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激おこ奈々子ちゃん

 結局、英国紳士はバイトが終わるまで居座った。しかも無銭飲食だった。

 これでも相棒なので仕方なく私が払う羽目になった。


 バイトが終わると奈々子ちゃんと約束があるので渋谷ダンジョンセンターへと向かう。

 ルル様はお金を所持していなので私が払った。彼にも電子マネーカードを持たせた方がいいかもしれない。



 渋谷ダンジョンセンターの裏口に到着すると、ふと思った事があった。ルル様は裏口から入れないのではと。そもそもダンジョンライセンスカードすら持ってないかもしれない。


 奈々子ちゃんに聞いてみるか。


 スマホを操作し電話を掛けると直ぐに奈々子ちゃんに繋がった。


「あ、奈々子ちゃん? 今ダンジョンセンターの裏口にいるんだけど、ひとり一緒に連れて行ってもいい?」

《ダンジョンライセンスカードはお持ちですか?》

「ルルデミアはダンジョンライセンスカード持ってる?」

「我のダンジョンライセンスカードか? あるぞ?」


 ルル様はスーツの内ポケットから黒いカードを取り出す。正真正銘のダンジョンライセンスカードだった。いつの間に作ったのだろうか? 謎である。


《今そちらに行きますのでお待ち下さい》

「はーい」


 通話を切ると直ぐに奈々子ちゃんがやって来た。


「おや? この方は?」

「久し振りだな須藤。若返りの実で随分と若返ったようだな」

「え? もしかしてルル様ですか?」

「左様」

「……まあルル様だからこんな事もありますか」

「奈々子ちゃん切り替え早いね!」

「ここではなんです、個室に移りましょう」


 奈々子ちゃんの後に続き、渋谷ダンジョンセンターの裏口から専用の個室へと入った。


「さて、ルル様もそうですが穂香ちゃん。私に隠している事ありますよね? 知っている事洗いざらい吐いて下さい」

「えええ!? 突然何ですか?」

「何でじゃないです。Chrome Tempestの件もそうですが、昨日のJDSTの件もあって今凄い忙しいんです! 何故JDSTに私と魔法少女が繋がってると教えてしまったのですか! あれから日本政府の怖い人が来たんですよ。守秘義務で穂香ちゃんが魔法少女とはバラしてませんが、穂香ちゃんが魔法少女のポーターだと認定する事になりました……」


 昨夜忙しそうにしていたのは日本政府の人がと会っていたのか……きっとダンジョン庁の人かもしれない。


「あれはルル様が私との連絡先を奈々子ちゃんに指定してしまったんですよ」

「フハハハ! 何、レイドダンジョンをクリアする為には実力者を集めなくてはならん。JDSTも中々の粒揃いだったぞ?」

「ルル様? いい加減にして下さい。遊びじゃないんですよ? 穂香ちゃんが魔法少女だとバレたら行動に制限がかかる可能性があるんです。下手したらダンジョンアタックなんてする暇すらないですよ?」

