44.荒らしを狩って秩序を回復する
渋々、ライカから離れたベルカは、今『フロンティアエリア』にいた。
さながら西部劇に出てきそうな黄色の多い街…ただし、かなり建物は多く、発展ぶりは大和エリアと大差ない。
今回、わざわざライカとの時間を我慢してまで一人になったのにはしっかりとした理由がある。
それはマフィアのような組織の退治のためである。
かなりの人数がいると思われるため、それらを全て狩るにはそれなりに時間が必要なのだ。
赤と金のローブを着たベルカは、短銃を持ったマフィアの男に後ろから近づき、男の口を覆って一瞬で氷のナイフを創造し、刺し殺した。
下っ端は殺すだけで良い。
そのまま氷のナイフを捨て、堂々と歩く。
ベルカの手から離れた氷は一瞬で溶けて、水となった。
続けて近くのもう一人を刺し殺す。
今度は持っていたナイフを奪った。
「キャーッ!」
ベルカはわざとらしくその場にへたり込み、叫ぶ。
すると新しいマフィアの男が出てきた。
ソイツは明らかに幹部っぽいそこそこ豪勢な服を着ている。
ベルカは咄嗟にナイフを投げ、そしてそれは男の右肩に深く刺さった。
「ぐおッ!!」
男は左手で右肩の出血を抑え、膝を着いた。
「ふふっ…あなたには生き餌になってもらいます」
ベルカは立ち上がり、男を見下ろしてニコッと笑った。
そのまま氷の剣を作り、男の左腕を斬った。
グシャッ!
続けて、左膝を思い切り貫いて、引き抜いて、くるりと後ろに回って右足首を切り取った。
「ほら、猿轡代わりです」
そう言い、ベルカは右足首を男の口に突っ込んで、氷魔法で固定した。
「ぐうぅ!!」
痛みからか、はたまた怒りからか、男は激しく動く。
ベルカはそれをひょいと持ち上げ、そのまま近くの街灯の柱に吊るし上げた。
『私はジルコニアで遊ぶ無辜のプレイヤー達を虐め、不利益を与えた結果、このような罰を受けました』
そんな風に書いたプラカードを男にかけ、ベルカはインベントリを開いた。
そうして、剣士にしては珍しい…マスケット銃用の火薬袋を取り出して、地面にドサドサと置き始めた。
男は血液不足でぼやけ始めた目でその光景を見る。
その顔には恐怖が浮かんでいた。
ベルカはそれを見て、口角が上がった。
彼女はそのまま近くのカフェのテラス席で、頬杖をついて男の方を眺めた。
その手にはマッチ箱が握られている。
「な!なんでこんなことになってるんだ!おいジョン!生きてるか!クソッ!」
明らかにマフィアっぽい集団が男の吊るされている街灯を囲み始めた。
ベルカはそれを見て、立ち上がり、マッチに火をつけ、マッチ箱へ引火させて、それを投擲した。
ヒョイと投げ込まれたそれは大量の火薬袋の上に落ち、そして…
バァンッ!!
周りのマフィアを巻き込んで、爆発した。
ただ、ゲームのシステム上、火薬の爆発自体にダメージは発生しない。
なので、吹き飛んだだけである。
…まぁ、全てベルカは理解した上でこんなことをやっているのだが。
彼女は氷の剣を創造して、マフィア達の吹き飛ばされた方向へ…ゆっくりと歩き出した。




