新たな回復手段
渋谷ダンジョン38層、草原エリア。
JDSTとパーティーを一時的に組んだが、私は魔石を稼ぐ為に一旦別行動を取ることにした。
まじかる☆アタッチメントのうさ耳カチューシャを装着し、祭壇のある方向とは別の場所へと走り出す。
スキル【加速】を使用した私は一気にJDST達とは距離を取り、モンスターを見つけ次第倒していく。
草原のモンスターは肉食系のモンスターが2割で草食系のモンスターが6割、残り2割がその他のモンスターが出現する割合って感じだ。
肉食系モンスターはブラックウルフとワイルドベア、ジャイアントワームなど多種多様なモンスターがおり、草食系モンスターはビッグイヤーラビットの上位種やビッグボアなどがおり、近づかなければ襲って来ないタイプだった。
そして残りのその他モンスターが厄介だった。
「このモンスター無敵なの? 倒せないんだけど!?」
私は必死に殴ったり、まじかる☆スターライトを放ち、何度も命中させても倒せないモンスターに焦りを感じていた。
そのモンスターは空に浮かんだ巨大なクラゲのようなモンスターで、大きさは人が乗れる気球ぐらいあるサイズで、攻撃は全くしてこない。ただ浮いているだけなのだ。
「このモンスターは特殊なモンスターで体内にポーションと同じ成分が貯まっている。小瓶があれば体液を入れてポーションとして持ち運べるぞ」
「小瓶なんて持ってないよ……」
攻撃した側から瞬時に再生するので倒せないのだ。
「リカバリーゼリーフィッシュは倒さなくても良いが、スキルクリスタルを手に入れるチャンスだな」
「ルル様何のスキルクリスタルが手に入るか分かるの?」
「フハハハ! 聴くが良い! ナヴァトラナの力が少しづつ開放され、我は新たな力が手に入ったのだ!」
ルル様が変なポーズを決める。なんだっけ……ジョジョ立ち? だったかな? どこでそんなの覚えたのか謎のだが、ルル様はポーズを決めながら新たな能力の説明を始める。
「我の新たなスキル【真・鑑定眼】!」
そのまんまじゃん!
「モンスターから得られるスキルクリスタルが分かるようになったのだ」
「へ〜、落とすスキルクリスタルが分かれば落とすまで頑張れるかも?」
「そうだ、これからは闇雲に戦う必要はなく、欲しいスキルクリスタルを求めてモンスターを効率良く狩ることができるのだ!」
出なければ意味がないんだけどね。
ゲームでは出るまで何時間も同じ作業を繰り返せるが、リアルダンジョンの中ではそうもいかないのよ。
体力の限界もあるし死んだらやり直しができない。
モンスターが落とすスキルクリスタルが分かるのは嬉しいけど、確率が0.00001%とかだったら、最初から取る気にはなれないのよね。
ただ、ルル様の説明曰く、このリカバリーゼリーフィッシュが落とすスキルクリスタルは100%らしい。そして効果も便利だから絶対に取るように言われのだが……いかんせん決め手がない。
もう最終手段としてアストラルシューティングスターを使うしかないと思う。
「ルル様、アレを使うよ」
「うむ。それしかないだろうな」
まじかる☆スキルブックから、まじかる☆アタッチメント【アメイジングコスモ】を取り出す。
「まじかる☆アタッチメント!【アメイジングコスモ】オン!」
虹色に光る宝石をオタマトーンの口の中に入れると、オタマトーンが輝きだす。
『オタマトーンが形態変化します』
オタマトーンの形状が変わり、星を散りばめたような美しい弓が現れる。
弦を引くと光輝く矢が現れ、鏃に虹色の光が収束する。
「銀河を駆け抜けろ! アストラルシューティング……スターーーッ!」
一筋の光の矢がリカバリーゼリーフィッシュを貫く。
薄緑色の半透明な体は一瞬で爆破し、辺りに星を撒き散らし消えていく。