「それは困るな」

「そう思うなら以後、勝手な行動は禁止ですからね!」

「あい分かった」


 こりゃ反省してないな。

 ルル様は目的の為ならこれくらいの犠牲は払う人だ。私は諦めている。


「そしてエバンスさん達も魔法少女に協力したいと申し出がありました。これについては後日会って話し合いをする事になりましたので宜しくお願いします」

「え? 確定なの?」

「ええ私も庇えきれなくなってきた、と思って下さい」


 ひえ〜。もうダメなやつじゃん。

 私の正体がバレたらロハスな生活が送れなくなる……海外隠居生活が……。

 恥ずかしくて外も出歩けなくなり、このままでは死んでしまうよ。


「魔法少女としてこちら側に出る事が多くなると思いますがご了承願います」

「うわ〜ん、恥ずかしくて無理だよ〜」

「本当に嫌なら私もJHA辞めますのでどこかに逃げましょうか」


 う……奈々子ちゃんの覚悟は以前聞いている。彼女は本気だ。今まで私を庇って隠し通してくれているのに、ルル様のご乱心でめちゃくちゃになってしまった。

 彼女の決意を無碍に扱っては駄目だ。


 ここは少し我慢して奈々子の指示に従った方が良いかもしれない。


「……奈々子ちゃんの指示に従います」

「宜しい。ルル様も宜しいですね?」

「須藤よ、しっかり働くのだぞ!」


 奈々子ちゃんの額に青筋が浮かんでる。


 ルル様、奈々子ちゃん怒ってるよ。もう少し言葉を選んで喋っておくれ……。



「最後にナヴァトラナについて教えて下さい」

「え? それをどこで……?」

「やはりナヴァトラナを知っていましたか。日本帝都ホテルで穂香ちゃんの胸から出たと言われた宝石がナヴァトラナで間違いないですね?」

「……そうだよ。あれはナヴァトラナと呼ばれる宝石のひとつだね」

「ひとつ? 他にもあるのですか?」


 ある。全部で9つとルル様から聞いている。


「我から説明しよう」


 ルル様が椅子に座ると真剣な表情になった。


「ナヴァトラナとは魔法少女が生み出す感情エネルギーの結晶体だ。このエネルギーはダンジョンから生み出されるエネルギーに似た物で、9つの宝石が集まると真の力を発揮する」

「9つもあるのですか……真の力とは?」

「ナヴァトラナは“鍵”である。その鍵を使うとダンジョンの奥にあるユグドラシルへの扉を開く事ができる」


 ユグドラシルへの扉……ユグドラシルと云うと、北欧神話に登場する1本の架空の木だった筈だ。世界を体現する巨大な木で、九つの世界を内包する存在とされる。まさかそんな物がダンジョン奥底にあるなんて……。


「ルル様、私がそのユグドラシルの扉を開いたら何が起きるの?」

「そうだな。ほのりんにはひとつどんな願いでも叶えてやろう」

「どんな願いでも?」

「そうだ。どんな願いでも叶えられる。考えておくように」


 そんな事言われても思いつかないよ。そもそも私の願いってロハスな生活を送る事だし……。身バレしなければ可能だしね。


「しかし須藤は何故ナヴァトラナの存在を知った?」

「私の知り合いから聞きました。その人も魔法少女のナヴァトラナを狙っていたので気になりました」

「ふむふむ。なるほどな」


 ルル様は顎に触れると何かを考えている素振りを見せる。


「……聞きたい事は聞けました。取り敢えず、ダンジョンで得たアイテムを受け取りますので出して下さい」

「はーい」


 ナヴァトラナの秘密も少し分かった。9つの宝石を集めてダンジョン奥底へと向かう。これが私の新たな目標になりそうだ。


 私はリュクサックから素材を取り出し、アイテムボックスからも売却用のアイテムを取り出す。


「相変わらず大量ですね。見た事の無い素材もありますし」

「まだいっぱいあるけど魔法少女に変身しないと全ては取り出せないのよね」

「いっそここで変身してしまえば良いではないか」

「それはとょっと……」


 いくらセキュリティがしっかりしている個室だからといって、ここで魔法少女に変身する気はない。変身する時は緊急事態の時だけだ。


 31層から38層まで手に入れたスキルクリスタルとクラスチェンジオーブを並べる。今回は大量だ


スキルクリスタル〈暗視〉

スキルクリスタル〈擬態〉

スキルクリスタル〈熱探知〉

スキルクリスタル〈初級鍛冶〉

スキルクリスタル〈初級錬金術〉

スキルクリスタル〈光合成〉

スキルクリスタル〈治療促進〉

スキルクリスタル〈風読み〉

スキルクリスタル〈音探知〉

スキルクリスタル〈罠探知〉

スキルクリスタル〈初級投擲〉

クラスチェンジオーブ〈魔法剣士〉

クラスチェンジオーブ〈騎士〉

クラスチェンジオーブ〈戦士〉×2

クラスチェンジオーブ〈シーフ〉

クラスチェンジオーブ〈レンジャー〉

クラスチェンジオーブ〈錬金術師〉

クラスチェンジオーブ〈僧侶〉

クラスチェンジオーブ〈魔法使い〉

クラスチェンジオーブ〈影法師〉

クラスチェンジオーブ〈結界師〉

クラスチェンジオーブ〈白魔道士〉

クラスチェンジオーブ〈黒魔道士〉

クラスチェンジオーブ〈エンハンサー〉

クラスチェンジオーブ〈鑑定士〉


 私が出したスキルクリスタルとクラスチェンジオーブを見て、奈々子ちゃんの息を飲む音が聞こえた。乱雑に置いた私もあれだが、私には必要の無い物だ。


「須藤よ、我の鑑定結果を教えてやろう」

「……お手柔らかにお願いします……」


 新クラスも合ったらしく説明に小1時間掛かったのは言うまでもなかった。



100億円はすぐに貯まりそうですね。

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