鑑定はマナー違反
「ほのりん! そっちに行ったぞ!」
「もー! 次から次へと!」
ダンジョンアタックを本格的に再開して3日目、スローペースながら渋谷ダンジョン30層を現在攻略中だ。
21層からは大森林エリアになっており、天然の迷路に攻略が難航していた。
まず大森林エリアはその名前の通り、大きな大木に囲まれた場所で地面も起伏が多く、歩くにも体力が奪われる。
虫系モンスターや息を潜めているモンスターは、うさ耳カチューシャの能力を持ってしても探知し辛く、死角が多いので突然モンスターに襲われる事もしばしば。
唯一の救いは祭壇がある場所には一際大きな大木が生えており、そこに向かって歩けば必然と祭壇の場所へと辿り着く事ができた。
そして30層の祭壇に辿り着き、紅いゲートが開くと大型のムカデモンスターが大量に現れたのだ。
20層まではボスモンスターは1体から3体のモンスターが出現したが、21層の大森林エリアからは数に制限無く現れる事があり、30層のボスも例外ではなかった。
ひたすらマジカル☆スターライトを放ち、近寄って来たモンスターはほのりんパンチをお見舞いし撃退していた。
そして最後の1匹を撃破すると紅いゲートが閉じて通常の黒いダンジョンゲートがあらわれる。
「あ〜しんどかったー」
「丁度100匹出て来たな」
「スキルポイントが稼げたと思えばいいか」
ここまで来るのに2,000ポイントは稼いでおり、強化するスキルをどうしようか迷っているところだ。
マジカル☆ドレスアップは次の強化に3,600ポイントも消費しないと強化はできず、今の所持スキルポイントは2,100ポイント程度しか保有していなかった。
「スキルポイント全然足りないな〜」
「竜王の鍵を使用してレイドに挑戦すれば大量にスキルポイントを取得できるぞ?」
「死ぬ未来しか見えない」
「ひとりじゃ厳しいかもしれんな。魔法少女専用クエストには“他のハンター達と協力しレイドをクリアする”がある。誰か誘って攻略する事をおすすめする」
誰か誘って攻略するにしても誘える人が奈々子ちゃんしかいないし……末留さんと南本さんは最近忙しいみたいだし……。
以前ダンジョン初心者講座に参加した2人はその後、急に忙しくなったみたいでダンジョン中級者講座に参加した以降は来なくなってしまった。
末留さんはハイランダーのクラスを手に入れてからは大手のクランに入隊したらしく、そこの訓練に参加する事が決まった。
南本さんは歌姫のクラスを取得してからは超人気歌手として電撃デビューし、見た目も可愛いのだが歌声が素晴らしく、私もファンになってしまった。
そんな訳でレイドに挑戦するのは厳しい。魔法少女のクラスのランクを上げるのと、マジカル☆ドレスアップの強化も必要だ。
どちらにしてもスキルポイントが足りないし、魔法少女専用クエストの“渋谷ダンジョン40層クリア”と“100億円稼ぐ”が1番現実的であった。
地面に落ちた素材とスキルクリスタルを広い、ボス撃破報酬の宝箱を開けると私が装備出来ない装備品が出てくる。
指輪すら装備できないのは辛い。
ルル様の話によると装備品は全てまじかる☆アタッチメントしか装備できないらしい。
そのまじかる☆アタッチメントが全く出ないのですが……。
アクセサリー系は売れるし、普段の私にも身に着ける事は可能なので念の為回収していく。
「スキルクリスタルの鑑定はおわったぞ」
「3つ出たから楽しみだね」
「これは〈ヘカトンケイル〉〈多重装甲〉〈毒攻撃〉だな」
「どんな効果なの?」
「まず〈ヘカトンケイル〉は副腕を作り出す事が出来るスキルだな。まじかる☆エンジェルハンドとは違って物理干渉が可能だ」
「腕か生えるの? それは嫌だな……」
「む? どうやらまじかる☆エンジェルハンドと統合できるスキルらしい」
ヘカトンケイルを使ったら、マッドエクスキューショナー化が進みそうなんですがそれは……。
「次は〈多重装甲〉だが、これもまじかる☆シールドの強化に使えそうだ。今までまじかる☆シールドは1枚しか出なかったが、2枚重なって出現するようになる」
「お〜実質防御力2倍じゃん。文句無しの大当たりスキルクリスタルだ」
「〈毒攻撃〉は麻痺攻撃と同じだな」
〈多重装甲〉のスキルクリスタルは使用確定、〈ヘカトンケイル〉は私に腕が生えないとのことだったので使う事にした。
『スキルクリスタル〈ヘカトンケイル〉を使用しました。ヘカトンケイルが、まじかる☆エンジェルハンドに統合されました』
