第一王子 ロベルト
元勇者が急に苦しみ始めた。
ホレスは直ぐに回復魔法をかけるが意味はなかった。
「魂に直接攻撃されている・・・」
元勇者はこうしてあっけなく死んでしまった。
「誰がこんなことを?」
「分からない」
「悔しい、ですね・・・」
ミハエラが遠慮がちに言ってきた。
「ホレス、本当に勇者は死んだのか?」
「・・・ああ」
ホレスは元勇者が死んだということが最初は分からなかった。
(自分のせいなのか?自分がもっと強かったら・・・)
「ごめんなさい・・・」
ホレスの口からポロリとこぼれた言葉。
「主は悪くないんですよ。どうか、謝らないで・・・」
ミハエラはホレスにそっと抱き着く。
「今日はもう帰りましょう」
「でも・・・」
「サボることも大事ですよ」
「・・・分かった。だけど一つだけ聞きたいことがある」
「何でしょう?」
「何故人が来ない」
「確かに」
「外でも何かが起きている?」
「それなら悲鳴くらい聞こえてもおかしくないはずだけど」
「とりあえず外に行くか」
外に行くと11歳くらいの男の子に対して全員が首を垂れていた。
「あいつ、誰だ?」
「だ、第一王子様だよ!俺たちも頭を下げないと」
(第一王子?なんでこんなタイミングに・・・)
すると第一王子がいまだに頭を下げないホレスに聞く。
「クラス対抗戦、せっかく見に来たのに何が起こったの?」
「お前こそなんでそんなに偉そうなんだ?お前が第一王子かどうか誰が証明するんだ」
「ククク。僕の顔は全員知っていると思ったんだけどなあ」
「悪かったな。生憎山育ちなもので」
「じゃあこれを機会に覚えといて。僕はこの国の第一王子ロベルト=リヒテンベルク。君は?」
「ホレス=マルティだ」
「よろしくね!僕は全然いいんだけど他の貴族たちが怒っちゃうから敬語を使ってくれないかな?」
「分かった。じゃなくて分かりました」
「ありがとう。じゃあ、何が起こったのか話してくれないかな」
ホレスはく元勇者が死んだというところまで詳しく話した。
「ふーん・・・ホレス君も10歳なのによく頑張ったね」
「俺とそこまで年齢は変わらないでしょう」
「そうだね。実をいうと僕も10歳なんだ。さらに、今日決めたんだけど勇者学校に通うことにするよ」
「どうぞ勝手にしてください」
(ただし俺に迷惑はかけないでください)
「後のことは僕たちに任せて。君たちはもう帰っていいよ。ああ、ホレス君、君の隣にいるのって・・・」
いたずらっぽく笑ってから
「やっぱりいいや。さあ解散解散」
いつの間にか軍人が集まっており、彼らによって勇者学校から追い出される。
ロベルトはホレスとすれ違う時にホレスのポケットに何かを入れた。
―ホレス君の隣にいる女の子、龍だよね?―
ホレスはそれを読み終えると同時にロベルトがいたほうを振り返る。しかし彼は見えなくなっていた。
(なぜミハエラが龍だとバレた?ヒト化しているから見つからないはずなのに・・・)