5.ジルコニアへ
ベルカは再びライカと手を繋ぎ、テレポートした。
次に飛んだのは和風の…江戸か、明治時代のような雰囲気の街だった。
上を見ると、黒く大きな天井のようなものが空に蓋をしていた。
ただ、その天井からは白い光が出ていて、私たちを程よく照らしているため、真っ暗ではない。
…むしろちょうど良いくらい。
「ここはジルコニアの3階で、いわゆる『大和エリア』と言われる場所よ。ここなら日本っぽい雰囲気の物を売ってるプレイヤーの店があるはず」
ベルカはそう言い、私の手を引いて歩き始めた。
『あ、ベルカさん!この間はありがとうございました』
「いやいや、暇だったから手伝っただけだよ」
『ベルカさん、可愛らしい子を連れてるね?どこかのダンジョン報酬かい?』
「いや、友達」
『そうかい!いやーあのベルカさんに友達がいたとは』
「もう、揶揄わないでよ…」
ベルカは人気者らしい。
それはそうだろう。学校でも、なんで私に構うのか分からないくらいに人気者なのだから。
数十分、ベルカとよく分からない人達の会話を見ながら歩いていると、いきなりベルカが立ち止まった。
そのままベルカの胴体にぶつかる。
「あ、ごめん」
「…大丈夫」
「ここが服屋だよ」
ベルカはそう言い、1件の長屋を指し示した。
そこにはキラキラとした看板があり、『古着屋"菊花"』と書かれていた。
…なんだか…胡散臭い。
中に入ると、たくさんの服が並べられていた。
「あ、ベルカさん。いつもご贔屓に…フレンドさんですか?」
店員らしき女がそう声をかけてくる。
「実は…今日始めたばかりのリアルの友人で」
ベルカはそう答えた。
「なるほど!職業は何を…」
ベルカは苦笑しつつ答えた。
「それが……『庶民』で」
その言葉に店員も苦笑した。
「まぁ…!これから大変になりますね」
「それが…そうでも無さそうで」
「…?」
「いや、気にしないで。でまぁ…彼女に合う服か、アクセが欲しくて」
ベルカのその言葉に、店員は目を輝かせた。
「こんな良い感じの子をデコっちゃって良いんですか!?」
「あー…うーん……それでお願い」
ベルカは一瞬『ライカ自身に選ばせたい』と思ったけれど、その次の瞬間には『でもライカは選ばないだろうし』と思いなおし、そう答えた。
その言葉を待っていたとばかりに、店員はニタニタと笑いながらライカへ近づいていく。
店員の影はライカの方に伸び、その細い身体を覆っていた。
「え…え?」
ライカは店員が怖くなってきて、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。




