39、エピローグ
空いた記憶に寂しさを覚えつつも、時は私を待ってはくれない。
結界の補強のゴタゴタによって、私が帰国していることが露呈してしまった。補強したのが私と言う事になっているらしい。
そしてそれは私とクリードとの婚約の再燃になりそうで、その対応に追われた。
何故かあんなに恋ががれていたクリードの想いも綺麗さっぱりなくなっていて、驚いた。
どうやら師匠だけでなく、クリードとの一部記憶もないらしい。大丈夫か? 私。
クリードの想いがないためか、客観的に見ても私が未来の王妃になることはどう考えても可笑しい。
魔道具によって王位魔法使いになったローザは私の唯一の長所であった魔法レベルも超えてしまった。
ローザの不安定な部分は勿論私もカバーする。
元々、魔法も魔道具も直感的に操作してただけあって体が勝手に覚えている。
それに魔道具に必要な知識だけは何故か忘れていない。なのに何故か教わった人の顔が思い出せないのだ。
靄がかかったような感じがして、そこを見ようとしても結局何もない。
それに、私はどうやら処女ではないらしい。
何してたんだ私。
かなり不安になったが、これらの事で私とクリードの再婚約は無しになった。
将来の王妃としては不適格なのでその話は流れたが、今度は側妃としてと言われる始末。
どうしてもガードナー侯爵は私を王家に召し上げたいらしい。
私が呆れていると、それに待ったをかけたのはダグラスだった。
元々、私とローザのどちらかがクリードの婚約者になれば、ならなかった令嬢はダグラスの婚約者になる予定だったらしい。
えっ? そうなの? 知らなかった。
…………。ダグラスと結婚……。
なんだが複雑な気分だけれど、誰かと夫を共有する事よりは嫌悪感はない。
むしろダグラスの方が嫌なのでは?
私はこんな性格だし?
私は処女じゃ無いらしいし。
そう思ったけれど、ダグラスは構わないらしい。
どうやらこの結婚はダグラスの合理主義に適ったらしい。
私も貴族の令嬢だ。政略結婚は覚悟している。
ダグラスは、嫌味な奴だがよく知っているだけに適度な距離を取れるだろう。気心が知れているのはありがたい。
あー。時々私がイライラする事もあるけれど、長い付き合いだから、ダグラスは引き際を心得てはいると思う。
そう言う意味では楽だ。
ガードナー侯爵は最後までダグラスと私の結婚に反対していた。どうしても同意が取れないため、私はガードナー侯爵家から籍を抜けて新たに侯爵位を賜った。結界を補強した功績としては些か過剰では?、と思ったが、ガードナー侯爵に対抗するには必要な処置だったらしい。
まぁ、最終的にこれからのアーレン王国の繁栄を優先して王命でダグラスとの婚約は整った。
まずは先にクリード達が結婚して、その後すぐに私達も結婚した。
私は、魔法使いの階級を問わず婚姻が可能になった魔道具で脚光を浴びた。
師匠が作ったものなのに師匠は自分の名前が出るのを極端に嫌う。なので私の名前で良いらしい。
まだまだ改良が必要な魔道具は、師匠と文通しながら続けて行く予定だ。
遠くない未来に、レベルに関係なく婚姻が結べる事になるだろう。
ただ、文通相手となった師匠に、ダグラスは複雑な思いがある様だが。
魔道具によって、王位魔法使いになったローザの妊娠には様々な困難が待ち受けているが、それは別の話。
まさか、あのダグラスが私を溺愛してくるのも、私がそれに気づかないのもご愛嬌。
ぽっかり空いた記憶はやっぱり寂しい。時々無くした記憶を取り戻したくなるけれど、その度に誰かが前を向けと背中を押す。
まぁ、私の性格がウジウジしているなんて勿体無いと言っている。とにかく私はローザ達へ恩返しがしたいのだ。
ローザ達の想いは、アーレン王国の繁栄だ。
それなら私も王国の繁栄を願う。
私は思うがまま今日も信じる道を突き進む。
稚拙を最後まで読んでいただきありがとうございました。
最初に考えていたストーリーとは少し違ってしまい、自分でもちょっと驚いています。
ハッピーエンドとは言えないかな……?
すみません。
ご納得いかない方もいるでしょうが、これにて本編は完結です。番外編もありますので良ければお読みください。少しは救われる?
よろしければ評価やブックマーク、いいね等していただけたらありがたいです。
再度になりますが、ここまで読んで下さった全ての方に感謝申し上げます。




