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ハンター界のゴッド

「本当に食事に行く約束なんてして良かったんですか? Chrome Tempestのリーダー、エバンス氏は魔法少女を探しに来たって専らの噂ですよ?」


 私もその噂は知っている。

 私が魔法少女のクラスを手に入れ、レイドダンジョン女郎蜘蛛の巣をクリアしたタイミングで、エバンスさん達は日本に渡って来たのだ。

 エバンスさんの目的は魔法少女と接触する事も目的のひとつなのかもしれないので、警戒に越した事はないのだ。


「それでも! あのエバンスさんに会えるチャンス! 楽しみだな〜」

「穂華さんってイケメン好きですよね」

「目の保養になるし?」

「目の保養だけじゃ幸せになれませんよ」

「ぐぬぬ……でもあんな理想の男性は世の中に滅多に会えないよ」


 マイク=R.エバンスさんは正に究極の完成された男性。長髪のホワイトブロンドの髪、高い鼻、堀の深い顔、青い瞳、高身長、鍛え抜かれ身体に長い足、そしてお金持ち。

 あらゆる才能を凝縮された彼は神のような存在であり、見ているだけで幸せになれる。


「穂華さん、理想が高過ぎると婚期を逃しますよ」

「結婚は成り行きですよ〜、焦って結婚する必要はありません!」

「そんな事言っているとあっと言う間にアラサーですよ。私みたいに」


 奈々子ちゃんは見た目は21歳だけど、実年齢は26歳だ。アラサー女子になった彼女の発言は説得力があり、私も後2年もするとアラサー女子なのだ。

 夢見る女子でいたいが、現実も見ないといけない年頃でもある。


「奈々子ちゃんは彼氏いないんですか?」

「私ですか? ……昔はいましたけど、今はフリーです。今は穂華さんの専属の仕事が楽しいので、男は暫く要らないですね」


 仕事一筋の奈々子ちゃんは私の為に頑張ってくれるのか……。できれば幸せになって欲しいけど、あの感じだと本当に今は男に興味が無さそうだね。


 私は以前、無理やり両親に男を紹介され結婚させられそうになったが、逃げて喫茶店でウエイターのバイトをしつつハンター生活をしている。

 確かに奈々子ちゃんの気持ちも分からなくでもない。

 今の仕事は楽しいので、男って感じはしないし、いつか結婚はしたいなとは思うけど、今ではないなと感じる。


「私達は中々結婚できそうにないですね」

「ふふ、そうですね」


 そんな会話をしつつ、個室でアイテムの受け渡しをする。

 今回はクラスチェンジオーブは出なかったので、素材やらスキルクリスタルをリュックサックいっぱいに詰め込んだ物と、スキル【アイテムボックス】から貯まった素材を取り出す。

 以前奈々子ちゃんから提案されたアイテムボックスを使用してみないかと言う話を思い出し、奈々子ちゃんからスキルクリスタル〈アイテムボックス〉を返して貰っていたのだ。

 

「いや〜大量ですね〜。レアメタルを掘るより稼げますよ〜うふふふふ♪」

「さいですか……」


 レアアース又はレアメタルと呼ばれる金属を掘るには莫大なコストとリスクを背負う事は周知の事実だ。

 世界中にはレアメタルが出る場所がいくつかあるが、大半は中国産のレアメタルが出回っている。

 理由は規制が他の国より緩いのだ。

 出土するレアメタルからは放射線物質が一緒に出てくる事が多く、環境破壊が深刻な問題になっている。

 2010年には中国のレアメタルの輸出規制などもあり、日本の企業はダメージ受けたが日本の技術力でレアメタルを使わない素材の開発や、リチウムの安価で安定供給可能な方法を編み出し、中国からのレアメタルの依存度を下げる事に成功している。

 さらに世界中のダンジョンが出現し、2022年現在、代替エネルギーの開発、新たなレアメタルの開発など様々な分野で日本の十条グループを始め、アメリカなどの大国が技術革新を行っているのだ。


