣】から出た萬田は、女の子走りしながらアントの群れの中に飛び込むと、アント達が悲鳴を上げながら弾け飛んでいく。

 そして、萬田が倒し漏れたアントを園田そのだ末留すえとめが刈り取っていく。


 園田の槍捌きは的確に相手の急所を貫く。彼の実家は旧家の出らしく、子供の頃から槍を習っていたそうな。普段はダラダラとしているが、槍を持たせたら雰囲気が変わるので、スイッチのオンとオフを使い分けているのだろう。


 そんな園田とは対象的に、おっかなびっくりで戦うのは末留だ。

 本来ならこの合同合宿にすら参加できないレベルだが、園田の強い希望もあってか参加することになった。


「おら末留! 重心を真っ直ぐ、もう少し腰を落としてしっかり剣を振れ! こいつらの装甲は鉄並だから、そんなへっぴり腰じゃ倒せないぞ!」

「う、ういっす!」

「……ったく、お前を見ているとマジで弟を思い出すぜ」

「弟さんいるんですか?」

「お前と同じくらいの歳のな。今は実家で畑仕事をしている」

「へ〜」


(こいつが金を稼がせげるように育って好きな事やれるくらいになったら、さっさと引退させてやんねーとな)


 園田の弟もハンターをやりたいと言って聞かなかったが、可愛い弟をいつ死ぬかもしれないダンジョンに行かせる事に園田は大反対だった。

 1度ダンジョンに連れて行き、弟に怖い思いをさせて実家に返した事があった。それ以来、弟はダンジョンに行きたいとは言わなくなったが、弟からは嫌われた……というか絶縁されてしまった。

 大好きだった弟と会えなくなった園田は、最近ATLANTISに入ったポンコツな末留に弟を重ねていたのだ。

 この世界に入ってしまった以上、普通の会社員に戻るか、大怪我するか、それとも死ぬか、はたまた大金を稼いで引退するしか道はない。

 合同合宿に参加するれば強くなれるし、最悪、レイドには後衛を守る為に待機してもらってても構わないと思っていた。

 しかし園田の誤算は末留の根性だった。

 すぐ音を上げてリタイアするかと思いきや、パワーレベリングとはいえ、55層までついて来てしまったのだ。こうなってしまっては園田も末留が引退するまで責任を持って育てる事にしたのだ。


「おら! 次が来たぞ! 回復アイテムを惜しむな! ガンガンスキルを使え!」

「了解っす! 【ハイスラッシャー】!」


 末留のクラス【ハイランダー】は身の丈ほどもある大剣を自在に操り、攻撃こそ最大の防御という言葉がとても似合うクラスである。

 ATLANTISの在庫にあった大剣を借りて今回の合同合宿に参加し、低レベルだった末留も今ではレベルが50に差し掛かろうとしており、レイド・竜王討伐戦に参加出来る条件であるレベル70には、残り4週間の合同合宿で確実に届く計算である。


「ったくキリがねぇな」

「蟻の死骸で埋め尽くされることがなくて助かりますね」

「確かにそうだが……向こうはまた派手にやってんな」


 園田と末留が視線を送る先にはChrome Tempestの3人がマザータイラントアントに向かって猛進していた。

 マイクとケルビンが前進しながら進み、メアリーが援護射撃をしている。

 アント達の群れもマイク達に近づくと、急に動きが鈍くなり、その隙き確実に息の根を止めている。これはマイクのスキル【神域】の効果によって、範囲に入った味方のステータスを上げ、敵にはステータスダウンの効果と、怯ませる効果を与えている。マイクより格下のモンスターにしか効果はないが、ボスモンスター以外は効果抜群だった。


「ケルビン、どうだ?」

「スキルのチャージが貯まったぜ!」

「ケルビンやっちゃいな!」


 メアリーの掛け声に応えるように、ケルビンは白い剣を天に掲げる。


「おっしゃああ!! いくぜ! 【グランドクロス】うおらぁ!!」


 マザータイラントアントに向けて放たれた聖なる十字は、アイアンアント達を巻き込みながら真っ直ぐと進む。

 祭壇があるエリアは頑丈だと言われているが、ケルビンの【グランドクロス】は洞窟内を激しく破壊し、一部大きな岩が崩落し始めた。


「わりぃ。やり過ぎたわ」

「いや、良くやったぞ」


 少々やり過ぎたかなと焦ったケルビンだったが、マイクがそれでも褒めてくれたことに少し驚きながらも、マザータイラントアントを見た。


 マザータイラントアントを守るようにいたアント達はケルビンの一撃で大半を光の粒子に変える事に成功していたのだ。他のアント達も女王がピンチだと判断したのか、【結界陣】を張っていた柳瀬から離れ、マイク達に襲い掛かる。


