第18話 ハッピーエンドへGO!
あの告白から数日経過した放課後。
津宮さんを救う方法は書かれていた……けど、それ以外の問題で俺は悩んでいた。
「あ~どうしよう……」
思わず口から苦しい声が漏れ出てしまう。
ヌルッと隣の席から疲労回復のドリンクが机に置かれた。
「物部くん……飲む?」
「じゃあ、ありがたく」
柿森さんから渡された疲労回復薬は、思ったよりも薬臭くなくて飲みやすかった。
「なんか最近、お疲れのようだったから。下の自販機で買ってきた」
「ありがとう……」
ちょっとだけ心身ともに楽になった気がした。
柿森さんに心配をかけてしまっている。
そうは思いつつも、もしかして彼女なら何か別の答えを出してくれるかもと思って、口が動いてしまう。
「柿森さん、例えばの話なんだけどさ。普段からお世話になっている人に、更に凄くお世話になることがあるとするじゃん。しかもお返しもできない。それは、やっぱり嫌だよね?」
「海香知ってるよ! こういう例え話って本人のことだって!」
「うぐっ」
柿森さんは妙に嬉しそうに目がキラキラしている。
確かにこんなに分かりやすいこともないけどさ!
「からかってごめんごめん。まあ、真面目に話すとかなり嫌だね。経験あるけど、ずっと後ろめたいみたいな感情抱き続けちゃうかも」
「そうだよな。どうしたらいいんだろ?」
「簡単なのは、その本人を巻き込むことじゃない? その人にも何か役割を与えるというか、頑張ってもらうというか。それだけで変わるよ」
柿森さんは遠いところを見るように語る。
実体験らしいし、何か覚えがあるのだろう。
「ありがとう……どうすればいいのか、道筋は見えたような気はする」
「へえ……頑張ってね! ヒーローさん?」
「いや、ヒーローなんかじゃないから! じゃ」
「じゃあね~」
自分がヒーローなんて器じゃないのは分かってる。
もし仮にそういう存在なのだったら、もっとマシな解決策を攻略本無しに思いついているはずなのだから。
◆ ◆ ◆
それから次の出勤日が来た。
津宮さんとは挨拶を交わしただけ、どうしても声をかけづらい。
でも、今日言うしかない。
着替え終わった津宮さんを待つために、店の外で壁に寄りかかる。
「あっ、先輩。待っててくれたんですか?」
「いや……変な空気になるのは嫌だから、津宮さんと話したくて」
とは言いつつも、たぶん後々変な雰囲気になりそうな気はしている。
津宮さんはちょっとだけ嬉しそうに頬を緩めた。
「あたしのこと、先輩に話してよかったです」
「な、なんでですか?」
「あんなこと話したら、引くと思うんですよ。でも、先輩は普通に接そうとしてくれてる……だから、です」
あはは、と小さく笑っている。
だが俺は、確かにショックを受けたし数日ずっと心身疲労だった。
津宮さんを心配させるようなことを言う必要はないから、言わないけど。
自分が思ったよりも落ち着いているし、本題に切りかかってもいいだろう。
「津宮さん、ちょっと真面目な話なんだけど、聞いてくれない?」
「ま、真面目!? い、いいです、けど……」
津宮さんは姿勢を正して、俺へと向き合う。
顔はほんのり熱を帯びているように見える。
その表情、たまに見るけど……可愛いな。って今そんなことを考えている場合では無くて!
「津宮さん……実は物部家には代々伝わる宝の地図があるんです」
「は? はぁ……」
一気にテンションが下がったように見える。
宝の地図とか言われたらワクワクするもんじゃないの!?
しかし勿論、嘘だ。攻略本に書かれているのは埋蔵金の在処という地図。この世界における金策なのかは分からないが、それが何枚か書かれていた。
「現在の金額にすれば2000万以上の宝があるらしくて、一緒に探しませんか?」
「あははっ! もしかして、その宝を上げるからあたしの借金返済に使えって言いたいんですか?」
「そういうことです」
「絶対嘘だと思いますけど、面白そうなのでついていきます」
津宮さんは笑いながら、俺の提案を受け入れてくれた。
まあ、信じるに値しないか。
俺も攻略本からの情報じゃなければ、動くわけ無かったし。
「ただ津宮さん、一言言っておくけど結構ガチだよ。冒険って感じで山の中を」
「分かってますよ~。それなりの恰好で行きますから、安心してください!」
ほんとうか?
とも思いつつ、俺もそこらへんの知識は曖昧なのでなんともいえない。
「じゃあ、ゴールデンウィークで行こう。津宮さん、休みの日がありましたよね?」
「あります。あります。じゃあ、その日で!」
大方のことが決まったので、俺たちは家に帰った。
攻略本がある以上、不測の事態は起こらないとは思うが装備は万全で行こう。
◆ ◆ ◆
「ぐあああああああ! やっぱり許せないいいいいい!」
そう叫んでいるのは俺の姉貴、物部一花だ。
なんで叫んでいるのかと言えば。
「こんな美少女連れて登山デートとか許さんぞ!」
その宝が埋まっている山まで姉貴には車を運転してもらった。
どうやら、俺が美少女と一緒にいることに対して発狂しているらしい。
因みに津宮さんは「あはは……」と苦笑いをしている。
「ここでいいんか? ここがいいんか!」
「そうだって!」
地図から見て一番近い場所に、姉貴の車で送ってもらった。
「姉貴、ありがとう」「ありがとうございます!」
「そこそこ心配だから、何かあったらすぐに下山するんだぞ!」
車から降りた。
津宮さんの借金返済のための宝さがしが始まろうとしていた。




