30.屋敷が欲しい
「何それ!?」
ベルカはライカの説明を聞いて、驚いた。
ベルカは考えた。
『もしかして…ライカが人外寄りの思考になり始めたから、いちいち指を鳴らさなくても『通常攻撃』を繰り出す『イメージ』ができて、結果的にノーモーションで動ける…とか?』
ベルカもベルカなりにライカのことを調べていたのだ。
「…どう?」
ライカは明らかに褒めて欲しそうに、上目遣いでベルカを見てくる。
「天才だよ!ライカ」
ベルカがそう言って撫でると、ライカは満足そうな顔を少しした後、またスンとした。
「…別に?」
透華らしい…うん?ライカは透華の本当の姿…みたいな感じなのかな?
もしかすると、本質は変わらず、性格だけ変わってるとか?
だとすれば…
「……長い」
ベルカはライカにそう言われ、咄嗟に手を離す。
「ご、ごめん」
「屋敷、見に行こ?」
ライカはそう言って歩き出した。
ジルコニアには様々な不動産屋がある。
その多くが引退したプレイヤーのかつて住んでいた家を売っており、ライカとベルカはそういう不動産屋のうちの一件に来ていた。
「…決闘大会で優勝したんですけど…その報酬金で買うのに、ちょうど良いくらいの屋敷ってありますか?」
ライカはオーナーを見上げながら、そう聞いた。
オーナーは無表情で見つめてくるライカに若干怯みつつ、答えた。
「あ〜…一応…幾らかの選択肢は出せますよ」
「じゃあ、見せてください」
オーナーは3枚の紙を出した。
「まず、こちらから。かの有名な『タシタ氏』が作った量産邸宅で、流通量の多さから、その大きさに比して安くお売りできます。ウチの看板商品ですね」
…これは…ないな。
ライカはそう思った。
決して、人気なのが気に入らない訳ではない。
決して、有名そうなブランドが気に入らないわけでない。
「次はこちら。この価格帯で一般的な邸宅になります。企業が設計したものになりますので、信頼性は高いと思います」
なーんか…気に入らない。
ライカはそう思った。
決して、企業が作ったものと聞いてつまらなさそうと思ったわけではない。
「最後に…これは…出すのもおこがましいとは思うのですが、かつて、ベータテストの際、ダンジョンのように扱われていた『β-13』城が一応購入することはでき…」
ライカは目を輝かせ、口を開いた。
「それで」
「あ…え?いやいや!かなり保存状態が悪いので、おすすめできませんよ!?」
「…だから、それで」
ベータテスト時代からの歴史を持つお城…良いじゃん。
ライカはそう思った。
決して、逆張りではない。
斯くして、彼女は城を1つ手に入れた。




