37、人柱
8/2より毎日投稿中。
本日は2話目
ご注意下さい。
私の想いは決まった。
思い立ったが吉日。
決めたら、後ろは振り返らない。
…………
翌日の早朝、私はラルフからもらったローブに身を包み、ある場所に立っていた。
ローブを羽織っているとラルフが近くにいる様に感じるから。最期の時までラルフと一緒にいたいと思ったからの服装だ。
ある場所とは、本来なら王族しか入れない結界の管理室だ。
何故だかわからないけれど、誰かに導かれる様にここに来れた。本来は王族しか入れないはずなのに、すんなり入る事も出来た。これが所謂、イベント強制力らしい。
度々そう言うこともあると言っていたな。
穴だらけの世界だったっけ?
本来は私が断罪された後に行われるイベント。
けれど今回は私の意思だ。
管理室は真ん中に白い椅子があり、その後ろに木の様な白い幹が天井まで伸びている。見上げたが、先は見えなかった。それ以外は何もない真っ白な空間だった。
アーレン王国を覆う結界は、王族が少ない今最低限の維持管理しかし出来ていないため、ほんの少しずつ綻びができているらしい。
今すぐどうこうなる訳ではない。
けれど、結界の存続の是非は議論の的になるだろう。
議論は大事。それには時間が必要だ。
維持する事が決まれば、王族の人数は死活問題。
それにも時間が必要だ。急に王族は増えない。
今の綻びくらいなら私が人柱になる事で100年くらいは問題なくなる。そう物語の中に書いているらしい。
その間に解決できる事を願う。
管理室の真ん中にある制御椅子に座り、祈りを捧げる。
身体中から魂が抜かれて行くのを感じる。私はこの管理室に取り込まれて結界の補強になる。
結界から皆を護るのも良いなと思った。
人柱、上等だわ!
どうせ、アーレン王国にいれば、誰かと結婚させられる。
それがアーレン王国でのしきたりだ。女性は特に、結婚から逃れられない。
そんなの嫌だ。私の夫はラルフだけ。
このイベントでは、私はその後精神体になり結界に取り込まれ、体は魔石になる。
魔石はローザの魔力の底上げになり、補助がなくても王位魔法使いになれる。魔力差によって困る事は全て解消される。
やっとローザに恩返しができる。
私が意識を集中して、結界に取り込まれようと、最後の印を結界と結ぼうとした。
『させないよ』
頭の中でラルフの声が響く。
するとラルフからもらったローブが輝き出す。
いくつもの魔法陣が浮き上がり、後ろの幹に吸収されて行く。全ての魔法陣が吸収され最後のローブは私から離れ、幹に纏わりついてまばゆい光が部屋全体を覆った。
部屋中を覆った光は全てを塗り替えて行く。
ほら、ラルフはまた1人で決めちゃったのね。
勝手に私の意思も確認せずに。
思う様にいかないな。
私はそんな事望んでいないのに。
ラルフの声で『ごめんね』と聞こえた様な気がする。
それを最後に、私の意識は途切れた。
アリシアは誤解していますが、アリシアが結界管理室に入れたのはラインハルトアーレンの再来とも言われるほどの魔力があったからです。




