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ソードダンサー、参る。

「らんらんらぶはーと♡まじかる☆ドレスアップ!!」


 キラキラした虹色の粒子が暗闇を照らし出し、私の周りが星とハートで埋め尽くされていく。そして、POPな効果音と共に身体にジャストフィットする可愛らしいデザインの魔法少女風衣装が次々と装着されていく。


「まじかる☆が〜る♡ ストロベリーほのりん☆彡」


「わあ〜、ほのりんだあ!」


 変身して姿を現すと、まひるちゃんが目をキラキラさせている。やむを得ず変身してしまったが、この状況では仕方が無い。 


「まひるちゃん、これから悪い人をやっつけるから、ルル様と一緒にいてね」

「うん、わかった!」


 いつの間にかルルデミアは普段のルル様の姿になると、まひるちゃんに抱きかかえられる。少し大きなぬいぐるみだと思えば、誰かに見られてもバレないだろう。


「まずわっと……」


 私はまじかる☆ボックスから使えそうな装備品を取り出す。売却用の短剣や防具にアクセサリー各種だ。


「さあ、奈々子ちゃん。好きなの選んで」

「良いんですか?」

「元々売る予定だし、緊急事態だから出し惜しみ無しだよ」

「わかりました。ありがとうございます」


 奈々子ちゃんはすぐさま着れそうな防具を装備し始める。選んでいる物はどれも動き易く軽い物で、普段ナイフを身に付ける為のナイフホルダーが無いが文句は言えないだろう。


「準備完了です」


 薄っすらと蒼白く光る短刀と陽炎のように刀身が揺らめく短刀を構え、奈々子ちゃんの空気が変わる。既に臨戦態勢だ。


「相手は3人だよね?」

「そうです、元渋谷ナンバーズのトップ不二木荒斗ふじきあらと、ナンバー2の遊間波留あすまはる、そして私達を影に引き込んだナンバー3の男、影山翔馬かげやましょうまです」


 元渋谷ナンバーズのトップ3人組の……。かなりの強敵だ。対人戦が苦手な私がください勝てるだろうか?


「須藤よ、奴らの詳しい情報を共有してくれ」


 私の不安を察したのか、ルル様が3人について聞いてくれた。

 奈々子ちゃんは頷き、襲って来た3人の事を詳しく説明しだした。


「私が知っている範囲では、不二木荒斗は【モンク】で近接戦闘が得意なアタッカーです。高い攻撃力と体力で他を圧倒します。遊間波留は【双剣士】で私と似た戦闘タイプです。影山は、先程ルル様が仰ったように【影法師】ですね、この人はあまり表に出て来ない人なので情報が少ないです。ごめんなさい」

「ありがとう大丈夫だよ奈々子ちゃん。とりあえず、厄介な影山をなんとかしないと厳しいね」

「そうですね。開幕戦闘不能にさせて、不二木と遊間を個々撃破が理想ですね」


 相手は元渋谷ナンバーズと呼ばれたクランだ。私が調べた情報によると、いくつもの会社も経営している謎のクランだった。

 トップの人達は武闘派でハンター界隈ではいろんな意味で有名だった。それは主に暴力性だ。

 ダンジョンの中だと中々法律が届き難く、それをよい事にハンターに対してPVPと称てして暴力を振るっていたらしい。ネット上では様々な被害の報告が上がっていたが、ダンジョンの中だと証拠を掴みにくく、今ままで彼らは捕まることはなかったのだ。

 そんな彼はらは十中八九私を狙いに来ていた。彼らの目的は兎も角、まひるちゃんや奈々子ちゃんを巻き込んだ事は許せない。


 必ず一発キツイやつをお見舞いしてやるんだから!