 奈々子ちゃんがダンジョンで得たアイテムを分別している間に、私は咲さんに夕食を外で食べる事を伝えておく。

 そして時間を確認すると、そろそろ待ち合わせの時刻だ。


「あ、そろそろ時間だから行ってくるね」

「ボロを出さないようにして下さいね」

「大丈夫大丈夫そんなヘマはしないよ〜♪」

「前科があるのでフラグにしか聞こえないのですが」


 奈々子ちゃんにバレてしまったのは仕方がないな〜。様々な状況が重なってしまったし、私のミスあってか正体を知られてしまった。

 奈々子ちゃんの心配もよく分かるので注意を払って他のハンターと接触する必要がありそう。


 奈々子ちゃんに別れを告げ、先程のラウンジに行くと、メアリーさんの他に大柄な男性とホワイトブロンドの髪を下ろした、美しい男性が立っていた。


 なんという神々しさ……。

 神なのか神の使いなのか?

 私は3人のオーラに圧倒され意識が遠退く。


「Mis.ジュージョー大丈夫?」

「はっ!? メアリーさん私……」


 3人に圧倒され一瞬気を失ってたとは言えない。

 少し気恥ずかしくなり、顔が熱くなる。

 メアリーさんが私を支えてくれると、良い香りと整った美しい顔がすぐそこにある。


 はわわわ。メアリーさん凄い美人、ハリウッド女優みたいだよ〜! こんな事じゃ、エバンスさんの前に近づいただけで死んじゃいそう……。


「少し熱があるの? 顔が真っ赤よ」

「大丈夫です、メアリーさんや有名な方の前で緊張して……」

「あははは、そんなに緊張する事はないわ。それじゃ改めて自己紹介するわ。私は Chrome Tempest 所属、メアリー=クロスよ。宜しくね」


 メアリーさんは私の右手を握るとすべすべの手の平が私の手汗でしっとりする。


 やばい、ちゃんと手を拭いておけばよかった、これは恥ずかしい。


 そして次に、髪色がブラウンで短髪の大柄な男性が白い歯を出し爽やかに挨拶をしてくる。


「始めまして、俺の名前はケルビン=マーク=リンだ。ケルビンって呼んでくれ」


 ケルビンさんの背が高過ぎる。

 見上げないとケルビンさんの顔が見えないよ……。

 私の身長は156cmだけと、ケルビンさんは200cmは越えているんじゃないかな? 周りからは私が子供に見えるんじゃないかな?


 ケルビンさんの大きな手は、私の手の平の3倍の大きさはあるのでは? それくらい大きな手で私では握手がちゃんと握れなかった。


 そして3人の中で1番異質なオーラを放つ人物が私の前に立つ。

 彼こそがダンジョンランキング1位のハンター、マイク=R.エバンスだ。

 彼も身長が高いがケルビンさんより少し低いくらいかな? それでも身長は190cm以上はある。


「マイク=R.エバンスだ。メアリーが失礼な事をした。すまない」

「いえいえこちらこそご迷惑を!!」


 エバンスさんと握手すると緊張の為かテンパってしまい、何故か私も謝ってしまった。

 もう何が何だか分からないよ。


「ちょっとジュージョー? 貴女は何も悪い事していないじゃない、日本人はすぐ謝る癖を直さないと駄目よ!」


 ご尤もですが国民性と言いますか何と言いますか、遺伝子レベル? で謝ってしまうもどかしさ。

 普段の生活でも謝っているので1日何回謝っているか分からない。日本人って1日何回謝ってるのかね? 



 私達はハイヤーに乗ってChrome Tempestが泊まっているホテルにやって来た。

 そのホテルは都内でも有名な日本帝都ホテルで、エバンスさん達が到着するなり偉い人が出て来て対応していた。


 私がこんな場所に来てもいいのかな? 非常に肩身が狭いというか畏れ多いと言いますか……。


「どうしたジュージョー? きんちょうしているのか? 俺がエスコートしてやろうか?」


 エ、エスコート? ケルビンさんが?

