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第1話 隣の席の美少女が表紙になってる謎の本を拾ったんだが

 隣の席に座る女の子が美少女過ぎて辛い。

 好きになっちゃう……! とかそういう話ではないが、どうしても周囲の目線が気になってしまう。小心者なので。

 そんなヒロインと呼ぶべき彼女と、モブである俺が接することはない……なんて思っていたのだが実際は違う。


 何故なら……。


「物部くん! 今日は何のゲームをやってるの?」


 隣の席の美少女、柿森海香はそう俺に問うてくる。

 美しい青色の髪は肩ほどまで伸びている。

 小顔。この世に存在すると思えないほど白い肌が、夕日を浴びて煌めいている。かつ、青い目は大きくて、まるで二次元から飛び出してきたような印象を与える。ちょっと心配になる小柄な体躯は庇護欲を掻き立てる。


 俺、物部次郎はそんな柿森さんの質問に、臆せず答える。


「ギャルゲーだけど……」


 これを答えるのは中々に辛いものがある。だって恥ずかしいよ!

 だが、俺はゲーマーとしてのプライドがある。

 あらゆるゲームには製作者がいる。そんな彼らへの敬意を表するなら、はぐらかさずにきちんと答えることがプレイをしている者の務めのはずだ。


 でも、正直に答えたのはそれだけが理由ではなかった。


「ギャルゲー? ど、どういうゲームか教えて!」

「ゲームに登場するヒロインたちと青春したり、恋愛したりするゲームかな?」

「そうなんだ……! そういうのもあるんだね。ゲームっていっぱい種類があるなあ。今度、わたしも買ってみようかな……おすすめってある?」


 柿森さんはスマホを取り出して、通販サイトを開いた。

 そこまでやる……? と思うものの、俺は正直に答えていく。


「ごめん、実はギャルゲーにはそこまで詳しくなくて」

「物部くんにも分からないゲームがあるなんて……! 面白いね」


 どういう意味の面白いなのか、いまいち分からない。

 けど柿森さんはずっと目を輝かせていた。


「海香ー、そろそろ行くよ~?」

「あ、うん、もうそんな時間? わかった!」


 柿森さんは席からカバンを持って立ち上がる。

 

「物部くんも一緒に行く? カラオケ?」


 断られると思って無さそうな圧倒的な純粋さを放つ瞳。

 ちょっと胸が痛くなるが……。


「遠慮しとく」

「え~楽しいのに、残念」


 ぷくっと頬を膨らませる様子も可愛いことこの上ないが、それでも無理。

 だって、俺以外女子しかいないんだぞ! 


「気が向いたら、いつでも来てね! じゃあ、また明日!」

「ま、また明日」


 バイバイ、と手を振ってくる柿森さんに対して、俺も小さく手を振った。

 ほんのり頬が赤くなっていたのは、バレてないと信じたい。


◆ ◆ ◆


 俺の中では割とありがちな放課後を抜けて、帰路に着く。

 あの美少女との一幕を『ありがち』と表現したのはおかしい気もするが、柿森海香という少女が、俺のやっているゲームに興味津々なのだからしょうがない。


 それにしても今日は、より眼が輝いていたような気がする。

 ギャルゲーに興味があったのか、それともただのテンションの上下か。


 そんなことを考えながら道を進んでいくと、ゴミ捨て場に目が向いた。

 何故なら、今日は紙ごみの日ではないのに、一冊の本が置いてあったからだ。


 俺は辺りを見渡して、人がいないことを確認してから本へと近づく。

 行儀が悪いのは分かっているけど、それでも気になってしまった。


 近づくにつれてその本の表紙に書かれている人物たちがはっきり見える。

 赤髪の少女、黒髪の少女、青髪の少女の三人が表紙を飾っている。

 そしてその青髪の少女には見覚えがあった。


「これ、どう見ても柿森さんじゃないか?」


 青髪青眼に真っ白な肌。

 先ほどまで話していた柿森海香、彼女が表紙に使われているようだった。


 まあ、確かに柿森さんはモデルとかやれそうだ。可愛いし。


 ただ、そういう雑誌としておかしい点はいくつもある。

 一つ、この本は雑誌ほど大きくない。

 二つ、タイトルが――。


『Timeless Days 完全攻略ガイド』


 流石にこんな雑誌は存在しない。

 ファ〇通みたいな、ゲーム雑誌ならまだしも。


「中を見てみるか……」


 開くと一ページ目にはたくさんの写真と煽り文字。


『三人のヒロインたちと、一年の青春を過ごそう!』


 と書かれている。

 

 こういうタイプの本を昔、姉貴の部屋で見たことがある。

 これは――。


「攻略本……?」

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