黄色い海
1
ガンガンガンガン!
三輪は近くにあった一斗缶を、叩いた。
「助けてー!」
デンキパイロットは一瞬動きを止めた。しかし、すぐにまた動き出す。
ボヒュッ!……ガアン!
三輪が助けを呼ぶために一斗缶を叩けた時間、2秒。
「あー、卜部さん気付いてくれたかな」
「もう終わったよ、三輪さん」
いつの間にか、卜部翠隼が来ていた。そして、デンキパイロットは頭部が無くなり、動きを停止していた。
「やあ、すまないね。酒を飲ませてもらっていながら、危ない目にあわせてしまって申し訳ない」
「いや、大丈夫です。……いつの間に?」
「雷電火の奴に、最近この世界でデンキパイロットが増えてるって聞いてね。ちょっと心配になって追いかけて来たんだ」
「ああ、ありがとうございます」
三輪は卜部に頭を下げた。
「でも、三輪さんなら金や銀のデンキパイロットならなんとかなりそうだけどね」
「金なら、二百円ぐらい握らせると立ち去ってくれるんですけどね。銀のデンキパイロットは、改良型でそういうの通じないんですよ」
「うーん、戦ってもなんとかなりそうなんだけどね」
「いやいや、無理ですよ。特にああいう機械が相手だと、対ニンゲン用の技術が使いにくいんで」
「それもそうか。……ピピカドラグィラルの調査が終わった後、酒を飲ませてくれるなら、対機械や岩石用の技術を教えようか?」
「いいんですか?弟子はとらないって聞いてますよ」
「うん、弟子はとらない。ただ、あんまり使わない技術だし、伝えてもかまわないかな。ピピカドラグィラルの調査に一週間もかけないだろうし、練習法を教えるだけだね。身につくかは、三輪さん次第だ」
「そういうことなら、是非お願いします」
2
暗い空の下、海は黄色く濁っている。風は強く、一羽の鳥さえ飛んでいない。 そんな中、コンクリート造りの建物から時折閃光が発せられていた。
『ビガジャ!!』
ピピカドラグィラルであった。
「うむ、ピピカドラグィラルによる発電も上手くいっているようだな」
「しかし、ニンゲン蒸発光線に直接当たっていないものの、近くにいることにどんな悪影響があるかまだわかっていません」
「なに、ピピカドラグィラルの情報は伏せてある。何か起きても、国民にはわからん」
『ビガジャ!ビガジャ!ビガジャ!』
ピピカドラグィラルが、ぐねぐねとうねっている。その余波で、窓ガラスが砕け散った。
「な、何だこれは?……頭の中に声が?『モットニンゲンヲ、蒸発サセロ。オ前ラカラ消シテヤロウカ?』だと?」
『ビガガガガ!』
「うわー、ありゃ駄目だ。ピピカドラグィラルも竜神だしなあ。ニンゲンに使えるもんじゃないよなあ」
「うーん、まずいですね」
三輪と卜部は、離れた場所から眺めていた。時折デンキパイロットが襲って来ていたが、一体を除いて卜部が破壊した。一体は三輪が壊した。……卜部から習った技は使いこなせず、高い場所から突き落としてだったが。
「素手とか刀とか、そういうのは効くけど、飛び道具は効かないんだよな、ピピカドラグィラルは」
「え?そうなんですか?」
「まあ、ピピカドラグィラルだけじやないがね」




