表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/140

周防院さん死なないで

 ゆっくりと近づいて来るサーベルタイガーは、37層で出て来たボスよりも大きく、牙の長さも私の身長程の長さがあった。

 それに比例して、口を開けば人間を頭から飲み込む事も可能な大きさをしている。

 見た目も黄色い虎柄模様から赤と緑の虎柄模様に変わっており毒々しく姿から、明らかに上位種か変異種のサーベルタイガーだと覗える。


「ルル様、あのボスサーベルタイガーについて教えて」

「よかろう。あれはサーベルタイガーの上位種、ヘルソードタイガー、他のサーベルタイガーとは比べ物にならないくらい強い。牙や前足による攻撃の他に注意しないといけないのが、やつは姿を消す能力がある」


 もともと足音がしないモンスターなのに、姿を消されると厄介なモンスターだ。不意打ちを受けたら、ひとたまりもないだろう。


 次々と現れるサーベルタイガーを倒しても数が減るどころか、逆に増えている気がする。これはいったい……?


「血の臭いを嗅ぎつけ、モンスター達が集まっている。あれを見ろ、フレイムウルフの群れも来たぞ」


 夜の草原にポツポツと灯りが揺らめいていると思ったら、どうやらあれはフレイムウルフと呼ばれるモンスターらしい。

 たてがみが赤く燃えており、その灯りが草原を照らしているのだ。数は20匹以上か? まだ増えているかもしれない。


 この状況を見て中村さんが難しい表情を浮かべる。


「これは撤退も含めて行動した方がよいかもしれない」


 幸いダンジョンゲート前で戦っているので撤退しようと思えば可能である。

 しかし私には撤退をするつもりは全くない。

 最悪、殿を務めた後は私ひとりでこの大群を相手にするつもりだ。


「撤退してもいいですよ?」

「魔法少女殿はどうするつもりだ?」

「勿論戦いますよ。美味しい相手ですし逃るなんて勿体ない」

「……我々もギリギリまでやるが、危険と判断したら撤退をするが良いか?」

「ええ、私も危険と判断したら地上に戻ります」


 本当にヤバかったら地上に戻るけど、殲滅する勢いで倒すつもり。

 うふふ。久々のボーナスステージでワクワクが止まらない!


 JDST達は暗視ゴーグルを外すと発煙筒やフレア炊き、辺りを照らし始める。

 草原にポツポツとモンスターの姿が映し出されると、その数に息を飲む。


「フハハハ! 楽しくなってきたな!」

「いやいやルル様、これは非常に危険ですな。いくら魔法少女殿でも流石にこの数は……」

「まぁ、お主達はダンジョンゲートを死守しつつ戦うのだ。我らが数を減らせばお主達の負担も減るだろう」


 何やらルル様と中村さんが楽しそうに話しているが、そんな呑気な空気ではない。流石の私もこの数には少しビビっている。

 女郎蜘蛛巣でこのくらいの蜘蛛達に襲われたが、サーベルタイガー相手だと話が変わってくる。

 そもそもモンスターの強さが全然違うので、舐めてかかると一瞬で捕食されてしまう恐れがある。想像しただけでも嫌な汗が垂れてくる。


 中村さん達が円陣を組むような陣形を取る。

 恐らくダンジョンゲートを中心に防御に徹するのかもしれない。


 中村さんともうひとりのタンク役の隊員が挑発を行い、モンスター達の気を引きつけ始めた。

 モンスターの動きが変わった事を確認すると、私は1匹づつ確実に倒していく。

 JDST達もこういった戦闘は慣れているらしく、しっかり守り、確実にモンスター達にダメージを与え倒していく。

 特にアタッカー達の練度は高く、火力が低い味方がいても他の仲間達がカバーして追撃を加えているので仕留めそこねる事もなかった。


 さて、私もこの群れを率いているヘルソードタイガーを倒しに行きましょうかね……ってあれ? あのモンスターどこにいった?


 200m先にいた赤緑の虎柄モンスターが消えていた。

 どこに行ったか辺りを見渡すが影すら見当たらない。

 身を潜めていそうな場所に向かおうとすると、突然、私の左側面から太い猫の手が迫ってくるのが見えた。


「なっ!?」

「ほのりん!?」


 直撃。


 暗闇からモンスターの前足だけがもの凄い勢いで襲ってきた。

 私はガードも間に合わず、強烈な一撃を受けて吹き飛ばされる。


『まじかる☆ドレスの耐久度が65%になりました。非ダメージ軽減率が減少しました』


 痛っ〜〜。


 肩と脇、スカートの一部が爪で裂け、皮膚に薄っすらと切り傷が出来た。


 ここまでダメージを受けたのは久し振りだよ。あの強力な一撃を再度受けたらヤバい、回避に専念しないと。


 ヘルソードタイガーは私を攻撃した後、瞬時に姿を消したのか姿は見えない。

 その代わり、サーベルタイガーやフレイムウルフが四方八方から襲い掛かってくる。


 私をなぶり殺しにでもする気かな?


「邪魔よ! どいて!」


 右手でまじかる☆シールドを展開し攻撃を防ぎ、左手のオタマトーンをフレイムウルフの頭部に叩きつける。


 オタマトーンから変な音が鳴るがお構いなしだ。


「ほのりん避けるのだ!」


 ルル様の言葉に反応するかのように、私は【加速】を使いモンスターの包囲網を抜けると、私が先程居た場所にヘルソードタイガーの前足が振り下ろされ、近くにいたサーベルタイガーとフレイムウルフがバラバリに引き千切られていた。


「はぁぁっ! まじかる☆スターライト!」


 まじかる☆スターライトはヘルソードタイガーに当たることなく素通りし、他のモンスターに命中した。

 姿を隠す上にかなり素早い反応。目視できないので確実にダメージを与えるのが非常に難しい。


 くっ、どうやって当てれば……っと危ない!


