保育の部で切磋琢磨
三人娘こども園で、一時保育の部が運用を開始してから、一週間が経過した。
受け入れを開始する前日の、長時間に渡る持久走的な様相を呈した打ち合せを経て、準備万端に整え、初日を迎えた。
その初日こそ、多少のもたつきだけで乗り越えられたものの、受け入れ人数が増え始めた二日目からは、想定外の事態に右往左往する毎日だった。
それが、やっと落ち着いてきた。といった感じで、今日を迎えている。
開園から一か月間は、お試し期間、という事で、一日毎のほぼ実費のみでの子守りの受け入れとした。のだが、受け入れ説明、同意書の作成、費用の徴収、子供のお世話、お迎えへの対応、後片付け、翌日の準備などなど、目の廻るような忙しさとなった。
保護者対応は、リナちゃんが仕切ってラナさんが支援。園内の実務は、フィオナちゃんが仕切って俺が支援。
リナちゃんの補助をルナちゃんとレベッカちゃん、フィオナちゃんの補助をセリシアちゃんとレナちゃん。五人のお子様たちも、のんびりと遊ぶ暇なく雑用に走り回っていた。
うん。超多忙だったけど、みんな笑顔で楽しそうだった。ので、良かった、としみじみ思う。
「フィオナちゃ~ん。この子の受け入れ、お願いします」
「は~い、了解。リナちゃん、これ、さっき、エドくんの保護者さんが持ってきた、今日の分の保育料だって」
「あ、そこに置いといて! マリーちゃんは、このお姉さんについて行ってね」
「はい、は~い。マリーちゃん、おはよう。こっちに来てね」
「ルナぁ~。こっち来て、そちらの保護者さんに、受け入れ条件と費用の説明して!」
「はいはい、姉さま。今、行きま~す」
「あ、セリシアちゃん。マリーちゃんをお願い」
「ラジャー。あっち行って、一緒に遊びましょうネっ」
けど。相変わらず、朝晩は、戦場だった。
手際よく優秀な三人娘と三姉妹が合同で、テキパキと流れるように捌いていく。
うん。大人な俺には、割り込む隙間が全く無い。
というか、下手に近付くと、小さな子供を蹴飛ばしてしまいそうで、怖い。
ので、離れて見ている事しか出来そうにないな、と達観。立ち番する警備員と化して、暫くは見守っていようと思う俺だった。
* * * * *
朝のラッシュ(?)が終わり、預かった子供たちは、遊戯室(と呼ぶことになった各種設備の整った広い部屋)に集まって、思い思いに寛いでいる。
それを横目に、フィオナちゃんとリナちゃんにラナさんと俺を加えた四人で、課題検討会議を開催していた。
お試し期間と銘打って始めた一時保育の受け入れで、保育の部の運用には目途がついた。ので、本格的に、月極め契約での保育園として開業すべく詳細を決定する、のが目的の会議だ。
「さて。今日決めるのは、一日あたりの受け入れ人数と、一月あたりの保育料。この二点よ」
「「はい」」
「まず、今の体制での、一日に受け入れ可能な人数ね。フィオナちゃん、最大で何人くらいかしら?」
「そうですね。受け入れとお迎えの際の対応の、運用改善と習熟を想定したとしても、現状では、二十人が限界だと思います」
「そうね...。朝晩だけの助っ人投入は追い追い考えるとして、確かに、現状では二十人を超えると何かと問題が出そう、かな」
「私も、そう思う」
「あら、リナも、そう思うのね。なら、一日の受け入れは最大二十人、で決定にしましょう」
「「はい」」
「保育料の方は、どうかしら?」
「う~ん。難しいですね」
「現在の保育料は、お試し期間という事で実費だと説明してるけど、備品と食材の費用や人件費まで賄えればよい方で、設備の維持費や初期投資の分を考えると足りない」
「まあ、まあ。リナも、一端の経営者ね。じゃあ、どう設定する?」
「...」
「あ、あの。ラナさん」
「はい。なあに、フィオナちゃん」
「私たちの側の都合もあるので、なるべく高めの保育料を頂きたいのはやまやまなんですが、これまでに利用して下さった方々にとって、この一週間に支払って頂いていた保育料は、払える金額だったのでしょうか?」
「あら、まあ。フィオナちゃんも、よく考えてるわね」
「ありがとうございます」
「ふふ。そう、なのよね。運用を開始してから今日までに利用してくれた方々って、大多数は、それなりにお商売が上手くいっている方々なので、もう少し高くても問題はない、とは思うの」
「そう、なんですか?」
「ええ。ただし、一部には、そうでない人も混じっていたの。で、私がここを紹介するときに、そういう人には、繁盛亭への納品物の代金から後で清算するというお約束で、立て替えていたのよね」
「そう、ですか...」
「やだやだ、気にしなくて良いのよ。うちが損する訳じゃないんだから」
「ありがとうございます」
「もう、いやだわ。そんな、申し訳なさそうな顔をしないの。真面目なのは良いけど、程々に、ね」
「はい...」
「ねえ、リナ! リナも、そう思うでしょ?」
「うん。フィオナは、もう少し前向きに、楽天的に考えた方が良い、と思う」
「...」
「そうよね。流石よ、リナ。良いこと言うわぁ」
ラナさんと、リナちゃんとフィオナちゃんでの、話し合いは、時たま脱線しながらも、着々と課題を片付けでいく。
そう。俺の出番は、全く無い。
俺を加えて四人での課題検討会議の筈が、現実には、三人の女性による井戸端会議的なものになっていた。
いや、まあ。課題は着々と解決していってるので、課題検討会議で間違いはない、のだが...。
約二時間に渡る、姦しい(?)討論会的な、脱線山盛りだった検討会議の結果。
保育料については、物納可能な要相談のオプションも設定した上での、少し高めに設定した一日毎に契約の一時預かりと、一時預かり十日分の保育料で二十日まで預かり可能な月極め契約。この二種類で、可能なケースから随時、実運用へと移行する事となった。
因みに、年間契約については継続検討となり、夜間預かりについては併設寮が完成した後で個別の案件毎に協議、と決定された。
兎にも角にも。
こうして、三人娘こども園は、三姉妹と三人娘たちが主体となり、経営も軌道に乗ってきたのだった。