「ほのりんよ、待つのだ」

「え?」


 早速、まじかる☆グリッターネイルを発動させようとした矢先、ルル様が突然止めに入る。その理由は直ぐに分かった。

 影の一部から光が差し込んで来たのだ。

 その光はやがて大きくなり、辺りの暗闇が晴れていった。



 スキル【影牢】の効果が切れると、私達は先程まで水族館にいたのに、高い天井にポツポツと照明が点在し、巨大な柱がいくつも建っている巨大な空間にいた。


「ここなら邪魔が入らねぇぜ」


 声がした方向に振り向くと、先程襲って来た3人がいた。

 

「……不二木。貴方に聞きたいことがあるわ」

「なんだよ」

「貴方、神峰奏司とどんな関係なの?」


 奈々子ちゃんが怒気を強めた声で言うと、フッと不二木は鼻で笑う。


「さぁな。俺様は仕事をこなすだけさ。大人しく魔法少女ほのりんを渡せ」

「丁重にお断りします」


 交渉は決裂したようだ。


 私がオタマトーン呼び出すと、左手にオタマトーンが現れしっかりと握る。私も準備完了だ。

 3対2だけど負けるつもりはない。一気に片付けてやる。


 私が影山を殴り飛ばしに行こうとした時、身体がピタリと止まる。これは動きを封じるスキル【影縛り】か? 動きが止まった瞬間、腹部に重い一撃を受けた。


「ぐっ……」


私の身体は数メートル吹き飛ばされ、コンクリートの地面に叩きつけられる。


『まじかる☆ドレス の耐久値が99%になりました』


 私を殴ったのは不二木だった。


 くそ……身体が言う事を聞かない……。ダメージは大した事ないけど、何度も受けられる訳ではないし、早く影山をなんとしないとジリ貧だぞ。


 影山のスキルで動きを止めたところに不二木が一方的に攻撃を加える作戦なのかもしれない。非常に不利な戦いだ。


 ▽


 横目で魔法少女ほのりんが不二木と影山を相手に戦っているの確認すると、須藤は遊間波留に仕掛ける為に動いた。

 遊間は須藤と似たようなクラス【双剣士】だ。双剣士は名前の通り、2本の剣を巧みに操りスピードと強力なスキルを放てるクラスである。

 それに対し、須藤のクラスは【ソードダンサー】だ。双剣士と違い、武器は短剣やナイフなどの軽い武器しか使えず、防具も軽装な物しか装備できないが、速さを活かした攻撃なら双剣士よりも上だ。

 しかし、この戦いの中で圧倒的に不利なのが須藤だ。

 須藤のレベルは28に対して、遊間は39なのだ。一般的にレベルが10離れると、越えられない壁ほどの力の差になってしまう。



 2人は真正面からぶつかり合い、須藤はレベルの差を埋めるように、手数を増やし舞うような斬撃を繰り出す。相手の剣に短剣を当てると金属が削られるような、嫌な音が聞こえた。

 

「……魔剣か? 手ぶらだったのにその装備はどこから出した?」

「貴方達こそ随分と用意周到ですね。こんな場所に私達を連れてくるなんて」


 天井が高く太い柱が何本もある空間。

 須藤は今いる場所の大凡の検討はついており、この場所は池袋の地下空間のひとつである。

 本来の目的は大雨などの洪水対策の施設で、地下に雨水を一時的に保管する為の場所だ。

 そんな地下空間に連れて来た理由はいくつか考えられるが、人目がつかず戦えることだろう。

 渋谷ダンジョンまで私達を連れて行く時間は無いと判断した彼らは【影牢】の効果時間を考え、1番近いこの施設に来たと思われる。


 須藤は考えた。

 遊間を倒すには荷が重い、しかし、私が倒さなければ背後にいる、まひるちゃんやルル様に危害が加えられる可能性がった。


(……リスクはありますが……、アレを使うしかないようですね)


 須藤には切り札がある。

 クラス【ソードダンサー】にはソードダンサー専用EXスキル【演武・天馬麟翼】(てんまりよく)がある。

 遊間の意表を突き、このスキルを発動出来れば勝てる可能性があった。


(まず相手のペースに飲まれないように付いていかないと)