 息つく暇もなく、追討ちを仕掛けてくるヘルソードタイガー。

 必死に動き周り攻撃を避けていくが、他のモンスター達が邪魔過ぎて、退路が絶たれていく。


「このままじゃマズイっ!」

「グルウアアア!」


 鋭い牙が四方から私を噛み殺そうと向かってくる。

 私は思わず【跳躍】を使用し、垂直方向に飛び上がる。

 しかし、50mは飛んだのに私の周りに黄色い影が必要に追いかけて来る。


 何このサーベルタイガー? 能力高過ぎでしょ……私の【跳躍】より上を飛び上がって来たよ。

 

 サーベルタイガー達は鋭い牙を立てながら私に向かって来る。

 でも大丈夫。私の【浮遊】は【飛行】に強化されてるんだよね!


 それゆけ銀河の彼方へー!


 サーベルタイガーの攻撃を交わし、サーベルタイガーに対してまじかる☆スターライトを放つ。

 落下していくサーベルタイガーは良い的だ。

 次々と星になって消えていくモンスター達の中に、一瞬風景が揺らぐ瞬間が見えた。

 あれは……ヘルソードタイガーだ! 私の飛行ルートにタイミングを合わせ飛んでくるのが分かる。


「グルルル!!」


 私を両前足で掴もうと飛び掛かってきたヘルソードタイガーを【加速】で回避し、ヘルソードタイガーの鼻っ面を、【剛力】で強化した拳で思いっきり殴りつけた。

 

「ミャッ!!」


 可愛い鳴き声が聞こえたが、あの一撃では倒せなかった。流石上位種、強い!


「なら、こいつで止めよ!」


 まじかる☆スキルブックから、まじかる☆アタッチメント【アメイジングコスモ】を取り出す。


「まじかる☆アタッチメント!【アメイジングコスモ】オン!」


 虹色に光る宝石をオタマトーンの口の中に入れると、オタマトーンが輝きだす。


『オタマトーンが形態変化します』


 オタマトーンの形状が変わり、星を散りばめたような美しい弓が現れる。

 弦を引くと光輝く矢が現れ、鏃に虹色の光が収束する。


「コズミックブレイク! 貫け! アストラルシューティング……スターーーッ!」


 一筋の光の矢が光速の光となってヘルソードタイガーを貫く。


「ギャウウウウ……」


 ヘルソードタイガーが星とハートに変わり、月の出ていない暗闇の草原を明るく照らし出す。


「ふう……疲れた」

「相手にとって有利な環境だと、ここまで敵が強くなるのだな」

「そうだね。気を抜いたら八つ裂きにされていたよ」


 モンスター達は闇雲に襲ってくるのではなく、囮役が存在していたり頭を使って襲ってくる。

 上位種が群れを率いている場合、雑魚モンスターでもかなり強くなる事が分かった。

 以後気をつけてモンスターと戦おう。


 私はゆっくりと空からJDST達が陣を組んでいる場所へと降り立つ。

 JDST達の歓声が上がり、私を暖かく迎え入れてくれた。


「ほのりんさん! 凄いです!」

「あの魔法凄いっすね!」

「ほのりんのお掛けで、モンスター達を大量撃破できましたよ!」


 お〜、こんなに喜んでくれるなんて魔法少女をやって良かった。

 JDST達は疲労でヘトヘトのようだが、やりきった感が皆の表情から覗える。

 そんな彼らの後方でひとりの隊員が倒れているのが見える。……あれは周防院さんだ。

 JDST達が周防院さんを囲んで懸命な治療活動をしていた。周防院さんは出血が酷く顔色は青白くなり、呼吸が不規則で今にも事切れそうだ。



「周防院大丈夫か? 意識を保つんだ!」

「ポーションはあるか!?」

「最後の1本を今使いましたが……」


 周防院さんヤバい状況? なら、新しい魔法を試してみるかな。

 私は血塗れの周防院さんの前に立ち、怪我を見る。

 腹部に大きな穴が2つ空いており、怪我の状況からするとヘルソードタイガーの牙で噛まれたのかもしれない。周防院さんは一刻を争う状況である。


「ほのりん」

「うん。念の為スキルポイント消費して強化した【まじかる☆ヒーリングシャワー】で回復してみるよ」


 私は周防院さんの怪我を状況を見て迷わずまじかる☆ヒーリングシャワーを〈☆→☆☆☆〉に強化した。

 初期レベルでも回復量は高いと思われるが、出血量が多く確実に回復させるには強化済みの魔法で回復させる必要があった。


「私が周防院さんを回復させます、皆さんは少し離れていて下さい」


 皆が息を飲む中、私は精神を統一させる。


「数多の星々よ、この者の苦痛を取り除き命をつなぎ給え!」


 私の願いが力として具現化する。


 胸の奥からナヴァラトナの輝きが溢れる。

 そして、それに同調するかのようにルル様の胸にある3つのナヴァトラナの宝石が輝き出した。


「む、我のナヴァラトナも同調している……この力は? 願いなのか?」



『太陽のルビーが発現しました』



「まじかる☆ヒーリングシャワー!!」


 空に輝くミルキーウェイが一層輝き、その輝きが草原に降り注ぐ。

 その光はありとあらゆる物を包み込んだ。


読んでいただき、ありがとうございます。

ブックマークと広告下↓の【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて応援して下さると嬉しいです!宜しくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