 それよりも周りの視線が痛い……。


 流石有名人なのか、ホテルに着くなりファンの人が出待ちしているし、メディア関係者と思われる人も大勢おり、カメラ片手に近づいて来る人が沢山いた。

 フラッシュが焚かれる中をケルビンさんエスコートされる勇気が私には無い……というか無理。


「ケルビン、ここは人が多い。早く中に入ろう」

「しゃーないか、ジュージョーすまないが少し辛抱してくれ」


 エバンスさんが先頭を歩くと人の波が避けていく。まるで十戒のワンシーンのようだ。


「ははは。人避けには最高だな」

「そうね、エバンスの人を寄せ付けないスキルが役に立つのよね」


 え? 寄せ付けないスキル? 私にはスキルの影響は感じないけど、むしろ神々しくて光を浴びたいくらいだよ。


「ジュージョーはよく平気ね、普通の人は気絶するか逃げちゃうのよ」

「そうなんですか? 私から見ればエバンスさんは普通の人よりオーラは凄いと感じますが、それでも少し緊張するくらいですかね」 


 私のその言葉を聞いたメアリーさんは優しく微笑むと何も言わなかった。私の拙い英語が通じなかったのかな? と一瞬思ったけど、そん事を考えている間にホテルのエレベーターがレストランフロアに到着する。

 既に予約済みなのだろうか、東京の夜景が一望できる席へと案内され、私の緊張が1段階上がる。


 辺りを見渡せばドレスコードをしっかり守った人達が食事をしているのが見える。

 私は私服だし、エバンスさんやメアリーはオシャレな服を着ており違和感は無いが、ケルビンさんに至ってはハーフパンツにパツパツのポロシャツだ。流石アメリカ人って感じ。

 私達は周りの人の視線を遮るような場所に移動させられた。隔離用なのかVIP用なのかは分からないけど、周りからジロジロ見られないのは助かるわ〜。


「さて、料理を食べながら話そう」


 次々と目の前に豪華な食事が並べられる。

 伊豆の旅館も素敵な夕食だったけど、日本帝都ホテルの料理も素晴らしい。

 チラッとケルビンさんを見ると既に前菜を食べ終わり、次の料理を催促している。

 あの大柄な体格だと、目の前に出された料理は一口で物足りないのかもしれない。


「さて、食事を食べながら話そう。Mis.ジュージョー、ここの食事は中々美味しいと思うが口に合うかい?」

「皆さん、私の事は気軽に穂華って呼んで下さい、十条だと呼び難いと思うし。エバンスさん、ここの料理はとても美味しいですよ」

「それは良かった。私の事もマイクでいい」


 ハンター界のゴッド、マイク=R.エバンスさんの下の名前で呼べるなんて……あぁ私死んじゃいそう。


 ……うっ、また胸が痛む。

 この感覚はナヴァトラナが発現する兆候だけど、魔法少女に変身しないと取り出せないのよね。まだ2個しかゲットしていないし、あと7個をゲットしてルル様に捧げないと。


「どうしたの? まだ緊張してるの?」

「ははは。私あがり症なので」

「リラックスしましょう。はいこれどうぞ」


 メアリーさんがワイングラスに赤ワインを注ぐ。

 私はワインを一口飲むと口当たりが軽く、タンニンもそれ程感じないので、これは食前酒に合ったワインなのかも。


『毒無効 発動』


 ……知ってた。


「ホノカは酒がイケる口か? じゃんじゃん飲め!」


 ケルビンさんがワインを並々と注いでくるんだけど溢れちゃうよ……。

 即アルコール分解するし、お酒を大量に飲んでもお腹タプタプになるし、まだメインディッシュが来てないのでケルビンさん、もうお酒を注がないで下さい。


「ケルビンよしなさいって! ごめんねホノカ、ケルビンもいつもこんなノリだから大目に見てあげて」

「私は大丈夫ですよ〜」


 ケルビンさんとメアリーさんがワイワイしていると、マイクさんの透き通った青い瞳が私をジッと見ている。


 うう、そんな目で見られると私……。


 もじもじしている私を他所に、ゆっくりとマイクさんの薄い唇から優しくて蜜のような甘い声が響く。


「さて、ホノカ」

「は、はい何でしょうか?」


「ホノカ……君は何者だ?」

「え?」


 いきなりそれ!?



TPOはとても大事です。

日本帝都ホテルは上客を無碍に扱う事もできず、苦肉の策でVIP専用エリアの人目を遮る場所に穂香達を案内しました。


読んでいただき、ありがとうございます。

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