 1度を剣を交えて一瞬で相手の力量が分かった須藤は、全ステータスの中で速さ以外は負けているのが分かった。


 自分の持ち味を活かし、手数を増やして攻撃するがレベルの差は埋める事はできず、須藤の身体には細かい切り傷が増えていた。

 遊間の攻撃速度は須藤ほどではないが、2本の剣を使った攻撃は手数も多く、一撃一撃が重い。


 次第に須藤の手が痺れてくると、短剣を握る為の握力が無くなってくる。


「どうした? スピードが落ちてきてるぞ?」

「シッ!」


 須藤の鋭い刺突が遊間の頬をえぐると鮮血が舞う。


「口を動かすより、手を動かした方がいいですよ」

「……」


 遊間から余裕な表情は消え、殺意に満ちた目で須藤を射殺すように睨む。

 そんな殺意を受けても須藤はどこ吹く風かと冷静に遊間の攻撃を回避しながらチャンスを覗う。


 簡単な挑発に冷静さが無くなったのか、遊間の動きが大振りになり単調になっていく。


「てめぇ、死ねよ!【クロススラッシュ】!」


 十字に構え、剣を振るうと十字の斬撃が須藤に向かって飛んできた。

 素早く身を翻し遊間のスキルを回避し、ほのりんから借りた短剣に魔力を流し込むと、身体からズルりと何かが抜ける感覚が襲う。

 魔法職の人は普段のから体内の魔力を消費して魔法を行使するが、魔法とは無縁の須藤は、魔力が抜ける感覚がムズムズして慣れないでいた。


「喰らえ!」


 右手に握っていた陽炎のように刀身の周りが揺らめく短剣を突きだす。

 遊間は攻撃を見極め、回避しようとするが……。


「ぐはっ!」


 余裕を持って回避した攻撃が、遊間の左肩に突き刺さる。

 まるで刀身が伸びたか、あるいは刀身が飛んで来たか、揺らめく刀身の力によるものだと判断した遊間は一旦距離を置いた。


「あの女のレベルは低いと聞いていたのに何故だ? とっくに殺してるハズなのにな」

「……」


 レベル差はあるが、それを限りなく縮めている物があった。

 それは、ほのりんがまじかる☆ボックスから取り出した装備品だった。

 それらの装備品は渋谷ダンジョンの30層から集めていた物で、ほのりんの運も関係してか、性能が高く特殊効果も付与された装備品だった。

 他にも、その階層を探索しているハンターの数が少なく、オークションに出ても高値で売買されるので、一般のハンターが手にするこが難しい。

 ダンジョンランカーである遊間達は、渋谷ナンバーズがバラバラになってからは懐事情は非常に厳しく、ろくな装備を身に着けていなかったのだ。

 他にも理由があるが結果、レベル差があるものの、須藤は互角で戦えていたのだった。


「ちっ、アレを使ってみるか」


 遊間は右腕にはめられたブレスレットの力を開放させる。

 須藤はそのブレスレットに注視するとどこかで見た記憶がある。


(あれは? 神峰が私に渡そうとした物に似ているわね。たしかブースター系のアクセサリーだったわね)


 神峰に誘われて行ったバーで渡してきたブレスレット。

 須藤はあの時の断ったが、あのブレスレットを量産しているのだろう。


(不二木達といい、ブレスレットといい、バックには神峰がいるのは確かね)


 遊間の身体の周りが一瞬輝く。

 ブースター系の効果だろう。


 遊間が一気に加速して須藤を肉薄にしようとするが、遊間の攻撃を須藤は短刀2本で受けると、歯を食いしばり持ち堪える。


「なに!? 強化したのに止められた?」

「……かたをつけましょうか」


 須藤の視界にはポップアップしたウインドが開いていた。

 そこにはスキルの発動準備が整ったことを知らせる内容だった。


「はあああ! 舞え【演武・天馬麟翼】せいやああああああ!」


 須藤は薄い金色のオーラを纏うと、目にも留まらぬ速さで加速した。

 光の粒子が残像に見え須藤がそこにいたように見えるが、認知したところで既にそこに須藤が存在する訳でなく、遊間が剣を降っても空振りになるだけで、かすりもしなかった。


「どこに攻撃してるのですか? 私はここですよ?」

「ぐああっ!」


 左肩に突き刺した傷口に、執拗に何度も斬撃を加え傷口が酷い状況になっていく。

 遊間もその激痛に耐えられなくなったのか、両手の剣を落とし、悲鳴を上げながら必死に逃げる。


「貴方には聞きたい事があります。逃げないで下さい」


 遊間が巨大な柱の影に隠れようとした瞬間、目の前に須藤が立っており、須藤が持つ短刀の柄で殴り飛ばされると、鼻血を撒き散らしながら崩れ落ちた。

読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白く一気に読ませてもらいました これからも更新頑張ってください おう
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