「エバンス様〜♡ここからは私と愛の共同作業をしましょう♡」

「近寄るな化け物!」


 新たに現れた敵? に必死に距離を取ろうとするマイクに、萬田はパンパンになった大胸筋でマイク目掛けて飛び掛かる。


「フ◯ック!」


 萬田のジャンピングダイレクト抱擁をギリギリ回避すると、アント達を薙ぎ倒していく。


 いくらマイクといえど、萬田のあの抱擁を受けたらダメージは必至だろう。


 マイクの背中に嫌な汗が流れる。


 そんなマイク達を見たメアリーがケラケラと笑いながら話しかけてけてきた。


「意中の相手には反応されないのに、変わった相手には好かれるのね」

「……煩い。どうやらゲートのボスは倒されたようだ。こっちもさっさとボスを倒すぞ」


 メアリーは茶化すように話すが、マイクは顔色を変えずにメアリーの発言を流す。メアリーとケルビンはJDST達の方に視線を向けると、ラーヴァワームが断末魔を上げながら光の粒子に変わっていくのが見えた。

 

 マジカルガールが倒したのではなく、他のメンバーが倒したことに「へ〜、やるわね」とメアリーが感心するのもつかの間、マザータイラントアントが攻撃を仕掛けてきた。


 マザータイラントアントは動きは遅いが非常にタフで、アイアンアントより遥かに硬い装甲が幾つも折り重なっていた。

 現にマイクの通常攻撃では傷が付く程度で装甲を突破できなかった。


 メアリーは崩れた岩盤を見ると、派手な攻撃は生き埋めになる可能性があり、強力な魔法やスキルは使えないと判断した。そうなると単体攻撃が得意なマイクと萬田による近接攻撃によって、マザータイラントアントを撃破する必要がある。


 メアリーの考えている事はマイクも理解していた。自身ひとりでは確実に倒すには時間が掛かり過ぎる。背に腹は代えられない。不本意ながら、マイクはさっさとボスを倒す為に萬田に声を掛けた。


「おい、マンダといったか。手を貸せ」


 マイクに声を掛けられた萬田は目をパチパチさせ、満面の笑みで応える。


「手でもお尻でも何でも貸します♡」

「貴様……マジで殺すぞ」

「イヤン♡」


 マイクの白いおでこに青筋が浮かぶ。落ち着け落ち着けと、心の中で怒りを必死に抑え込む。

 マイクは平然を装いながら、萬田にマザータイラントアントを協力して倒す事を提案する事にした。


「あのデカイ蟻をさっさと倒したい。俺に合わせろ」

「任せてエバンス様♡」


 とは言いつつも、マイクは全く萬田を信用していなかった。むしろどさくさに紛れて後ろから抱き着かれる恐怖すら感じる。

 マイクは萬田を警戒しつつもマザータイラントアントに立ち向かう。


 先に動いたのは萬田だった。ケルビンの盾を踏み台に、高らかに飛ぶ。


「ほのりんに見習って……まじかる☆【ハイフライフロー】♡」


 豪快にマザータイラントアントにぶつかると、轟音と共に巨体が壁際まで吹き飛ぶ。


 まるで怪獣とヒーローが戦っているように見えるが、ヒーロー側は魔法少女風の衣装を着たガチムチの萬田だ。対するマザータイラントアントの大きさは3階建ての建物と同じ大きさだ。それを体当たりで吹き飛ばす威力は、もはや人の領域から逸脱してると言ってもいいだろう。


 呆気に取れた表情のケルビンとメアリーだったが、その横をマイクが駆け抜ける。


「ふう……【一之太刀・蒼炎】」


 刀を鞘から抜き、青白い炎が噴き出す。


 抜刀された刀は、マザータイラントアントの足を1本断ち切ると、傷口から青白い炎が燃え上がり、肉の焼ける音が聞こえる。


「ギギギギギ!!!」


 耳をつんざくよくな鳴き声が、祭壇の間をこだまする。


「チェースト!」


 頭上から萬田の声が聞こえ、その声に反応するかのようにマザータイラントアントが振り向くと、萬田の強烈なジャンピングスタンプが炸裂する。


 クリーンヒットした衝撃は凄まじく、堪らずマザータイラントアントの巨体は地面に体めり込む。


「ふん。思いの外やるな」

「エバンス様♡止めよろしくね♡」

「喋るな。【二之太刀・寒牡丹】……フッ!」


 下段から刀を切り上げると、白い太刀筋が残る。冷たく儚く、それでも力強く凍てつく斬撃は、マザータイラントアントの首筋的確に捉える。


 マザータイラントアントの首が氷漬けになり、パリパリッと氷が砕ける音が聞こえてくる。


 マイクが刀を一振りし、刀を納刀するとチンッと金属の音が鳴る。そしてその音と同時にマザータイラントアントの首は砕け散り、巨体が光の粒子へと変わっていく。


 激しい戦いの後に残されたのは、大量の魔石や素材、そしてスキルクリスタルやボス討伐報酬の宝箱だった。



読んでいただき、ありがとうございます。

ブックマークと広告下↓の【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて応援して下さると嬉しいです!宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