13.荒らしを狩るバグ少女
幻想世界に要らないものがある。
発展である。
ジルコニアへの導入が断念されたものがある。
近代文明である。
管理者が忘れていたものがある。
実装を断念したコンテンツの、その理由である。
たった1人の少女がいる。
その少女の無知と逆張りが、幻想世界の崩壊を…まぁ少しだけ抑えることとなる。
ドンッドンッドンッ!!
今、ライカとベルカが相手をしているのはアメリカの『サクラメント政府』、『PSA』なんて呼ばれる荒らし集団である。
最初の3発で先鋒の11人は吹き飛び、冥界送りになった。
彼らはたまに『大和エリア』を荒らしに来る。
その悪習が結果的にライカとかいうバケモノとの接敵に繋がった。
彼らはゲーム内での『悪党的行為』に酔っていた。
冷笑主義の行き過ぎた末路と言えるかもしれない。
…ただ、そんな自分たちが為す術なく倒されていくのも、最高に楽しむタイプの人間であった。
「ピノックども!何をやっている!さっさとあんな女1人屠ってしまえ!」
指揮官らしき男は叫ぶ。その口角は上がっている。
『イエスッ!サーッ!!』
西部劇風の格好をした男女数十人が一斉に声を上げ、ライカに向けて突撃を仕掛ける。
ドーパミンがたくさん出て、とても幸せそうである。
ズドドドドンッ!!
ライカはその笑顔を気味悪がって、近寄って来ないよう、ひたすら狩った。
ただ、だんだん彼女も彼女で楽しくなってきた。
「くそッ!なんて女だ!!」
吹き飛ばされ、まもなく冥界送りになる男1人が、ライカに吐き捨てた。
「…くふふっ…!ただの初心者……だよ」
ライカはそう言い、男の首を足でグリッと折り、冥界送りにする。
…彼女も彼女で、ヒーローではなく悪役を演じているのである。
それを冷たい目で見ているベルカが1人。
「や…やめてくれ!金なら払う!だからどうか命だけは!」
PSAの指揮官らしき男は倒れ込み、情けなく這いつくばって、そう叫んだ。
その顔は明らかに笑っている。
目は輝いていた。
対し、ライカはニヤニヤと笑いながら言った。
「くふふ………だめ」
ドンッ!
男は跡形もなく吹き飛ばされ、冥界へ飛ばされた。
『レベルアップ』
レベル0000?0 → レベル0?0?0000
…イマイチ、何レベに上がったのかよく分からない。
「……どうだった?」
ベルカがそう聞きながら、ゆっくりと歩いてくる。
その場に座り込み、メニューを眺めているライカは口を開いた。
「ベルカ、私、強かった?」
その顔は明らかに幸福で溶けている。
逆張りをしたり、斜に構えたりする余裕が無いらしい。
「…強かったよ。格好良かった」
ベルカはそう言った。
半分、本心で。半分、呆れつつ。
ちなみに、この世界ではリアルタイム翻訳機能があるので、あらゆる言語はジルコニア内の共通言語に書きかわり、プレイヤーに伝わるような言語に翻訳されます。
なので、どの国の言葉でも、ライカからしたら日本語を喋っているように聞こえます。