『スキルクリスタル〈多重装甲〉を使用しました。多重装甲が、まじかる☆シールドに統合されました』
よし防御面を強化出来た事は素直に嬉しい。
スキルポイントを消費して強化するのも必要だけど、スキルを取得してまじかるスキルを強化出来るのは朗報だ。
「次はこの指輪だな。どれどれふむふむ……〈疲労回復・小〉だな」
「ほ〜、疲労回復なら外のランニングに使えそう」
シンプルなデザインなので、ダンジョン産のアクセサリーなら身に着けても良いと思える。
流石にバイト中には指輪を外すつもりだけど。
「明日から31層の攻略かな」
「そうだな、遅れを取り戻す為にも攻略階層は更新したいところだ」
ネットの情報によるとエバンスさんのチームが45層を突破し怒涛の進行でダンジョンを攻略している事が分かっている。
JDSTも負けじと攻略しているが、30層後半を現在探索中らしい。
よくこんな広いダンジョンで、ペースを落とさず攻略出来るのか不思議でならない。
私の場合はうさ耳カチューシャを使って音を頼りに攻略しているが、他のハンター達はどうやって祭壇がある場所まで行くのだろうか? そういったスキルがあるのだろうか? とても気になる。
私は探索を切り上げ、渋谷ダンジョンゲート前に降り立つ。
渋谷ダンジョンゲート前は相変わらずの人集りで人口密度は非常に高く、常に人とぶつかり合うような密な状態であった。
やっとの事で渋谷ダンジョンゲート前を抜け出すと、渋谷ダンジョンセンターの裏手にある関係者用の入口へとやってくると、スーツを来た奈々子ちゃんが出迎えてくれた。
「本日もお疲れ様でした。鞄をお預りします」
「結構重いですよ」
「そこそこ鍛えてるので大丈夫ですよ」
パンパンに詰めたリュックサックを奈々子ちゃんに渡すと、ひょいっと持ち上げ運び出す。
変身していない私が、とても重く感じる物をあんな軽々と持ち上げるなんて凄いなあ。
ダンジョンセンターの裏口のロビーは正面のロビーとは違って道行く人は少なく、VIP専用なのが分かる。かと言って作りが豪華な訳でもなく、設備が充実している訳でもないが、強いて言えばセキュリティが高い個室がある程度だ。
そんなエリアの1画に広めのラウンジがあり、そこの横を通り抜けようとした時に、視界の隅にウィンドウが突如ポップアップする。
『スキル【鑑定】が、あなたに対して実行されました。まじかる☆スキル【魔法少女は身バレしない】がレジストに成功しました』
「え!?」
突然の出来事で気が動転驚きの声を上げ、慌てて周りを見渡す。
「どうかなさいましたか?」
「えっと、私に対して誰かが鑑定をしました」
「なんですって!? 誰ですか? 本人の許可無く鑑定系スキルを使うのはマナー違反報告ですよ!」
おお……奈々子ちゃん怒ってるよ。
鑑定スキルって人に勝手に使うのってマナー違反なんだ、知らなかったよ。
奈々子ちゃんが周囲に対して怒りを顕にすると、ひとりの英国人女性がやって来た。
「I'm so sorry I frightened you」
「Do you appraise?」
おお、奈々子ちゃん外国人と話してるよ〜。
私は何となく分かるレベルだ……。
※以後翻訳して進行します
「私がそこのハンターに鑑定を使ったわ、でも貴女不思議ね、何故レベル1なのにこのエリアにいるの?」
「あの……えっと」
私は突然英語で質問され困惑する。
「失礼、まず自己紹介ね。私の名前はメアリー、メアリークロスよ。気軽にメアリーって呼んでね」
ん? メアリー? メアリークロスってChrome Tempestの人? 有名人だ!
「あのあのあの! 始めまして、私は十条穂華と申します!」
おお! メアリーさん初めて間近で見た! めっちゃ良い匂い〜〜!
「十条様、彼女は十条様に鑑定を使いました。その行為はマナー違反です。怒って良いんですよ」
「それについては改めて謝罪するわ、もし良かったらこの後食事に行かない?」
「え! 良いですか!? 行きます!」
「ちょっと十条様! あ、ちょっと! はぁ……」
メアリーさんから食事に誘われちゃった!
もしかしたら、エバンスさんに会えるかも!?
浮かれた私に対して奈々子ちゃんは冷たい眼差しを送っている事に、この時は気づかなかった。
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