兄の思い出
更新、遅くなって申し訳ありませんでした!
「ミハエラ、また泣いてるのか?」
木の下で隠れて泣いていた私を兄は見つけて話しかけてきた。
「お兄ちゃんはいいよね。地上に行けるんだもん。私は人の姿になれなかったから行けないけど」
「妹に泣かれたら兄は弱いんだぞ。そうだ、一つ面白い話をしよう。俺がかなえたい夢の話だ」
「興味ない」
興味がないと言っているにもかかわらず兄はとうとうと語り始めた。
「魔族も龍も人も共存できる世界を俺は作りたい。あ、これ父さんや母さんには秘密な」
「そんなの無理に決まってるじゃん」
「そんなことないぞ。あと、この夢には続きがあるんだ。そんな世界の空で一緒に飛びたい」
「誰と?」
「ミハエラだよ。それ以外に誰が?」
「お兄ちゃんの彼女?」
「あ、こら!俺がフられたのを知ってそんなことを!」
「ふふっ。なんかどうでもよくなっちゃった。地上に出るのはお兄ちゃんが世界を作り変えてくれるまで気長に待つとするよ。」
「妹に期待されると兄は頑張ってしまう」
「あ、期待はしてないよ」
「え?」
「気を付けてね」
「ああ。必ず帰ってくるよ」
*
「こうして兄は行ったきり帰ってこなかったんです。それで私は・・・」
「そうか。いいお兄さんだったんだな」
「はい。・・・でももう会えないと思います」
「なんで、そんなこと言うんだ。俺が一緒に探すから、諦めるな」
(我ながらなんというか薄っぺらいな)
「ホレス様、ありがとうございます!私誰にも言えなかったから、ちょっと元気出ました。」
「そうか。ならよかった。」
本当は大丈夫ではない、ホレスはそう感じたがそれに触れることはしなかった。これからゆっくりと大丈夫になっていけばいい。そう、考えたから。
「・・・戻りましょうか。」
「そうだな」
立ち上がった、その時だった。爆発音が向こうから空気を震わせた。
「な、なに!」
「とりあえず、行こう!」
爆発音が聞こえた方向はミハエラの家の方向だ。
「行かせないよ」
刹那、雷,火、水と魔法が飛んできた。
「っ・・・!結界が・・・」
結界が張れないどころか、魔法が使えなくなっていた。飛んできた魔法はギリギリで避けたがそれでも、次また、となると厳しいものになる。どうしたものかとホレスが思案していると木の陰から仮面をかぶった少年が出てきた。
「避けられちゃったか・・・。流石ホレスだねっ!」
「誰だ貴様!」
ミハエラがホレスをかばうようにして前に出る。
「君に用はないんだよね。ああ、でも、そうだね。君にプレゼントがあるんだ。」
そう言って少年は指を鳴らした。
「なっ・・・!」
突如として宙に現れた龍。美しい青色の鱗を持った龍だった。
「お兄ちゃん!」
宙に浮いた龍は重そうにうなだれていた顔を上げ光の宿っていない瞳でミハエラを見た。
「服従の魔法か?」
「正解!ミハエラのお兄ちゃん、簡単に騙せたよ。おい、ミハエラの相手をしてやれ」
指示された龍はミハエラに襲い掛かる。
「さて、これで二人きりになれたね。ホレス」
「・・・何が目的だ」