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第23話 鵜川須美ルート開始

 ゴールデンウィーク明けの学校はガヤガヤしている。

 それも当然だろう。会えなかった友達と会えばテンションは上がる。


 津宮椿ルート攻略は大方終わった。

 自分の未熟さのせいで、津宮さんに大ケガを負わせてしまった。

 後遺症などが残るわけではないらしいが、それでもモヤモヤはする。


 掘り当てた財宝は現在、俺の部屋に置いてある。

 津宮さんの体調が回復し次第(一か月ほどと言っていた)、換金して借金返済に充てる作業を行うつもりだ。


「はあ……」


 ここまで決まっているのだが、ため息が止まらない。

 

「どしたの物部くん? 朝からずっと心ここにあらずって感じだけど」

「……いや、なんでもないよ」

「なんでもなく無いでしょうが! 友達として黙ってられないよ」


 柿森さんが心配して声をかけてくれる。

 抱えている問題が世界のこととかなので、素直には明かせない。ただ、一番の問題はそこでは無くて……。

 でも、女子である柿森さんに聞いたら的確なアドバイスをもらえるかもしれない。

 勇気を出そう。


「あの、柿森さん、できれば引かないで聞いて欲しいんだけど」

「うん! 大丈夫だよ。物部くんは気持ち悪いことを言う人じゃないし」


 そのキラキラと輝く目が痛い。

 俺は今から気持ち悪いことを言わなくちゃいけないからね。


「ちょっと気になる女子がいるんだけど……その状態で他の女子と集中的に関わらないといけないかもしれないんだけど、それって不誠実だったりする?」


 非常に遠回りな説明になってしまった。

 翻訳すると――。


 津宮さんのことを気になってきてしまったのだが、その精神状態で鵜川先輩ルートに行くことが倫理的に許されるのか? という話なわけである。


 初恋はゲームに出てきた美少女キャラクターの俺。

 現実的な恋愛は未経験過ぎてなんとも言えなさすぎる。


「なんか分かりにくい言い方だけど、浮気かどうか聞きたいってことで良いの?」

「まあ、うん……」

 

 分かってはいた。

 ギャルゲー世界ではあるけど、ここは俺たちの現実でもある。

 一つのルートが終わったかもしれないが、それで世界がリセットにはならない。

 時間は続いていく。


 だから、俺はヒロインたちに恋愛感情を抱かないようにしていた。

 そうしなけば、このギャルゲー世界の完全攻略など無理だからだ。

 ハーレムルートとかいうのもあるのかもしれないが、現状よく分からないし……俺だけの欲望でどうにかできるものでもない。


 だけどさあ! 津宮さん可愛いんだよ!

 それだけなら、まだいい。ヒロインたちは皆可愛いから。


 だけど、あの日――最高の微笑みで言われたあの言葉が頭から抜けない。


『先輩はあたしのヒーローです!』

 

 あの笑顔、声が頭の中にずっと響いている。

 

「ああああああ!」

「ど、どうしたの!?」

「い、いや、なんでもないです。ちょっとその子のことを考えてたら、発狂しそうになっちゃうから」

「もうしてるじゃん……」


 柿森さんは呆れたように嘆息を吐いた。

 あの女神のように優しい彼女に、ため息を吐かれると傷つく。


「それで、その女の子とはお付き合いしてるの?」

「いや、そんな話は微塵も」


 柿森さんは「えっ」と言っていた。

 そんなに驚くようなことなのか。


「だったら、別に問題ないと思うけど……少なくともわたしの考えではね」

「そうなの?」

「その子とお付き合いしてないなら、義理みたいなのは生まれないと思うよ。だから、どっちかと言えば物部くんの捉え方次第だよね。推し一筋です! みたいにするか、そうじゃない形をとるか? ってことになりそうだよね」

「なるほど……」


 確かに明確な関係性が無いなら、相手に不義理を働いたことにはならない。

 もうこうなってくると信条の話になってくる。


「ありがとう柿森さん、良いヒントになった」

「いえいえ。でも、彼女ができようと忘れないでね? 一緒に遊びに行くの!」

「忘れてない! 忘れてないから! じゃあ、また明日」

「じゃあね~」


 俺はリュックを背負って教室から出た。

 

 そもそもこの感情が好きなのかどうかすら分からない。

 ただ女子に「カッコいい」と言われて、舞い上がっているだけかもしれないし。

 もっと時間を置いて考えよう。


 それに浮気にならないのなら、俺の方針は変わらない。

 

 このギャルゲー世界をクリアする。ハッピーエンドで!

 

 変わらない目標を再確認して、俺は第三自習室に向かうことにした。


◆ ◆ ◆


 第三自習室。

 ほとんどの生徒が存在を知らない幻の自習室。

 そこの一席に、いつも座っている先輩。


「お久しぶりです。先輩」

「そんなに久しぶりだと思わないが。ゴールデンウィーク前に会ってるし」

「ええ……一週間空けば、久しぶりだと思うんですけど」

「私はこの一週間人と接してないからね」


 ああ、だから感覚がおかしい……ってそうはならないでしょうが!

 

 この第三自習室に居座る高校三年生の鵜川須美先輩。

 彼女が津宮さんの次に書いてあるメインヒロインだ。

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