17.脳破壊
その日の朝は珍しいことに、教室に美鈴と透華がいなかった。
いつも、透華も美鈴も、早くに登校してきて、教室で話しているのに…と、クラスメイトはみんなヒソヒソと話していた。
朝のホームルームに入る10分ほど前。
「ふう…間に合った〜」
そう言い、美鈴が手を引いてきたのは、美鈴の制服らしきものを着た、透華っぽい女の子だった。
クラスメイト達は明らかにピタリと会話をやめ、透華っぽい女の子を凝視し始めた。
身長体格はそのままに、透華の特徴的な巻き髪はアイロンで綺麗で真っ直ぐな髪となっていて、白いリボンを横髪に絡め、明らかにお洒落になっている。
…加えて、美鈴のブカブカした制服に、ちょっぴり口紅とアイライナーで整えられた顔…それと、注目されて恥ずかしそうに美鈴の後ろへ隠れようとする仕草。
クラスメイト全員の脳というか…癖というか…まぁそういうのが明らかに破壊された。
無論、彼女は透華である。
ちなみにホームルームで担任は『燈崎……ん?燈…崎…?』と5度見ほどして、やっと現実を受け入れた。
その後、透華は羞恥から異常に美鈴に引っ付くくらいで、それ以外はいつも通りだった。
…ただ、クラスメイトはそれを見て満場一致で思った。
『絶対、昨日何かあったでしょ』と。
その中で1人、勇気ある者が一歩、歩み出た。
そして聞く。
「ね、美鈴と透華って昨日一緒に寝たの?」
2人はキョトンとした。
「うん。寝たけど」
と、美鈴。
透華はそれに、こくこくと頷いた。
その話を聞いていたクラスメイト達は、揃いも揃って絶句した。
そしてもう1回、脳というか…癖というか…が、破壊された。
まぁ、そんなことはさておき、透華と美鈴からすればいつも通りの学校なので、何が起きる訳でもなく…放課後。
「どうする?今日は私が泊まろうか?」
美鈴はミクバの電源を入れ、そう言った。
「……制服洗って返さないとだから、それが良いかも」
透華は目を逸らしながら、そう言う。
「ん………え?マジ!?」
美鈴は今日一番の声量でそう言った。
「あ、でも、私の家には美鈴の分の制服の替えとかないから…準備してきて」
透華は言う。
「それはもちろん!ついでにVRも持ってくよ!」
「そ…それと…家族にちゃんと確認してね」
これは透華なりの配慮だった。
透華は普通に電車で帰り、美鈴は全速力でミクバを走らせ、準備をして、透華の家へ電車で向かう。
「お邪魔しま〜す!」
透華が帰宅して、数十分もせずに美鈴は邸宅を訪ねてきた。




