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俺という記憶

ワン以外を言いたくて、この作品は前世で流行ったゲームの世界に犬として転生した男の一生を描いたものです。正直初めのエピソードはつまらないかもしれないので、2個目のエピソードが出てから一気に読んだ方がいいかもしれません。

風に靡く青い芝、逆光を浴びる少年の影、風を切る感覚。自分がこの草の香りを好きなったのはいつからだろう。まさか「ワンだから1ってそうしか言えないんだからあたりまえだろ。」そう言っていた自分が犬になるなんて、


現代日本20xx年 4月 23:31

光り輝く画面、光に高々られるコントローラー

「そうだよな、ワン、俺ならNo. 1だよな」

「ワンッ」

画面に文字が浮かぶだけで、音も出ないそんなNPCにメタ読みする男がいた。

「ワンだから1ってしか言えないんだから当たり前だろ。」

フッと嫌に笑う。

「この村人キャラ大会に出たところで負けるだろ、大体こういうのは、はじめに死ぬんだよ。」

そんなことを言いながらビール缶を持った手で突かれても、画面は変わらず進んでいる。


現代日本20xx年 12月末 20:00

中学の頃に覚えた第九多くの人の心を踊らせるその音に悪態をつきながらも、内心楽しむ男がいた。

こんな日に限って雨か、この街に集まったカップルたちよ、濡れてくれっ!ボタボタボタッとビニール傘が音を立てている。やっと色の変わった信号を見て少しリズムに乗った足取りで歩道を渡る。

家に帰るなり、すぐにパソコンを開き今年中齧り付いているゲームを開く。冒険、ファンタジー、恋愛の三要素を絡めたゲーム。このゲームにはいくつものエンドが存在する。それぞれのエンドの違いは少なく、スチルや救われた人の数が変わったりする。故に神ゲーともクソゲーとも言われることがある。圧倒的に後者が少ないが、

「いつになったらロリ魔女エンドいけるんだよ」

この男が探しているのは作中屈指の性悪と名高い魔女のスチルである。

クリスマスらしい音楽が外から流れていると思い、急いで窓を閉めると、その音楽がゲーム内の音声であることに気がついた。

「嘘だろこれじゃロリ魔女出てこないだろ」

このゲームは作り込みが強く、聖夜などの聖なるイベントの際は、勇者パーティのメンバーの魔女しか、魔女が出てこないのだ。

仕方ない寝るかぁ崩れ落ちるように布団に横たわると干したての布団のような太陽の匂いがした。誰かが干してくれたのか。




ん? 待てよおかしいだろ。 この家にはもう誰も帰ってこないのに、


第九はクリスマスに日本でよく流されるベートーヴェンの曲のことです。

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