まるで銀河が落ちて来たかのような幻想的な景色だった。
『リカバリーゼリーフィッシュの魔石を取得しました。スキルポイントを100ポイント取得しまきた』
お〜! ポイント美味しい。でもアメイジングコスモは後2発……。効率は悪いか。
目の前に落ちたスキルクリスタルを広い上げるとルル様が、このスキルについて説明をした。
「これはスキルクリスタル〈キュアリカバリー〉。傷や毒などを癒やす魔法で、魔法少女と統合されると、新たな力へと昇華するだろう」
これは念願の治療系魔法かもしれない。
今まで回復手段がポーション頼みだったので心許なかったが、このスキルクリスタルを取得するれば大きな保険になるはず。
私はスキルクリスタル〈キュアリカバリー〉を使用した。
『キュアリカバリーを取得しました。クラス【魔法少女】の影響により、【まじかる☆ヒーリングシャワー】に変化しました』
「よし! 回復魔法キタ!」
「順調なようだな。スキルレベルが上がれば、肉体の欠損も修復可能だぞ」
「え? それって凄くない?」
世の中に出回っているポーションはハイポーションまでで、治せても骨折までだ。
身体の欠損などの重体を癒やす事は不可能で、欠損した状態でハイポーションを使うと傷が塞がるだけで、新たに生えてはこない。
もしかしたら、まだ見つかっていない未知の回復アイテムがあるかもしれない。
今怪我人はいないので試せないが、もしJDSTの誰かが怪我をしたら試してみようかしら? 誰か怪我しないかな? なんて思う私はサイコパスだろうか?
そんな事を思いつつモンスト狩りを再開。
草原エリアのモンスターは見つけやすいので、うさ耳カチューシャを使用しなくても見つけると事ができる。
前回のアンデットが蔓延る古戦場エリアや大森林エリアより戦い易いと感じる。
ルル様のがおすすめのスキルクリスタルを教えてくれるのでひたすら狩ること1時間。
うさ耳カチューシャから聴こえる方向には祭壇があり、JDST達が集結したっぽいので、私は【加速】を使い高速で移動する。
流れる景色を見ながら10分ほどで到着した。
「おまたせ〜」
「あ、ほのりんさん! そろそろボス戦始めますよ」
周防院さんが出迎えてくれた。彼女は見た目がとても可愛くネット界隈でも有名で、彼女の熱心なファンが多く存在する。
また最近発売した写真集が売れており、重版が決定して話題を呼んでいた。
「さ〜て、ボス戦頑張るぞ〜」
報酬は私が倒したら魔石だけ貰う予定。
スキルクリスタルが欲しい場合は再度ボスに再戦して出るまで頑張る事になっており、その時はソロで挑むつもりだ。
祭壇の上にある玉が紅くなり、紅いダンジョンゲートを開く。
そして中から現れたモンスターは、大きな牙を生やした巨大な虎が5匹出て来た。
今までボスは3匹しか出ないと思っていたが、そうでもなく、雑魚が無限に出て来たり強力なボスが1体だけとかがあった。ボスモンスターの数に決まりは無いようだ。
「サーベルタイガーだな。個体として大きい方だな」
「個体差なんてあるの?」
「勿論あるぞ。中には普段使わないスキルを所持していたりするからな」
そうなんだ。
今まで倒して来たモンスターをじっくり観察してこなかったので、モンスターに個体差があるなんて知らなかったよ。
あ、稀に変異種と呼ばれたモンスターは色が違かったり、違うスキルを使っていたような気がする。
「この手のモンスターは他のエリアにも出てくる、無理にスキルクリスタルを狙わなくても良いぞ」
「うんわかった。撃破優先でサクサク先に進もう」
JDST達と動きを合わせるように私はオタマトーンを構え、サーベルタイガーに向かって駆け出した。
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