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ご主人ガチャ、また外れました

ダンジョン30階層――。


ここを突破できれば、40階層攻略も夢じゃない。


結成からわずか半年。それでも僕たち五人は最高の仲間

……いや、一匹を含めれば六人か。


もっとも、その一匹である従魔犬のサリーを、

彼女はいつも「従魔ギルドに返しなさいよ」とアレルギーのせいで嫌がる。


「サリー、回復袋を後衛へ!」

「わん」

あと少し、ラスボスは瀕死。

勝利は目前――誰もがそう思った。


だが、前衛同士とサリーの動きがわずかに重なり、

アタッカーが剣を振り抜けなかった。


「チッ、邪魔な駄犬だな」


「サリー邪魔はダメだ!戻れ!」


(まただ)


半年前、主人とこの人たちは違った。


「すごいぞ!サリー!」


「お前の犬は賢い!」


「サリー助かったよ〜ありがとう」


頭を撫でてくれた。

ご飯もミルクもくれた。

名前も呼んでくれた。


でも、強くなり、ダンジョンを進むにつれて、

少しずつ変わった。


「それくらい従魔なら当然」


「回復持ってこい、早く」


「彼女が嫌がるから今日は外で寝て」


「ミルクは後であげるよ」


そして、今は


「駄犬」と呼ばれても訂正すらされない。


「駄犬ごと切り捨てれば良かったのに〜」


それが決まれば、倒せるという余裕があった。

だが、勝利を確信した余裕は、一瞬で死の扉を開ける。

ラスボスの必殺技が炸裂。


前衛二人は即死。

後衛と僕の彼女は重傷。

僕もかなりやばい、瀕死の状態。


(なんでかなぁ?人間って、最初はみんな優しいのに。

どうして最後は冷たくなるんだろ?契約違反はするしさぁー)


「かったりぃー」


「第一封印解除《穿天》」


その一言で、白い犬の身体が光に包まれる。


次の瞬間、そこに立っていたのは人の姿をした少女だった。


「……え?」


呆然とする僕を見もせず、彼女はラスボスを一撃で粉砕。


ボスの魔髄を小石を拾うかのように拾い

パキーン、魔髄のアンプルが割れ

グビグビッ


「ええぇぇぇぇ!たった8レベアップ?!

まじか!手間賃にもならないじゃん!」


そう言うと、今度はリポップしたボス部屋の宝箱を漁り始めた。


「剣?いらなーい」


ポイッ。


「杖?これもいらなーい」


ポイッ。


「指輪?趣味じゃない」


ポイッ。


ガチャガチャと箱を漁り続けたあと、サリーは肩を落とした。


「えぇ~?マジかぁ……ミルクまたはミルク券ぐらい入れとけよ~使えねー」


「駄犬!早く回復玉を寄越しなさい」


僕の彼女が叫んでる声が届いた。


「う~ん……どうして人間って、

最初はみんな優しいのに、最後は駄犬扱いになるの?」


「サリー!ごめん。お願いだ!早く回復玉を」


サリーは少しだけ寂しそうに笑った。


「うん。半年前の君になら渡したけどね」


「サリー?……命令する!従魔サリーよ回復玉を寄こせ!」


「まだ命令すれば従うと思ってる」


「ゴフッ、……命令……回復玉を持ってこい」


(人間って本当に馬鹿だよなぁ。

こんな首輪何の役に立つのかな?

あっ、ミルクは貰いやすくなるのか)


ダンジョン30階層――ラスボス撃破。


その瞬間、ダンジョン全体に無機質な声が響き渡る。


『踏破を確認しました』

『ダンジョン30階層は三日間の沈黙期間へ移行します。』

『30階層の入場を禁止します』


地上でも同じアナウンスが響き渡り、ダンジョン前は一気に騒然となった。


「おい!30階を攻略してたのって疾風の伽藍じゃなかったか?」


「マジかよ!はぇーなまだ新規チームだろ?」


「出てきたら祝勝会だな!」


ギルド職員も慌ただしく出口へ集まる。


「まもなく踏破パーティーが帰還します!」


冒険者たちは拍手の準備を始めた。


そして――転移門が光る。


「来たぞ!」


全員が息をのむ。


転移門から飛び出してきたのは、一匹の白い犬だった。


「わん!」


「…………え?」


「犬?」


白い犬は尻尾をブンブン振りながら、一目散に街へ駆け出していく。


「あっ!ちょっ、待って!」


ギルド職員が慌てて呼び止める。


「待ってください!他のメンバーは!?パーティーは!?報告を」


「わぉおぉん!」


もちろん待つはずもない。


サリーは風のように走り去り、その場に残された全員は呆然と立ち尽くした。


「……今の、疾風の伽藍の従魔だよな?」


「え、じゃあ……まさか生還したの、犬だけ?」


「いやいや、そんな馬鹿な」


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